20 / 27
勲章とか別にいらない人です
しおりを挟む「それでですね……あの、来週なのですが……王都でフォリシアが討伐した盗賊について、懸賞がかけられていたそうです」
「ああ、アレらに、ですか?」
「はい。辺境の方で村が十以上潰されていて、騎士団の派遣が決まっていたとのことです。かなり大きな盗賊団で、フォリシアが倒したのは先行していた主戦力部隊だったようで……懸賞金と報償金、加えて勲章を与えるとの連絡が来ました」
「え? いらないですね……?」
「あの、でも、一応国からの評価なので戴かないと国の体面がちょっと、なので……もらってあげて欲しいです」
「そうなのですね……そういえばそんなようなことを色々言われてきましたね」
騎士団にいた頃は、そういうものが家の地位向上やホワイトローズの立ち上げに役立ったけれど……今は別にいらないと思うのだが。
と、思っていたらルビが「マティアス公爵家の功績になりますね」と呟いたのが聞こえた。
……なるほどな。
「ジェラール様の手柄となるのでしたら、我慢して戴くことにいたします」
「え? う、うーん?」
「フォリシア様、例の件も」
「そうだ!」
席に座り、ジェラール様の話が終わるとすが朝食がテーブルに並べられ始めた。
まずはスープとサラダを食べながら、ルビの呟きに顔を上げる。
「あの、体調は……?」
「はい、だいぶ。マルセルにはまだ様子を見た方がいいと言われているんですが……」
「来週王都に行くのであれば、もっと安定させておくべきです」
「確かにそうですね」
「!?」
ルビ!? お前私の味方ではないのか!?
は!? 『フォリシア様の侍女としてわたくしも今のフォリシア様をジェラール様と同じ部屋にするのは危険にしか感じないのですよね、と、申し上げました』……だと!?
それでも私の侍女か!?
「あの、お部屋のことなのですが」
クソ、ルビが裏切った。
手のひら返しがハーピーのトルネードアタック並みだな!
こうなったら自分でなんとかするしかない!
「お部屋に、なにか不備がありましたか?」
「いえ! そうではなく……その、夫婦になって二週は経つのに、いまだに部屋が違うというのは……その……」
「あ……」
ほわ、とジェラール様の表情がゆるんだ。
世界一可愛くないか?
こんな可愛い成人男性がいていいのか?
奇跡の存在すぎないか?
尊……。
「そ、そうですよね。ふふ、ふ、ふ、ふうふ、ですものね」
あわあわ、と可愛らしくて照れておられるジェラール様。
こんな成人男性がこの世に存在する、のか。
こんな、可愛い、成人男性が、存在していいのか。
合法ショタが、この世に……本当に存在するという……。
「えっと、あの、フォリシア様が、よろしいのであれば……今夜からお部屋を同じにしても……僕は……」
「「いいのですか!?」」
おい、なんで私たちの部屋の話をお前が嫌そうにする、マルセル!
ジェラール様がいいというのなら!
もはやそれは同意! 言質! 合意! 合法!
はははは!
聴こえる、聴こえるぞ!
マルセルの『鬼の首取ったような顔で大喜びしやがって』という不満の声が!
「でも、あの、僕は本当に、その、自信はないんですけど」
「私がすべてこなしてご覧にいれますので! ジェラール様はなにもなさらなくて大丈夫です!」
「ジェラール様、やはりまだ早いと思います! 邪念が……じゃ、なくて……体調がよくなったばかりなのですよ!? ここでまた無理をして元通りになってしまっては、王都へ行くのに支障が出ます!」
お、おのれマルセル……!
ジェラール様がいいと言っているのにまだ反対するというのか!
言ってることは至極がもっともな気がするけれど!
「マルセルがいてくれるから、体調が悪くなっても大丈夫」
「ぐっ」
はい、天使~!
もうそんなこと言われたらぐうの音も出ないなぁー?
ふはははははは!
「でも、あの、僕も男なので、頑張ります、ね」
そう言って私に組み敷かれる運命なのがショタというもの。
でもその心意気があるのとないのでは私の気合に大きく影響があるんです。
そんなことも知らないあたりやはり天然物は違うな……。
とりあえず潤滑油を多めに用意して持ち込んでおこう。
痛みなど与えず、快楽だけをたっぷりと与えてゆっくりと休んでいただく。
しょせん運動に過ぎないと思わせ、程よい汗をかいてもらい、安心感を与えて明日も明後日もとりあえず一週間くらい毎日できるようにはあはあはあはあはあ……!
「俺は反対です! ジェラール様! この女の雑念、もはや邪念ですよ!」
バラすなーーーー!
「じゃねん……?」
「ジェラール様に不埒なことを考えているんです! 朝っぱらから!」
ぐぅ!
それは本当にその通り。
言い逃れができない真実!
「ええと、でも今はそういう話をしてしまいましたし……」
「ジェラール様の体調を優先できない女など、本当に妻として役に立つとは思えません!」
「わ、私はジェラール様の妻として、妻の役割をまっとうするつもりだ!」
「上等だ! それなら今宵、立会人を置いても問題はないということだな!」
「立会人……!?」
立会人:この場合、性交が間違いなく行われるかどうかを監視する役割の人のこと。
基本的に閉経した身内女性が立ち会うのが一般的。
必要ならば指南も行い、子作りで必ず相手の子であると証言できる証人でもある。
「……! のっ………………臨むところだ!」
「言ったな? 用意しておくから覚悟しろよ……?」
ぐ、ぐぬぬぬぬぬぬぬ!
36
あなたにおすすめの小説
全ルートで破滅予定の侯爵令嬢ですが、王子を好きになってもいいですか?
