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生き延びるために
しおりを挟む「そうそう、それから場の空気を変えることも大切だから、一番簡単な方法を教えておくね」
「場の空気?」
「隠の気が漂っている状態で、少しでも陽の気が入りやすくさせるための簡易な結界の一種かな。本当にすごく簡単だから見ておきな」
そう言って両手を広げる。
なんだ、どんな結界なんだ? と見ていたら、突然その勢いのままパァン! と手を叩く。
すると、肌でピリッとした感覚。
これって、まさか。
「わかる? 場の空気が変わったの」
「わかった! すごい!」
「うん、わかったのならいいね。これは本当に誰にでもできる、場の空気を変える結界。霊力を込めることでより広範囲……音の響く場所まで届くから、軽率に使って大丈夫。もちろん人間関係の空気にはあんまり効果ないから、使い所は間違えないように気をつけてね?」
「それは……うん」
さすがにそこは間違えないわ。
いや、小学一年生の幼女ならそこ勘違いするかもしれないか。
中身がおとなでよかったね、私。
「ただ、ちょっと気をつけてほしいのは――この結界でも音が響かない場合は“いっぱいいる”ということを頭に入れておいてほしいこと」
「……いっぱい……い、いる?」
「そう。人がたくさんいると、反響しなくなるんだよ。光も届きづらくなるしね。だからこれは、状況の簡易チェックとも言えるんだ」
「ひょ、え……」
いっぱいいる。
なにがいるって、そ、そりゃあ、まあ……アレですよね。
――霊、だ。
つまり、あの拍手一つで霊の数がわかるようになるかもしれない、ってことか。
うわあ……。
「身の安全を考えてこの二つはまず、確実に覚えておきなさい。一番使うことになると思うからね」
「はいっ」
「では、明日から散策頑張って。絶対に無理だけはしないように。霊が“視認る”ようになってきたら、向こうから近づいてくることもあるから、視えるようになってきてもできるだけ視えない振りを続けなさい。視えると寄ってくるから。ガチで」
「わ、わかったぁ……」
こわぁ。
でも、強くなるって決めたんだ。
霊が見える見えない云々は、いずれ……って思っていたけれど、そもそも子どもの頃の方が見えやすいまであるらしい。
なんというか、“波長”というものがあるらしく、子どもは霊との波長が合いやすいのだ。
今の私じゃん……!
「人が多くいるところは危険な霊も少ないけれどね。まあ、それでもくれぐれも、ね?」
「は、はいっ」
色々教えてもらえた翌日。
学校の準備をして、制服を着る。
今更だけれど、小学校なのに制服を着るってことは私学なんだろうな。
そうか、ゲームの中だと思ってだからあまり気にしなかったけれど、公立だったら私服だよね。
ランドセルも私の時代とはだいぶ違うの、普通に「かっわいいー、テンションあがるぅ」とか言ってたけどそんな場合じゃないか。
そうか、すべては私学の仏神学校だったからかぁ。
よいしょ、とカバンを背負って部屋から出る。
お腹空いたなぁ。
朝ご飯は相変わらず、出ない。
かろうじて夜ご飯に残り物が出る時がある、みたいな感じだ。
秋月さんに相談してみたけれど「僕から使用人に言づけてみるけれど、僕がお金を出しているわけではないから君のご飯に関しては改善が難しいかも」と言われた。
マジで使用人もクソ。
いや、お給料は大事だからわかるけれども。
そして昨日は夕飯も出なかった。
秋月さんにもらった飴玉で日々の空腹を耐え忍んでいる状況。
さすがに成長期がこんなの耐えられないから、途中コンビニのゴミ箱漁ってくるしかない。
今日という今日は覚悟を決めてゴミ漁り、やる!
というわけで隠密行動!
物陰に隠れ、コンビニの裏に回り込み、周囲を確認。
車なし、通行人なし、自転車なしっ!
ターゲット、ゴミ箱ロックオン!
「ほいっしょぉ」
ゴミ箱の蓋を開けると、宝の山!
サンドイッチ二つとおにぎり三つをくすねて、蓋を閉じる。
カバンに詰めて、逃走!
学校に着く前にサンドイッチを証拠隠滅っ!
「美味しい~」
途中の公園で水も飲めば、何日振りかの満腹感。
お腹をぽん、と叩いてから学校に向かおうとしたが、私と同じく水道で水を飲む同い年くらいの男の子がいた。
振り返った男の子は、私の顔を見るなり怪訝な顔をする。
赤茶色の髪と赤い目の――。
「宇治家真智」
ヤバい、本物!?
我が推しVtuber、織星ハルトVCの攻略対象!
そのショタ版!
なんでこんなところに!?
「もしかして、お前もあのコンビニで飯、盗んだ?」
喋ったああああああ!
……でも織星ハルトVCじゃない。
そうか! 声変わり前か!
チッ、残念。
「ま、万引きはしてないわよ」
「まだあった……?」
「……あった、けど……あなたもご飯食べてないの?」
「……うん」
同じ制服なんだけど!?
一応私学ってことはいいところの家の子どもしか入学できないはずだよね?
私みたいな事情があるのならともかく、なんで宇治家真智までコンビニのゴミ箱の中身を確認してくるの!?
この子、そんな経歴だっけ?
えっと、確か――悪魔祓い師の家系。両親が悪魔に殺害されたことで自分を必死に鍛えて、悪霊、悪鬼、悪魔、死神を目の敵にして憎みすぎた結果祟り神と化して『宵闇の光はラピスラズリの導きで』の祓われる可能性のある攻略対象の一人。
「――――」
ストーリーが公開されていないから、確信はないけれど……このプロフィール通りなら……。
「あなたもお父さんとお母さんがいないの?」
「え……お前、も?」
「うん」
頷くと、目を見開かれた。
ショ、ショタ真智可愛い~~~!
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