攻略よりも楽しみたい!~モフモフ守護獣の飼い方~

梛桜

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幼少期を楽しみましょう

聖獣様の登場です

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『ワレニ、コタエヨ』

「え?」
「アリア?どうしたの?」
「今、何か声が…」

 もう一人のヒロインちゃんは何処に居るんだろう?と、挨拶の列へと目を向けた時、耳に届いた低い声。その声は初めて聞いた筈なのにどこか懐かしく、背筋をゾクゾクと伝わっていく感覚に視界がぼやけた。胸が激しく高鳴って、段々息が苦しくなってくる。
 急に暗くなってきた空に、子供達の悲鳴や戸惑いの声が聞こえて来る。

「何事でしょう…」
「今は下手に動かないほうがいい、アリア大丈夫?」
「ここ、に…いるわ」
「アメーリア様、大丈夫?」
「私は、ここに…」

 何に対して応えているのか分かっていないのに、声が勝手に出ている。
 心配そうに私に声をかけるアイクお兄様の声も聞こえるし、私の手をぎゅっと握り締めて泣きそうな顔をしているマーカサイト様の温かさも感じる。
 私を探すその声は、私を知らないはずなのに、知っているとでも言うように呼びかけてくる。この声は、私を求める『聖獣』の声だと。大きな体とふわふわの毛皮を持つ、黒い狼の聖獣の姿が私の頭に浮かんでくる。

『呼ベ、我ノ名ヲ』

「…ギ、ベオン」

 口から零れ出たその名前に辺り一帯が闇に飲まれ、子供達の悲鳴だけでなく護衛騎士達の声も聞こえない。その場に居るのは私只一人。
 真っ暗な闇だけが、視界一杯に広がっている。

『我に応えたのは、お前か』

 耳を震わせる低く甘い声に、ビクッと身体が反応する。
 宙に浮く大きな真っ黒の毛色を持つ狼は、私の前へとゆっくり降り立ちその大きな口を開く。赤い舌と鋭い牙が私に向けられるけど、恐ろしいとは思わなかった。

『娘、名は?』

 周りには沢山の人が居るはずなのに、私に聞こえて来る声はギベオンのものだけ。
 ゆっくりと礼をとり微笑みを浮かべていたのは、自然に動いたからだった。令嬢教育半端無い。

「お初にお目にかかります、アトランティ侯爵家長女のアメーリア=アトランティと申します」
『アメーリア、お前は我に何を望む』

(望み…?)

 ギベオンからの問いかけに、正直困ってしまう。生活も困ってないし、貴族の家では王太子妃からの王妃を希望されたりするんでしょうけど、今の私にはその意欲は全くといって無い。本当に無い。あえて言わせて貰うなら、ラーヴァともっと遊びたいし目の前の狼をモフモフしたい。
 怖くないのかよって聞かれれば、怖いとも思わない。だって、ギベオンからは恐怖とか畏怖とかそんな感じが流れてこないから。

(んー…困った、一度思ってしまったらそれしか思いつかない。ギベオンを思いっきりモフモフしたい!)

『モフモフ…とはなんだ?』

 私 の 心 の 中 筒 抜 け で し た。

 くくっと首を横に倒して、疑問を聞いてくるギベオンが可愛い。犬とか猫もそうだったよねー、何コレ?って時首をくくって横にするの。かぁわいいぃいい!って犬・猫馬鹿丸出しで抱き付いて、猫からは容赦ない猫パンチを頂いて有難う御座いますご褒美です!犬は舐め舐め攻撃にお返しで撫で撫でしてモフモフして…

『おい、聴いているのか。何だその思考は』

 あ、忘れてました。心の中筒抜けだったんだ。

『お前な…』

 イヤイヤ、そんなにドン引きしないでくださいよ。
 でも、突然願いを聞かれても、はいそうですかって願いをいえる人って居るんでしょうか?流れ星とか見たいに『あ、あああー!』ってやってる間に消えちゃいません?言えるとすれば、誰かがこれですよ!って言ってた『金・金・金!』アレは妙に納得できた。
 其れを踏まえて、私の脳内通していない本能のままで行けば『ギベオン愛でたい、モフリたい』

『それでいいのか?』
「呆れてます?」
『その様な願いを言った人間など、初めてだ。この国の王や王妃にや、絶大な権力とかあるだろ』
「ええー…だって責任重大過ぎません?大きすぎる権力は身を滅ぼしますのよ?諸行無常ですわ。それに、愛でられるのも大変ですわよ?私とずっと一緒に居なくてはいけないのですから」
『しょ…?お前の話はよく解らん。対価を渡すのなら、我に否は無い』

 え、其れって対価しだいでは何でもするってこと?守護聖獣チョロくね?
 私の考えている事が駄々漏れなもので、ギベオンはしかめっ面をしつつ(狼なのに)呆れたように溜息を零しました。(狼なのに)

『お前は本当に上位貴族の娘か?』
「失礼な、ちゃんと歴っきとしたアトランティ家の長女ですわ」
『その身のうちの清廉とした魔力、その瞳、秘める魔力量も確かにそうだ。我と契約して願いを叶える為に、対価を差し出すか?』
「え、それって『僕と契約して~』とかそんな可愛い事いって騙すやつではないですよね?放っておいても後三年もすれば魔法少女になりますよ?上位貴族は魔法少女がてんこ盛りですよ」
『だから、何処からの知識だそれは!』

 思わずっと言った感じで『ガウッ!』と唸り声を上げてしまったギベオンに笑いつつ、シリアスをぶち壊してしまった事には謝罪しました。だって真面目にやってるのは解るんですけど、突っ込みしてくれると思わなくてついつい。
 
「それで、対価とは何ですの?私から何を差し出すのでしょうか?」
『お前の魔力だ』

 キリッと表情を引き締めて尋ねれば、漸くまともになったと安堵の息を吐き、黒い鼻先を私へと向けそう告げた。

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