紅茶ガイデン
恋愛
「ライラ=コンスティ。貴様は許されざる大罪を犯した。聖女候補及び私の婚約者候補から除名され、重刑が下されるだろう」
……カッコイイ。
画面の中で冷ややかに断罪している第一王子、ルーク=ヴァレンタインに見惚れる石上佳奈。
彼女は乙女ゲーム『ガイディングガーディアン』のメインヒーローにリア恋している、ちょっと残念なアラサー会社員だ。
仕事の帰り道で不慮の事故に巻き込まれ、気が付けば乙女ゲームの悪役令嬢ライラとして生きていた。
十二歳のある朝、佳奈の記憶を取り戻したライラは自分の運命を思い出す。ヒロインが全てのどのエンディングを迎えても、必ずライラは悲惨な末路を辿るということを。
当然破滅の道の回避をしたいけれど、それにはルークの抱える秘密も関わってきてライラは頭を悩ませる。
十五歳を迎え、ゲームの舞台であるミリシア学園に通うことになったライラは、まずは自分の体制を整えることを目標にする。
そして二年目に転入してくるヒロインの登場におびえつつ、やがて起きるであろう全ての問題を解決するために、一つの決断を下すことになる。
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】ちょっと、運営はどこ? 乙女ゲームにラノベが混じってますわよ!?
綾雅(りょうが)今月は2冊出版!
恋愛
「俺は、セラフィーナ・ラファエル・スプリングフィールド公爵令嬢との婚約を解消する」
よくある乙女ゲームの悪役令嬢が婚約を破棄される場面ですわ……あら、解消なのですか? 随分と穏やかですこと。
攻略対象のお兄様、隣国の王太子殿下も参戦して夜会は台無しになりました。ですが、まだ登場人物は足りていなかったようです。
竜帝様、魔王様、あら……精霊王様まで。
転生した私が言うのもおかしいですが、これって幾つものお話が混じってませんか?
複数の物語のラスボスや秘密の攻略対象が大量に集まった世界で、私はどうやら愛されているようです。さてどなたを選びましょうかしら。
2021/02/21、完結
【同時掲載】小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、エブリスタ
悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する
青の雀
恋愛
公爵令嬢のマリアベルーナは、厳しい母の躾により、完ぺきな淑女として生まれ育つ。
両親は政略結婚で、父は母以外の女性を囲っていた。
母の死後1年も経たないうちに、その愛人を公爵家に入れ、同い年のリリアーヌが異母妹となった。
リリアーヌは、自分こそが公爵家の一人娘だと言わんばかりにわが物顔で振る舞いマリアベルーナに迷惑をかける。
マリアベルーナには、5歳の頃より婚約者がいて、第1王子のレオンハルト殿下も、次第にリリアーヌに魅了されてしまい、ついには婚約破棄されてしまう。
すべてを失ったマリアベルーナは悲しみのあまり、修道院へ自ら行く。
修道院で聖女様に覚醒して……
大慌てになるレオンハルトと公爵家の人々は、なんとかマリアベルーナに戻ってきてもらおうとあの手この手を画策するが
マリアベルーナを巡って、各国で戦争が起こるかもしれない
完ぺきな淑女の上に、完ぺきなボディライン、完ぺきなお妃教育を持った聖女様は、自由に羽ばたいていく
今回も短編です
誰と結ばれるかは、ご想像にお任せします♡
婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜
夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」
婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。
彼女は涙を見せず、静かに笑った。
──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。
「そなたに、我が祝福を授けよう」
神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。
だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。
──そして半年後。
隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、
ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。
「……この命、お前に捧げよう」
「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」
かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。
──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、
“氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。
虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……
くわっと
恋愛
21.05.23完結
ーー
「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」
差し伸べられた手をするりとかわす。
これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。
決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。
彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。
だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。
地位も名誉も権力も。
武力も知力も財力も。
全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。
月並みに好きな自分が、ただただみっともない。
けれど、それでも。
一緒にいられるならば。
婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。
それだけで良かった。
少なくとも、その時は。
【完結】婚約破棄されたユニコーンの乙女は、神殿に向かいます。
秋月一花
恋愛
「イザベラ。君との婚約破棄を、ここに宣言する!」
「かしこまりました。わたくしは神殿へ向かいます」
「……え?」
あっさりと婚約破棄を認めたわたくしに、ディラン殿下は目を瞬かせた。
「ほ、本当に良いのか? 王妃になりたくないのか?」
「……何か誤解なさっているようですが……。ディラン殿下が王太子なのは、わたくしがユニコーンの乙女だからですわ」
そう言い残して、その場から去った。呆然とした表情を浮かべていたディラン殿下を見て、本当に気付いてなかったのかと呆れたけれど――……。おめでとうございます、ディラン殿下。あなたは明日から王太子ではありません。
自滅王子はやり直しでも自滅するようです(完)
みかん畑
恋愛
侯爵令嬢リリナ・カフテルには、道具のようにリリナを利用しながら身体ばかり求めてくる婚約者がいた。
貞操を守りつつ常々別れたいと思っていたリリナだが、両親の反対もあり、婚約破棄のチャンスもなく卒業記念パーティの日を迎える。
しかし、運命の日、パーティの場で突然リリナへの不満をぶちまけた婚約者の王子は、あろうことか一方的な婚約破棄を告げてきた。
王子の予想に反してあっさりと婚約破棄を了承したリリナは、自分を庇ってくれた辺境伯と共に、新天地で領地の運営に関わっていく。
そうして辺境の開発が進み、リリナの名声が高まって幸福な暮らしが続いていた矢先、今度は別れたはずの王子がリリナを求めて実力行使に訴えてきた。
けれど、それは彼にとって破滅の序曲に過ぎず――
※8/11完結しました。
読んでくださった方に感謝。
ありがとうございます。
辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。
コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。
だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。
それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。
ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。
これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる