攻略なんてしませんから!

梛桜

文字の大きさ
10 / 71
紹介をしましょう。

契約と盟約 *


「アリア!しっかりして、アリア!」
「…ん、アイク…おにいさま」
「みゃう!」
「あら、アズライト様…。又獣化してしまいましたの?可愛い」
「暢気なお嬢様だな…。まったく」

 私を呼ぶ声に重い瞼をゆっくりと開けると、呼んでいたのはしっかりと私を抱き締めて、泣きそうな顔をしたアイクお兄様。心配症なアイクお兄様にこんな顔をさせてしまうなんて、帰ったらお説教かしら?
 ムニムニと頬に当たる柔らかな肉球の感触と、可愛い鳴き声に視線を向けると、モフモフの可愛いホワイトタイガーの姿になったアズライト様、そして、安堵の笑みを浮かべるジャスパー様が居た。
 きゅるきゅるの丸いエメラルドグリーンの瞳がじっと見つめてきて、ぎゅーっと抱き締められないのが悔しい。何で私の身体動いてくれないの!ふわふわの頭を私の頬に擦りつけて、大丈夫?と傾げられる仕草が本当に可愛い。身体が動いてたら抱き潰してるのに!

『みゃう』
『にゃう』

「こねこ、の…こえ」
「アリアが助けたんだよ、黒い子猫はもう大丈夫」
「わたし、が?」

 もっとしっかりと話をしたいのに、口が上手く動いてくれない。ぴょんぴょんと元気にお腹に乗ってくる二匹の子猫の姿を視界に入れ、嬉しさに微笑みを浮かべた。

「目が覚めたなら、もう大丈夫ですアトランティ侯爵。魔力が少なくなっているので、今日はもう帰って休んだ方が宜しいでしょう」
「ああ、ホーランダイト伯爵礼を言う」
「いえ、いつも侯爵家のお菓子を頂いております。感謝を少しでも返せてよかったですよ」
「また後日送らせよう、ホーランダイトは甘い物が好きだからな」
「それは、私も子供も喜びますね。親子で大好きなんですよ、侯爵家のお菓子」

 心に染み入る優しい声と、安心するお父様の低くて心地のいい声。ホーランダイト伯爵様の声は、柔らかくてとても優しい声をしている。ホーランダイト伯爵様は王宮でも稀なる回復魔法の使い手で、とても優しい叔父様ですの。伯爵家は回復魔法に特化した才能を持つ一族のようで、ホーランダイト家のご子息も才能を期待されています。
 癒しボイスって聞いてると眠くなるよねって思っていると、本当に瞼が重くなり、私はそのまま夢の世界へと入っていった。


『アメーリア』
『アメーリア!』

 小さい子が私の名前を呼んでいる。たどたどしい呼びかたなのに、覚えたての名前が嬉しいのか、グルグルと私の周りを回っている。白い猫の獣人のような少年と黒い猫の獣人のような少年、片方はハウライト、もう一人はきっと助けた黒い子猫だろう。

「もしかして、二匹とも聖獣だったの?」
『ボクタチ、二ツデ、ヒトツ』
『一緒に生まれたんです、だけど白と黒は一緒になれないと消されるところだったんです』

 白銀の髪とその上に同じ色の耳と尻尾、瞳は左を金に右目を青になっているのがハウライト。黒い髪にその上に同じ色の耳と尻尾、瞳は左が青で右が金のハウライトと同じ位の小さな可愛い少年。違うといえばニコニコと笑みを浮かべているのがハウライトで、表情の変化が少ないのがオブシディアン。
 
『私は、アメーリアの守護ハウライト、アメーリアと一緒に助けるのが役目』
『ボクハ、オブシディアン、アメーリアハ、ボク二何ヲ願ウ?』
「願い?」

 願いと言われても、ハウライトの時でさえ願ったのは偶然だった。あの時は兎に角、この二人を助けないとって必死だった。オブシディアンを見ると、一見無表情なのにわくわくとした雰囲気が凄く滲み出てる。顔の横にキラキラとした星が見えている感じで、待てをされている子供みたいで笑みが浮かぶ。
 子猫達は少年の姿になっているけれど、このオッドアイの瞳は懐かしさを感じてしまう。

「そうですわね、私は今の家族とも幸せですから、特に願いと言うものもありませんの。だから、ハウライトもオブシディアンも私の家族になって頂けません?」
『カ、ゾク?』
「一緒にいたいと言う事ですわ」
『居る。僕はハウライトと共に、アメーリアと一緒に居る』

 小さな二人の手が私の手をぎゅっと握り締め、ハウライトはにっこりと笑みを浮かべ、オブシディアンは小さく微笑んだ。オブシディアンの身体が月の光の様に優しい光を燈し、二人は大きな綺麗な白猫と黒猫の姿を現した。

『盟約に従い、我ハウライトはアメーリアの守護となる』
『盟約に従い、我オブシディアンはアメーリアの守護となる』
「宜しくお願いしますわ、ハウライト、オブシディアン」

 
 本来なら私の聖獣は『ギベオン』だったのに、どういった運命の悪戯なのか私の元には二匹の守護聖獣。ハウライトはきっと、もう一人のヒロイン『ルチルレイ』ルートでの聖獣だったハウライトだと思う。
 自信が無いのは、ゲームのハウライトと今のハウライトがちょっと違うからで、ゲームのハウライトは両目が金色でこんな無邪気な笑顔をしてい無かった。オブシディアンのように無表情で、ヒロインの言葉に何でも従う子だった。

(ギベオンは友達になれる感じの聖獣だったけど、ハウライトは聖獣というより付き従うものだったのよね)

 夢から目覚めた時、私は自分の部屋のベッドの上にいた。その傍らには、二匹の子猫と可愛い弟のラーヴァが一緒に眠っていて、その愛しさに笑みと涙が零れた。

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢はおねぇ執事の溺愛に気付かない

As-me.com
恋愛
完結しました。 自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生したと気付いたセリィナは悪役令嬢の悲惨なエンディングを思い出し、絶望して人間不信に陥った。 そんな中で、家族すらも信じられなくなっていたセリィナが唯一信じられるのは専属執事のライルだけだった。 ゲームには存在しないはずのライルは“おねぇ”だけど優しくて強くて……いつしかセリィナの特別な人になるのだった。 そしてセリィナは、いつしかライルに振り向いて欲しいと想いを募らせるようになるのだが……。 周りから見れば一目瞭然でも、セリィナだけが気付かないのである。 ※こちらは「悪役令嬢とおねぇ執事」のリメイク版になります。基本の話はほとんど同じですが、所々変える予定です。 こちらが完結したら前の作品は消すかもしれませんのでご注意下さい。 ゆっくり亀更新です。

【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました

三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。 助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい… 神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた! しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった! 攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。 ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい… 知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず… 注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結】悪役令嬢は何故か婚約破棄されない

miniko
恋愛
平凡な女子高生が乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった。 断罪されて平民に落ちても困らない様に、しっかり手に職つけたり、自立の準備を進める。 家族の為を思うと、出来れば円満に婚約解消をしたいと考え、王子に度々提案するが、王子の反応は思っていたのと違って・・・。 いつの間にやら、王子と悪役令嬢の仲は深まっているみたい。 「僕の心は君だけの物だ」 あれ? どうしてこうなった!? ※物語が本格的に動き出すのは、乙女ゲーム開始後です。 ※ご都合主義の展開があるかもです。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしておりません。本編未読の方はご注意下さい。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 そう名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  ✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 ✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️