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ゲーム好き
しおりを挟む「甘夏くん? 実は『千物語・オンライン』っていうVRMMOで彼女さんがパーティーを組んでいた人なんだよね。で、一緒に遊んでたら学校が近かったのがわかって、誘ってみたんだ」
と、放課後にブリーフィングルームにいた綾城に聞いてみたらそんな返答。
誰が想像できるか、そんな出会い。
まさかのゲーム。
「えっと、千物語……?」
「知ってます! 千物語・オンライン! プレイヤーは千種類のシナリオを主人公としてプレイする、一風変わったオンラインゲームですよね。シナリオの中には他のシナリオをクリアすることで得られる“職業”に設定しないと、プレイができなかったり他の国へ移動ができなかったりするっていう」
「そうそう。淳くん、よく知ってるね~」
「綾城先輩もゲームするんですか? ちょっと意外です」
見るからに優等生の綾城がゲームとは。
淳も智子もゲームは嗜む程度。
主に栄治と一晴の一つ下の後輩で、ゲーマーと名高い蔵梨柚子のおすすめゲームをやってみる、程度。
「僕と彼女さんもゲームの中で出会ったんだよ。リアルだとあとをつけられたりするし、彼女さんは一般の人だから……」
そういえば有名なスポーツ選手がマスコミに追い回されすぎて、結婚した一般人女性と離婚した――なんてニュースもあった。
綾城珀の知名度は、彼が星光騎士団に入団した直後「恋人がいる」という噂で炎上、自殺未遂して国が運営する『自殺志願者支援』を目的としたVRMMO『ザ・エンヴァースワールド・オンライン』から生還したということで、爆発的に広まったのだ。
大炎上と自殺未遂を経ての復活で留年こそしたものの、一皮剥けた綾城珀のアイドルっぷりは在学中のプロデビューという形で見せつけられている通り。
そして、「彼女がいる」という噂は現在綾城本人が肯定しており、それも話題。
ただ、その“彼女さん”は炎上騒動の時の“彼女疑惑”の人とは別の人だと綾城本人がかなり強めに主張している。
“彼女疑惑”の人は、綾城を陥れるために噂を流してわざと炎上させた人物らしく、綾城としては「敵ですね!」と笑顔で言い放っていたので。
それでも本物の“彼女さん”は正真正銘の一般人女性。
マスコミの一部はいまだにその姿をカメラに収めようと、付きまといが激しい。
「だからデートとかはゲームの中でやってるんだよ。僕にとってはゲームって彼女さんと出会った場所だし、自由に彼女さんとデートできる最高の場所! ゲーム大好き!」
「な、なるほど~」
理由が可愛い。
「淳くんもゲーム好きな人?」
「はい。嗜む程度ですけど。今は栄治様と鶴城先輩がプロモーション担当している『SBO』っていうゲームをやってますね。歌の練習にもなるしってことで」
「ああ、SBO? 僕も気になってたんだよね。神野先輩と鶴城先輩がプロモーションのためにレベリングやってるって言ってて――」
「え! 栄治様と鶴城先輩が!?」
やっぱり例の大型レイドにツルカミコンビが参加するという話は、本当だったのか。
これはますます今日ログインして、掲示板をチェックしておかねばどう拳を握る淳。
「………………。あーーー」
「?」
突然無言になったと思ったら、淳の顔をジッと見つめた綾城が手のひらに拳を落とす。
なにかを納得したような、合点がいったというような。
「神野先輩が言ってたのって淳くんのことかぁ」
「え? え?」
「ううん、珍しく骨のある子を見かけたから、星光騎士団に入団希望してきたら面倒見てあげてねって頼まれてたの。そっかそっか、あの人がわざわざそこまでいうのは珍しいと思っていたけれど」
「え!? え!?」
「面白そうだから僕もSBOやってみようかな。普通のVR機でも遊べるの?」
ちょっと神野栄治関係ではもっと色々教えてほしいのだが、SBOを綾城がやりたい!?
その話の方が今は重要だろう。
(綾城先輩とSBOで協力プレイが……!? 智子が死ぬかもしれない!)
殿堂入り:神野栄治。
現在の最推し:綾城珀。
そんな智子に綾城との協力プレイが可能、と告げたら発狂するほど悶絶するに違いない。
「遊べます! フルダイブ型でも遊べました!」
「よかった~。ソフト買わなくてもダウンロード版あるかな?」
「なんの話だ?」
「ひえ!? 凛咲先生!?」
突然綾城の後ろから現れた凛咲。
目が完全に「なんか面白そうな話してる」というのが見え見え。
これは説明しないと逃げられそうにない。
ので、淳と綾城でSBOというゲームについてかくかくしかじか説明した。
「なるほど! ゲーム内で歌の練習をしていたのか! それ意味あんのか!?」
「歌い方の感覚や音程を理解するにはいいと思います。蔵梨先輩がかなり些細な音域まで忠実に再現してあり、普通のゲームよりも精密な音が出るし聴こえると太鼓判を押していたので」
「へー! そうなのか! いいな、それ! 面白そうだ! いくらだ?」
「え? 先生も買うんですか?」
「蔵梨がおすすめしてるなら機材として興味ある」
凛咲玲王にそこまで言わせる蔵梨柚子、恐るべし。
「ちょりっすちょりーす。あれー、先生もう来てはるん?」
「お疲れ様でーす。あれ、もうみんな集まってる。早すぎません?」
「お、お前らちょうどいいところに来た! ゲーム買おうぜ!」
「「は?」」
「先生、ちゃんと説明しないと!」
「え? あの、え?」
入ってきた花崗と宇月も巻き込まれた。
今代星光騎士団全員強制参加になる予感がしてきた。
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