攻略よりも楽しみたい!~モフモフ守護獣の飼い方~

梛桜

文字の大きさ
10 / 24
幼少期を楽しみましょう

契約は速やかに

しおりを挟む


 向けている黒い鼻先は、触ったらきっと冷たくて気持ちよさそうです。ぴんと立っている大きな耳もモフリ甲斐がとてもありそう。色々と興味は惹かれますが、まずは応えないと触れないですよね!

「私の魔力…だけ、ですか?」
『ああ、お前から感じる魔力はとても良質だ。其れならば我はより力を付けることができよう』

 不思議と『断る』という選択肢は頭に中に浮かばなかった。ゲームを知っているという所為なのでしょうか?それとも真っ直ぐに私を見つめてくるギベオンの銀色の瞳の所為でしょうか?一緒に居てくれるなら、私の魔力なんてお安いものだと頷いたのです。
 近付いてくる鼻先が私の鼻に触れ、冷たいと思っているとぺロリと唇を舐められた。『うひゃ』っと思っているとギベオンをキラキラした黒い靄のようなものが囲んで、姿が見えなくなったしまう。

「ギベオン…?」

『これほどとは、思っても見なかった』

 黒かった靄がキラキラと光を増して、月の光のような淡くて綺麗な銀色の光になっていく。
 じっと声の方へと視線を向けると、其処に立っていたのは背が高く程よく筋肉のついた体格。髪は長めで色は夜空のような濃い青かな?藍色と言った方がいいかもしれない。頭の上には三角の耳が生えていて、私を見つめてくる涼やかな瞳は銀色。服装は軍服のような黒のジャケットで、アクセサリーとして銀の鎖が付いている。背後にはふわふわとした大きな尻尾が揺れていた。

(も、もしかして、人型のギベオン!?)

「アメーリアの魔力は素晴らしい」
「……」
「どうした?何を呆けている?」
「そ、そんな姿…、反則ですわ」
「何がだ?」

 リモナイト王子様の時のテンションなら『神絵師キタコレー!!』って叫んでますが、言葉を失います。最推しと同じ獣人の姿で、しかもモフモフの尻尾はそのままとか!他にも涼やかな目元とか微笑みを浮かべる口元とか色々あるだろと突っ込みを受けそうですが、其処はスルーで!私だからと諦めてくださいな!
 なんてモフリ甲斐のありそうな豊かな尻尾、柔らかそうな毛並み!人型でなくても全然いいのですが、強調される事で更に素晴らしいですよ!

「まぁ、我に見惚れるのは無理もない。これからお前の魔力は我が有効に…」
「ちょっとお待ち下さい、私、モフモフにしか興味ありません。人型で無く狼の姿のほうが良いのですが」
「おい」
「対価交換と言ったのはそちらですわ、私は貴方をモフりたいのです。その為の対価である魔力はお渡しいたしましょう。狼の姿になって私に撫でさせて下さい!直ぐに戻れないのなら、そのふわふわな尻尾でも宜しくてよ!」

 ビシッっと指差し、ふわりふわりと浮かんでいる尻尾を見つめていると、今度は犬が嬉しそうな時にするようにブンブンと振られていく。人型には興味ないとか、話をぶった切ってモフらせろとか言ってるのに喜ぶとか。
 よく見れば笑いを堪えているのか、ギベオンの肩が微かに震えていた。

「気に入った、アメーリアと言ったか」
「はい、仲の良い家族は皆アリアと呼んでくださいますわ」
「では、アリア」
「はい」
「契約だ『我闇の守護聖獣ギベオンの名の元に、我はアメーリアと共に願いを叶えよう。その対価として魔力を貰う』是か非か」
「勿論『是』ですわ。闇の守護聖獣の主となるべく、今後も精進いたします」

 にっこりと微笑みを浮かべ応えると、目の前を真っ暗闇が一瞬にして蔽い隠し、再び目を開くと今までお茶会をしていた王宮の中庭だった。

「アリア!良かった、無事だったんだね」
「アイクお兄様…」
「『契約』は成った、これから我はアリアの守護聖獣となろう。我が姫君に忠誠を」

 突然現れた私と共に、狼獣人の男性が現れたかと思えば、その男性は私に跪き私の足を自分の膝に乗せるとキスを落とした。どんな忠誠の示し方だ!と突っ込みを入れたかったですが、きゃあああー!と聞こえる甲高い叫び声に私の苦情は消え去ったのでした。

(叫び声にびっくりした…)

「守護聖獣の忠誠を勝ち取るなんて、流石アリアだね」
「ら、ラズにいさま、アリアが…っ」
「心配しなくてもいいよリィ、アレは飼い犬のようなものだからね」
「で、でも…」

 突然現れた見知らぬ大人に、警戒心の強いリモナイトは動揺と不安を隠せない。よしよしとそのふわふわな金色の髪を撫で、アリアを抱き上げて中庭を去っていくアトランティ家の兄妹と守護聖獣を見送った。
 上位属性、しかも稀少な光と闇の守護聖獣は、そう易々と人の前に姿を現すことは無い。とても気紛れで、とても尊厳高い者。契約をした者はそれなりに名を残しているけれど、忠誠を誓わせたのはアリアが初めてかもしれない。

「やっぱり、欲しいね。王家に」
「にいさま?」
「何でもないよ、じゃあ残りの挨拶を終わらせないといけないね。今日はこのままお茶会も終わりに出来そうかな?母上と相談してくるから、リィは此処で待っていて?マウシットとマーカサイトも一緒だから大丈夫だよね?」
「はい」
「お任せください、ラズーラ殿下」

 ニコリと王子としての微笑みを貼り付け、未だ喧騒の残るお茶会の中心へと向かっていく。そして、その王子の背を小さな拳を握り締め見ていた少女がいた。風に靡くストロベリーブロンドの揺るやかにウェーブした長い髪、怒りを灯した空色の瞳はジッと王子とアトランティ兄妹に向けられ、噛み締められた薄紅の唇からは微かに血が滲んでいた。

    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

転生先のご飯がディストピア飯だった件〜逆ハーレムはいらないから美味しいご飯ください

木野葛
恋愛
食事のあまりの不味さに前世を思い出した私。 水洗トイレにシステムキッチン。テレビもラジオもスマホある日本。異世界転生じゃなかったわ。 と、思っていたらなんか可笑しいぞ? なんか視線の先には、男性ばかり。 そう、ここは男女比8:2の滅び間近な世界だったのです。 人口減少によって様々なことが効率化された世界。その一環による食事の効率化。 料理とは非効率的な家事であり、非効率的な栄養摂取方法になっていた…。 お、美味しいご飯が食べたい…! え、そんなことより、恋でもして子ども産め? うるせぇ!そんなことより美味しいご飯だ!!!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

処理中です...