レイリア~桃色のタンポポを探して~

おおともらくと

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第四 サビオ博士の仮説

ドライブは安全運転で(前編)

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 『クラスタ』は熱帯雨林の中にある高原の村。これも、トラートの駅長さんが教えてくれた。
 改札でフリーパスを見せて駅の外に出ると、制服姿のお姉さんが、花壇に水をあげていた。丸いメガネをかけている。
「あの……」
 声をかけると、お姉さんは僕のほうに顔を向けた。なかなかの美人。
「もしかして、サーチさん?」
 僕が言うと、
「どうして、私の名前を知ってるの?」
 お姉さんは眉間にシワを寄せた。案外、気の強い性格なのかもしれない。
「トラートの駅長さんから、あなたのことを聞いたんだ。これをあなたに渡せば、きっと力になってくれるはずだって」
 僕は一通の封筒をサーチに手渡した。
 トラートの駅長さんは紹介状を二通書いてくれた。一通はサビオ博士に宛てたもの。そして、もう一通は、今僕の目の前にいるクラスタの女性駅員サーチに宛てたものだった。
 サーチは無言で封筒を受け取ると、中から便箋を取り出した。人差し指でメガネの真ん中をくいっと押し上げてから、中身に目を通す。
 ……そして数秒後、サーチは大きなため息を付きながら、便箋を折り畳んだ。
「まったく、お父さんったら相変わらず人使いが荒いんだから。娘を使用人かなにかと勘違いしてるんじゃないの」
 お父さん? 娘?
 僕が状況を飲み込めずにいると、サーチはそれを察した様子で、
「トラートの駅長は、私の父親なの」と教えてくれた。
 嘘でしょ?
 それが僕の正直な感想。
 なぜなら、トラートの駅長さんは背が低くてお腹がぷっくりと出た小太り体型だったのに、目の前のサーチはそれとは対照的に、すらりと背が高いうえに手足が長く、まるでモデルのよう。
「親子なのに、全然似てないんだね」
 僕は思わず口に出していた。
 すると、サーチは二、三回頷き、
「よく言われるわ。私はお母さん似なの。お父さんと違って、お母さんはスタイル抜群ですっごく美人なんだから。もちろん、私ほどじゃないけどね」さらりと言ってのけた。
 トラートの駅長さんからの手紙には、僕をサビオ博士の家まで連れて行くようにと、書かれていたそうだ。
「サビオ博士の家は、ここから遠いのよ。車を取ってくるから待ってて」
 サーチはそう言い残して、駅舎の裏に消えて行った。
 待っている間、僕は先ほどサーチが水をあげていた花壇を眺めて、時間を潰した。赤、青、黄、緑、紫、色とりどりの花が、それぞれ可憐に咲いている。
 花に癒されていると、突然、ブルルンというもの凄いエンジン音がした。音のしたほうを見ると、駅舎の裏から巨大な車が現れた。深緑色をしたごっつい車。とても頑丈そうで、ちょっとやそっとの衝撃では壊れそうもない。まるで軍隊の車みたい。タイヤの直径なんて、僕の背丈と同じくらいある。
「タケル、乗りなよ」
 運転席のサーチが、親指を立てて助手席を指差した。名乗ってもいないのにいきなり名前を呼ばれて驚いたが、たぶん、トラートの駅長さんからの手紙に書いてあったのだろう。
「仕事中に抜け出しても平気なの?」
 助手席に座るなり聞くと、
「平気よ、全然」
 サーチはいたずらっぽく笑った。「この『クラスタ』は『トラート』と違って観光地じゃないし、熱帯雨林の中にぽつんとある小さな村。人もそんなに住んでいないから、乗客の乗り降りなんてほとんどないわ。それにね……、駅舎の中には居眠りしてサボっている駅員が二人もいるのよ」
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