終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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18歳編

セドルコ帝国代表団(2)

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 やれるもんならやってみろ。
 うちにはナルミさんがいるからな?

「ちなみに、エリステレーン伯爵方は宇宙軍との窓口などとご縁はございますか?」

 話を逸らしてみよう。
 エリステレーン伯爵に蔑んだ目を向けるあおっさんたちは、俺の質問にどう答えるかな?

「う、宇宙ですか?」
「申し訳ございません。我々は帝都のことをあまり存じ上げませんでして……」
「そうですか」

 おっさんたち、エリステレーン伯爵をどうこう言えないよ。
 役に立たないじゃーん。
 けどまあ、この辺りは想定内だ。
 宇宙軍が接触したのは皇族だけだったんだろう。
 千年前よりも進歩している宇宙の技術なら、痕跡も残さずに接触する方法はいくらでもあるだろうし。
 主に通信機。
 現代人にはなんだかわからないだろうし、オルゴールとかに偽装されたらまず見抜けない。
 帝都が崩壊した時に、皇帝候補たちと一緒になくなっているだろうから、やはりルーファスたち宇宙軍所属の者たちに取次いでもらうしかないな。
 捕虜はまだ二十人ほどいるから、返還の交渉もしたいんだけど……。
 ただ、この捕虜返還に関してナルミさんとシズフさんとデュレオは消極的だった。
 三桁の捕虜ならばともかく、二十人程度ならば切り捨てて見捨てるのではないか、というのだ。
 大和タイワがそうとかではなく、損得の問題。
 ギア・マレディツィオーネを奪われたのは多分かなりの痛手ではあっただろうが、軍人は消耗品。
 宇宙としては難民を数千人受け入れて“実験”を続けられる体制は整ってしまっている。
 これ以上地上に干渉する理由が、今のところはないのだ。
 ここで手を引いてしまう可能性も、ある。
 捕虜たちにはうちの国に帰化してもらうよう提案して、泳がせるべき。
 情報収集させ、宇宙側から元捕虜に接触してくる機会を待つ。
 ——っていうのが、ナルミさん推奨案ではあるのだが……。

「兄上……?」
「いや、それならそれで構わない。そうであろうと思っていた。ともかく、セドルコの民の生活を安定させるのを最優先に考えよう。今のままでは民も不安だろう。ハニュレオの有力貴族も紹介するので、レオナルドがこのままセドルコ新体制の指導をしてほしい」
「は、はいっ」

 というわけで、セドルコの新体制指導はレオナルドにぶん投げることにした。
 学院卒業後は聖殿を総括する者として、これまでの功績を評して新たな苗字と公爵の爵位を与えることになっている。
 公爵になるからにはハニュレオと共に、セドルコ新体制を手伝ってもらわねば。
 もちろん俺も手伝うけどね。
 なお、レオナルドにこの話をした時は、それはもう自信なさげにガタガタ震えていた。
 しかし、俺とレナが結婚して、レナが後宮に入ったことでレナの世話役は女官が引き継ぐことになっている。
 パティはそのまま後宮に入る予定だが、本人は謎にトニスのおっさんとの結婚を希望していたので……その辺はまあ、おいおいとして……レオナルドの裏工作が功を奏し、マリヤはランディの実家、アダムス侯爵家に養女として迎えられることになった。
 マリヤもその旨をちゃんと理解しているが、まさかこのあと公爵となるレオナルドに婚約を申し込まれるとは思うまい。
 すでに二十代後半。
 本人も今更なぜ侯爵家に養女として迎えられる話が出ているのか、疑問に思っていることだろう。
 残念ながら君に味方はいない。
 レナとパティも、君のご両親もすでにこちら側だ。
 下準備はほぼ完璧だし、残すはレオナルドのプロポーズのみ。
 これだけお膳立てしておけば、レオナルドのやる気も最高潮というもの。
 レオナルドも来年学院卒業&成人だしね。
 今夜の代表団歓迎パーティーでレオナルドがマリヤにプロポーズして彼女が婚約を了承すれば、あとはトントン拍子——!
 マリヤもすべてを察することだろう。
 外堀はすでに埋まっている、と。
 ぶっちゃけ彼女の立場で絶対断れない状況に仕上がってるしねー!

「お任せください! 兄上!」
「うん、頑張って」

 あとはレオナルドが気合い入りすぎてど滑りしなければ……まあ……。

「で、ですが!」

 お?
 話がだいたいこちらの出した条件通りにまとまりそうな時になり、再びエリステレーン伯爵が前のめりになる。
 いいよいいよぉ、話し合いの場だし、言いたいこと言いな~?

「ステファリー殿下は、皇帝陛下の意を汲まず、民を苦しめた皇帝候補の一人です! 貴国にも我ら貴族に無断で戦争を仕掛けております。その挙げ句に、帝都を破壊され、多くの民を巻き添えにし、それにも飽き足らずにまだ身勝手に貴国へ攻撃を続けました! 死んで責任を取るべきです!」
「言いたいことはわかる。あなたたちは尻拭いをさせられてばかりだったのだろう? 報告を聞いただけでも、心中穏やかでないとわかるとも。だが、それならば生きて最低限の責任を取らせるべきだし、地上にいる最後の皇族として国を終わらせた責任も生きて見届けるべきだろう。うちの神々も諍いの芽を残すのは良策といえないと忠告してきてくれたが、すでに宇宙に第一皇女が嫁いでいる以上セドルコ皇帝家の血が残るのは確定だ。ステファリー殿下だけ殺しても無意味だろう。あなたも貴族ならば、民のために飲み込んではくれないか?」
「っ……!」
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