攻略よりも楽しみたい!~モフモフ守護獣の飼い方~

梛桜

文字の大きさ
8 / 24
幼少期を楽しみましょう

推しへの道標

しおりを挟む


 人を惹き付ける真っ赤な炎の様な髪、なのに優しさを醸し出す琥珀色の瞳、アイクお兄様と同年代なのに、大きな身体は絶賛鍛えている最中なのでしょう。今はまだですが、成長すれば腰が砕ける低音ボイスですよ。前世でその声に堕ちて貢いだお嬢様方は数知れずでしたよこの犯罪者(語弊)
 テーブルに置いていたクッキーを摘み、パクパクと食べていくお友達様。食べてもいいけど、リモナイト王子の分は残しておいてくださいね?ケーキは渡したけど、クッキーも大好きだから食べに来ると思うんですよ絶対。

(そういえば、今日はラーヴァにもお菓子を用意してきたから大丈夫とは思うけど、ねーたまおっちいね!ってニコニコしながら食べるの見れなくて私涙目。アレが私の製作意欲の源なのになぁー)

「そういやアイク、子供捜してるんだけどよー」
「自分だって子供だよね?それに今日はラズ殿下に合わせて子供ばかりだよ」
「うっ、いや、ちょっと世話を頼まれたんだよ!グラッシュラー伯爵家の二男なんだけど」
「世話を任されたのに目を離したの?何をしてるんだよジャスパー役立たずだよね。残念ながら僕は可愛い妹のエスコートをしているから、グラッシュラー家の御子息には会っていないよ。あ、それと妹を紹介するつもりは無いからさっさと捜しに行って来い」

(アイクお兄様が笑顔で辛辣です…よ?あれ?)

 ニコニコの綺麗な微笑みを浮かべたまま、ジャスパー様に対する辛辣すぎるアイクお兄様が凄い。追い出す勢いで捲くし立てられ、ジャスパー様涙目ですご愁傷様です。お菓子持って行ってくださいませ是非とも。
 ソワソワしながら二人を見守って居ましたが、すごすごと人捜しに向かうジャスパー様哀れ。でも、ジャスパー様を紹介して貰えなかったの痛い。哀しい推しが遠のいた泣きたい。
 設定どおりならアイクお兄様と同じ年のはずの、王道王子様に従えるこれまた王道の護衛騎士。その人気は夢を見る少女達だけではなく、我が家の麗しいアイクお兄様とセットでそっち系の妄想を滾らせる御姉様方の人気No.1でした。魅惑の低音ボイス、ジャスパー=ロードナイト様は勿論攻略対象者です。攻略すると魔法騎士となってジャスパー様と一緒に国王陛下に仕えるのです。そのまま妻になるというのもありますけどね。

「宜しかったのですか?アイクお兄様」
「うん、ちゃんと挨拶を出来ない動物に、可愛いアリアを紹介出来ないからね。それにしても結構食べて行ったけど、リィ殿下の分は大丈夫?」
「はい、こちらにこっそりと取り分けておりますわ」

 何てことだ、挨拶はちゃんとしましょうよジャスパー様の馬鹿。暫定ジャスパー様のままじゃないか。いつも名前を教えてくれる吹き出しでも『???』のままなんですよー、紹介しないとちゃんと表示されないじゃないですかー。

「アイドクレーズ、アメーリア嬢お久し振りです。参加されていたのですね」
「久し振りだねマウシット、今日は君も参加していると思ったよ」
「お久し振りで御座います、マウシット様」

 同格の侯爵家であり、現宰相の嫡男マウシット=カルシリカ様。銀フレームの細い眼鏡を軽く上げ、視線を私へと向けてくる。この凍えそうな視線、何故か目の敵にされているようで落ち着かない。ご本人は眼鏡キャラで結構好みなんですけどね、この方本当に礼儀に厳しいんです。頭も良くて綺麗な顔をしてるし、笑ったら可愛いのになぁ…マウシット様。
 私と同じ歳の七歳の侯爵家の嫡男で、この方も攻略対象です。青味のかかった銀髪に薄い青の瞳で、銀フレームの眼鏡をかけている。氷の貴公子と公式設定の通り、厳しく無表情が板についた美形です。攻略が成功すれば、侯爵夫人エンドか宮廷魔術師エンドです。マウシット様が宰相にまで上り詰めますので、それなりの能力と地位が此方にも必要となるのです。

「それは、リモナイト王子への…?」
「ええ、ご一緒に召し上がるようですわ。宜しければマウシット様も此方をどうぞ、先程幾つか召し上がっていかれた方もおりますし」
「え?リモナイト王子のお菓子を?」
「ジャスパーだよ、人捜しでお腹が空いたそうだよ」
「…仕方のない人ですね」

 子供には似合わない呆れた溜息を零し、『折角ですので』とクッキーを摘んで口にいれる。途端に冷たかった顔に赤みがさして口元に浮かぶ笑みと、緩む瞳。可愛いなぁ。
 マウシット様もクールデレとかで人気が出た人です。ですが、何故か妄想滾らせたお姉様方に大人気でしてね?ラズ殿下の嫁かジャスパー様の嫁として人気だった。アイクお兄様のライバルだったんです。裏の最大手だったのが懐かしい。いや、表でもちゃんと人気あったよ?ヒロインちゃんとの身分差とか、アメーリアとのハイスペ夫婦とか。

(アメーリアでの攻略スチルでは、綺麗に微笑んでいたスチルはあったけど、もう一人のヒロインの様に照れた笑みや崩れた笑顔は無かったなぁ。お人形さんのような美人なのに勿体無い)

「アイドクレーズ様、アメーリア様!」

 パタパタと駆けてくる足音と名前を呼ぶ声に振り返ると、駆け寄ってくるのは可愛い男の子!ふわふわとした緑の髪に、癒しのエメラルドグリーンの瞳。私達を見つけて嬉しそうに微笑みを浮かべる癒し系の年下男の子。マーカサイト=ホーランダイト様。
 公式で発表されてる五人の攻略対象者の最後の一人です。後輩枠ってやつです。この乙女ゲームで一番穏やかで、幸せなエンドを目指せるのはマーカサイト様です。伯爵夫人エンドか宮廷魔術師エンドですからね。お得意の癒し系魔法はホーランダイト家の専門魔法です。

「お久し振りです、いつも父上からお菓子を頂いています。ありがとうございます!」
「此方こそ、いつもラーヴァと遊んでくださってありがとうございますわ」

 ニコニコと優しい空気が流れるそんな場所になるのが、マーカサイト様の特技かもしれません。このお茶会で攻略対象者全て揃うという事は、やっぱりこれから始まるのですね。オープニングが。

(だけど…、肝心のヒロインちゃん。来て無くない?おや?)


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

処理中です...