レイリア~桃色のタンポポを探して~

おおともらくと

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第四 サビオ博士の仮説

ドライブは安全運転で(中編)

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 『クラスタ』は、まさに「高原の静かな村」という言葉がぴったり当てはまる場所だった。
 点々と離れて建つ三角屋根の家々、広大な畑、山積みされたとうもろこしやじゃがいも、放牧されている牛や羊。そんなのどかな風景の中を、僕とサーチは車で颯爽と走り抜けた。
 やがて、車は森の中へ入って行った。
「さあ、ここからが本番よ。タケル、しっかりつかまってなさい」
 森に入ってしばらくは道らしきものがあり、車はそこを走行していたが、奥に入るに連れて、その道らしきものはどんどん曖昧になり、やがて見えなくなった。
 それでも、ハンドルを握るサーチは、表情を変えることなく、お構いなしにアクセルを踏み続けている。美しい外見からは想像できない勇ましい行動。
 車は草木をなぎ倒しながら、道なき道を猛スピードで進む。デコボコの地面の上を走行しているので、車への振動が激しい。僕は頭上の安全バーに両手でつかまりながら、その振動に耐えた。
 それにしても、サーチは自分が森のどこを走っているのか分かったうえで、運転しているのだろうか。

 車が森の中に入ってから、もう、かなりの時間が過ぎた。僕達は森の相当奥深くまで入り込んだはずだ。そろそろ目的地に着いてもいいのでは……。
「ほ、本当に、こんな場所にサビオ博士の家があるの?」
 不安になって尋ねた。
「ええ、あるわ」
 サーチはきっぱりと言った。「サビオ博士は誰も寄り付かないような熱帯雨林の奥地に一人で住んで、誰も興味を持たないような変な研究ばかりしているのよ」
 言葉にトゲがある。サーチはサビオ博士のことがあまり好きではないのかも。
「そういえば、トラートの駅長さんも言ってたな。サビオ博士は変な研究ばかりしているせいで、みんなから変人扱いされているって」
 僕が言うと、サーチはそれにかぶせるようにして直ぐさま口を開く。
「そうそう、その通り。サビオ博士は変人よ。ていうか、変態ね」
「変態? なんで? どうして?」
 僕が聞くと、サーチはそのきれいに整った顔をぐいっと僕のほうに向けた。
「サビオ博士はね、とんでもないスケベ親父なの」
 やっぱり、サーチはサビオ博士のことが嫌いみたい。
 その時だった。
「うわあっ」
 驚きのあまり、僕は悲鳴を上げた。
 いきなり車体が上下左右に揺れたかと思うと、強い衝撃とともにボンネットが下を向いたのだ。見ると、車は急な斜面を滑り落ちている。
「ちょ、ちょっとサーチ。よそ見しないで、前を見て! 車が落ちてるよ」
「ごめん、ごめん。ちゃんと前を見て運転しないとね。でも大丈夫。ここも、サビオ博士の家へ行くための通り道なの。予定通りよ」
 サーチは慌てる様子もなく、むしろ余裕の笑みを浮かべている。「さあて、見てなさい。私のすばらしいドライブテクニックを」サーチは勝ち気に微笑むと、ハンドルを握る手に力を込めた。そして恐ろしいことに、アクセルをさらに深く踏み込んだ。
「ひぃーっ」
 う、嘘だろーっ。
 車はどんどん加速しながら、斜面を下って行く。まるでジェットコースター。
 ふと前方を見ると、深い茂みが進路を塞いでいた。危険だ、このまま進み続ければ、あの茂みに頭から突っ込んじゃう。
「あっ、あぶない! あぶないよ!」
 僕は大声で叫んだが、サーチはそれを無視。それどころか、サーチはさらに車を加速させた。
 あり得ない行動、サーチがなにを考えているのか、僕にはまったく理解できない。
「突進、突進、突進あるのみよ。このまま真っ直ぐ進んだほうが、近道なんだから」
 そして案の定、僕達の車は、もの凄いスピードで草木が幾重にも重なる茂みの中に突っ込んだ。
 僕はたまらず、目をつむった。
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