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ⅩⅩⅡ.The Empress
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あっという間に三年の月日が流れていた。
時折喧嘩をすることもあるけれど、夜まで続くことはない程度の優しい日々。幸せだった。
王妃の治療を終えたラファエルはこの地に腰を据えることを決めたのかどうかは知らないが、一応、形ばかりはセスクの家を出ながらも、相変わらずこの王都を拠点として働いていた。
時折1ヶ月近くいなくなることもあるが、シェリルが以前のように体調を崩すようなこともなく。
全てが順調。そんなある日。
改装した室内は、完全に貴族の夫婦が過ごす部屋のような仕様になっていた。
共有スペースを挟んで、両隣に形ばかりの互いの部屋。シェリルはほとんどの時間を中央の部屋で過ごしており、夜はセスクのベッドで一緒に眠る日々。シェリルの部屋にもベッドはあるが、それが使われたことはほんどない。本当に数回だけ、セスクのベッドがどうしようもならなくなった時にだけ使われた過去があるくらいだ。
だからもはや、二人の寝室になっているベッドの上。
毎夜そこで交わされる口づけは、身体を重ねる始まりの合図。
「ん……」
甘い吐息は、いつまでも飽きることなく、セスクの欲を擽った。
女性特有の月一の事情と、時折セスクに命じられる出張の時以外は、セスクがシェリルを抱かない日はなかった。
禁欲の一週間は少しだけ寂しいけれど、その前後はシェリルの欲が増すらしく、いつも以上に乱れて求めてくるから、それはそれで楽しみだったりもする。抱くことはできなくても、シェリルは必ずセスクを口で慰めてくれるから、献身的なその姿も可愛くて堪らない。
だから、セスクも薄々気づいてはいたのだけれど。
「……来ないの」
「なにが?」
いつものようにそのまま少女をベッドに沈ませようとしたセスクの胸を軽い仕草で押し返し、ぽつりと口にされた呟きに、セスクは瞳を瞬かせていた。
「…………月のものが」
「え……」
もう、二週間遅れていると、揺らめく瞳で見上げられ、セスクも少しばかり動揺した。
シェリルの周期を正確に把握しているわけではないけれど、確かに遅れていることには気づいていた。
だからといって。
「……だって、妊娠しない、って……」
だから、好きなだけ吐き出して構わないと、初めて会った時に医者のあの男は笑っていた。
「そう……、なんだけど……」
自分自身の身体のことだ。シェリルも自分の思い過ごしかと考えながらも、その瞳から僅かな動揺の色が消えることはない。
シェリルにまだ自覚はないらしいが、ただ、どことなくここ数日身体に違和感があるのだと、シェリルは不安そうにセスクの顔を見上げていた。
「……オレはどっちでもいいよ?」
「え?」
「子供ができてもできなくても。子供がいないなら養子を取ればいいだけだし、もしシェリルとの子供なら、もう、それはそれはめちゃくちゃ可愛いと思うし」
だから、ね?と笑いかければ、シェリルは少しだけほっとしたように息をつく。
「……ラファエルに、聞いてみる」
「そうだね……」
ラファエルは医者だ。シェリルの身体のことも――持病と言っていた"なにか"のこともわかっている。
だが、そうは思っていても、今だ胸の奥に沸いてしまう嫉妬だけはどうしようもない。
結局最後に頼らなくてはならないのはあの男なのかと。
シェリルの身体を診る行為の中に、医師と患者以上の"なにか"がないか、ついつい疑いの目で見てしまう。
シェリルから向けられる気持ちを、一欠片も疑っていなくても。
「……どうする?今日は止めておこうか?」
さらりと髪を撫でながら額へとキスを落とし、セスクは甘く笑う。
こんなことは初めてだけれど、たまには初心に返ってただ抱き合って眠るのも悪くはない。
――ちょっと、男としては辛いかもしれないけれど。
「……ううん」
けれど、シェリルは緩く首を振った。
