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ハニュレオ編

二号機カッコイイ

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「きゃー!」
「わー!」
「えええっ!?」

 結晶化した岩壁に包まれていた、灰色のギア・フィーネ——二号機が突然動き出す。
 戦闘機から腕が生えて、バキバキと壁を破壊して出てきたのだ。
 そのまま人型——翼を背に持つロボットへと変形した。
 わ、わーーー!
 可変型ロボット、か、か、か、かっけええええええぇっ!
 待って待って待って、変形ロボット予想以上にテンション上がるぅ~!
 男の夢よ、これ、マジやべぇ、えええ、好きーーー!
 この一瞬で二号機のファンになったんですが、俺!
 グレーっていう地味なところもなんか、渋くてイケてる風に見えてきたヤベー!

「って、ええええーーー!」

 だが、俺が驚くのはまだ早かった。
 しゃがんだと思ったら、シズフさんはそのまま十メートルぐらい、飛んだ。
 待って待って待って。
 人間の身体能力であの高さ、飛べる?
 そのまま操縦席のハッチ掴んで入っていったんだが。
 待って、この人本当に千年前の人?
 魔法、使ってないんだよね?
 は? どういうこと?

「シズフさん、どこへ!?」
「決着をつける」
「え」

 なにと? 誰と?
 浮かんだ疑問は即座にイコールになる。
 ラウト・セレンテージ。

「え! ま、待ってください! もう戦う必要は——!」

 ない……言い切れるのか? 本当に?
 だってラウトは父親を殺されていて、敵対国家に所属していて、俺が考えてるような浅い因縁じゃないんだろう。
 ……けど、今のラウトは『神鎧』を持つ神。
 魔法も使えるし、とてもじゃないけど。

「あっ!」

 なんて悩んでいる隙に操縦席のハッチが完全に閉まる。
 その瞬間、グレーの機体が真紅に変わった。
 は、はぁーーー!?
 変色機能付きーーー!?
 ちょっと二号機さん、どんだけ俺の心を奪っていくんですかー!?
 カッコEEEEE!

「って見惚れてる場合じゃない!」
「見惚れていたんですか!?」
「あんなかっこいい機体、見惚れるだろ! しかも真紅だよ真紅!」
「は、はあ……」

 レナにはわからないか。
 残念だ。
 ってまたもや見惚れてる間に戦闘機型に可変して、一気に地上へ出ていかれてしまった。
 は、速い、速すぎる……!
 さすがギア・フィーネシリーズ最速機。

「スヴィア、上へ戻る。しっかり掴まっていてくれ!」
「あ、う、うん」
「ヒューバート様は慎重に、ですよ」
「わ、わかってるよ」

 四号機の操縦席に戻り、ハッチを閉じてこちらも機体を起動させる。
 俺もかっこよくブォーン、って一気に地上へ戻れたらいいのだが、それでなくても下手なのにあんなスピードで一気に登るなんて危険すぎて俺にはできない。
 ゆっくり浮上して、真っ直ぐ浮上してぇ……ぐううう。

『ヒューバート! 今なんかすごいスピードで出ていったんだけど、あれなにぃ~!?』
「ごめん、ジェラルド、三号機じゃなくて二号機だったんだ。どっちに行った!?」
『あっち』

 と、指さされた方向は王都の方……いや、ラウトの五号機や、光炎コウエンが待機している場所。
 まさか! 本当に戦うつもりなのか!?

「うっ!」
「ヒューバート様、完全に地上に上がるまでは気を抜いては!」
「ごめん!」

 スヴィアだけは地上に降ろしたけど、その時にバランスを崩してまた落っこちかけた。
 あーもー、なんで俺はこんなに操縦が下手くそなんだぁ!
 練習したら本当にあんな風に操縦できるようになるのかな?
 というか、自分で操縦するのこんなに大変なのに、これを乗りこなしてるとか千年前の人々やばくない?
 石晶巨兵クォーツドールは操縦補助AIを積んでるから、俺のこの下手ぶりでも乗りこなせてたけど、ギア・フィーネは『フルマニュアル操作』。
 いや、無理!
 人間の脳で歩く、飛ぶ、方向操作、関節操作、これに攻撃回避防御全部乗せは不可能!
 これをやってる千年前の人々! 異常!
 サポートAI的なものを載せられたらいいけど、下手にいじれない、怖くて!
 サルヴェイションの擬似人格サポートは本当に優しかったんだなあ!
 ……あれ、イノセント・ゼロもやってくれないかな……?
 時間を見つけてイノセント・ゼロに聞いてみよう。

「よい、しょっと! ふぅーーー……」
「ヒューバート様、すごいです! ちゃんと地上に登れましたね!」
「う、うん」

 レナ、本当に褒めて伸ばすタイプだな。
 ありがとう、こんなポンコツ登録者に優しくしてくれて……俺の女神……。

「って、え?」

 いきなり空にドドドドドン、と花火が打ち上がり始めましたよ?
 へー、ハニュレオには花火の文化が残ってるのか。
 でもなんでこのタイミング?
 と、空を見上げると違うわこれ、攻撃魔法だわ。
 極太の白い光線も空を二つに割る龍が如く放たれている。
 ……つまり。

「ラウトと戦い始めたのか!?」
『ねえ、本当になにが起こってるの!?』
「ジェラルド、その娘を守ってくれ! ラウトを止めてくる!」
『ヒューバート!?』

 スヴィアをジェラルドに任せて光が飛んでくる方向へと走る。
 うん、飛べばいいと思うよな?
 颯爽とさ、飛び上がって駆けつければいいよな。
 俺も思うよ。
 ……そんなカッコいい主人公っぽい操縦技術、今の俺に求めないでもらおうか!
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