「抱いて欲しい」
それにセスクは嬉しそうに笑い、少女の身体をベッドへ沈ませていた。
時折喧嘩をすることもあるけれど、夜まで続くことはない程度の優しい日々。幸せだった。
王妃の治療を終えたラファエルはこの地に腰を据えることを決めたのかどうかは知らないが、一応、形ばかりはセスクの家を出ながらも、相変わらずこの王都を拠点として働いていた。
時折1ヶ月近くいなくなることもあるが、シェリルが以前のように体調を崩すようなこともなく。
全てが順調。そんなある日。
改装した室内は、完全に貴族の夫婦が過ごす部屋のような仕様になっていた。
共有スペースを挟んで、両隣に形ばかりの互いの部屋。シェリルはほとんどの時間を中央の部屋で過ごしており、夜はセスクのベッドで一緒に眠る日々。シェリルの部屋にもベッドはあるが、それが使われたことはほんどない。本当に数回だけ、セスクのベッドがどうしようもならなくなった時にだけ使われた過去があるくらいだ。
だからもはや、二人の寝室になっているベッドの上。
毎夜そこで交わされる口づけは、身体を重ねる始まりの合図。
「ん……」
甘い吐息は、いつまでも飽きることなく、セスクの欲を擽った。
女性特有の月一の事情と、時折セスクに命じられる出張の時以外は、セスクがシェリルを抱かない日はなかった。
禁欲の一週間は少しだけ寂しいけれど、その前後はシェリルの欲が増すらしく、いつも以上に乱れて求めてくるから、それはそれで楽しみだったりもする。抱くことはできなくても、シェリルは必ずセスクを口で慰めてくれるから、献身的なその姿も可愛くて堪らない。
だから、セスクも薄々気づいてはいたのだけれど。
「……来ないの」
「なにが?」
いつものようにそのまま少女をベッドに沈ませようとしたセスクの胸を軽い仕草で押し返し、ぽつりと口にされた呟きに、セスクは瞳を瞬かせていた。
「…………月のものが」
「え……」
もう、二週間遅れていると、揺らめく瞳で見上げられ、セスクも少しばかり動揺した。
シェリルの周期を正確に把握しているわけではないけれど、確かに遅れていることには気づいていた。
だからといって。
「……だって、妊娠しない、って……」
だから、好きなだけ吐き出して構わないと、初めて会った時に医者のあの男は笑っていた。
「そう……、なんだけど……」
自分自身の身体のことだ。シェリルも自分の思い過ごしかと考えながらも、その瞳から僅かな動揺の色が消えることはない。
シェリルにまだ自覚はないらしいが、ただ、どことなくここ数日身体に違和感があるのだと、シェリルは不安そうにセスクの顔を見上げていた。
「……オレはどっちでもいいよ?」
「え?」
「子供ができてもできなくても。子供がいないなら養子を取ればいいだけだし、もしシェリルとの子供なら、もう、それはそれはめちゃくちゃ可愛いと思うし」
だから、ね?と笑いかければ、シェリルは少しだけほっとしたように息をつく。
「……ラファエルに、聞いてみる」
「そうだね……」
ラファエルは医者だ。シェリルの身体のことも――持病と言っていた"なにか"のこともわかっている。
だが、そうは思っていても、今だ胸の奥に沸いてしまう嫉妬だけはどうしようもない。
結局最後に頼らなくてはならないのはあの男なのかと。
シェリルの身体を診る行為の中に、医師と患者以上の"なにか"がないか、ついつい疑いの目で見てしまう。
シェリルから向けられる気持ちを、一欠片も疑っていなくても。
「……どうする?今日は止めておこうか?」
さらりと髪を撫でながら額へとキスを落とし、セスクは甘く笑う。
こんなことは初めてだけれど、たまには初心に返ってただ抱き合って眠るのも悪くはない。
――ちょっと、男としては辛いかもしれないけれど。
「……ううん」
けれど、シェリルは緩く首を振った。
「抱いて欲しい」
それにセスクは嬉しそうに笑い、少女の身体をベッドへ沈ませていた。
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