ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

文字の大きさ
7 / 132

生き延びるために

しおりを挟む

「そうそう、それから場の空気を変えることも大切だから、一番簡単な方法を教えておくね」
「場の空気?」
「隠の気が漂っている状態で、少しでも陽の気が入りやすくさせるための簡易な結界の一種かな。本当にすごく簡単だから見ておきな」
 
 そう言って両手を広げる。
 なんだ、どんな結界なんだ? と見ていたら、突然その勢いのままパァン! と手を叩く。
 すると、肌でピリッとした感覚。
 これって、まさか。
 
「わかる? 場の空気が変わったの」
「わかった! すごい!」
「うん、わかったのならいいね。これは本当に誰にでもできる、場の空気を変える結界。霊力を込めることでより広範囲……音の響く場所まで届くから、軽率に使って大丈夫。もちろん人間関係の空気にはあんまり効果ないから、使い所は間違えないように気をつけてね?」
「それは……うん」
 
 さすがにそこは間違えないわ。
 いや、小学一年生の幼女ならそこ勘違いするかもしれないか。
 中身がおとなでよかったね、私。
 
「ただ、ちょっと気をつけてほしいのは――この結界でも音が響かない場合は“いっぱいいる”ということを頭に入れておいてほしいこと」
「……いっぱい……い、いる?」
「そう。人がたくさんいると、反響しなくなるんだよ。光も届きづらくなるしね。だからこれは、状況の簡易チェックとも言えるんだ」
「ひょ、え……」
 
 いっぱいいる。
 なにがいるって、そ、そりゃあ、まあ……アレですよね。
 ――霊、だ。
 つまり、あの拍手一つで霊の数がわかるようになるかもしれない、ってことか。
 うわあ……。
 
「身の安全を考えてこの二つはまず、確実に覚えておきなさい。一番使うことになると思うからね」
「はいっ」
「では、明日から散策頑張って。絶対に無理だけはしないように。霊が“視認みえる”ようになってきたら、向こうから近づいてくることもあるから、視えるようになってきてもできるだけ視えない振りを続けなさい。視えると寄ってくるから。ガチで」
「わ、わかったぁ……」
 
 こわぁ。
 でも、強くなるって決めたんだ。
 霊が見える見えない云々は、いずれ……って思っていたけれど、そもそも子どもの頃の方が見えやすいまであるらしい。
 なんというか、“波長”というものがあるらしく、子どもは霊との波長が合いやすいのだ。
 今の私じゃん……!
 
「人が多くいるところは危険な霊も少ないけれどね。まあ、それでもくれぐれも、ね?」
「は、はいっ」
 
 
 
 色々教えてもらえた翌日。
 学校の準備をして、制服を着る。
 今更だけれど、小学校なのに制服を着るってことは私学なんだろうな。
 そうか、ゲームの中だと思ってだからあまり気にしなかったけれど、公立だったら私服だよね。
 ランドセルも私の時代とはだいぶ違うの、普通に「かっわいいー、テンションあがるぅ」とか言ってたけどそんな場合じゃないか。
 そうか、すべては私学の仏神学校だったからかぁ。
 よいしょ、とカバンを背負って部屋から出る。
 お腹空いたなぁ。
 朝ご飯は相変わらず、出ない。
 かろうじて夜ご飯に残り物が出る時がある、みたいな感じだ。
 秋月さんに相談してみたけれど「僕から使用人に言づけてみるけれど、僕がお金を出しているわけではないから君のご飯に関しては改善が難しいかも」と言われた。
 マジで使用人もクソ。
 いや、お給料は大事だからわかるけれども。
 そして昨日は夕飯も出なかった。
 秋月さんにもらった飴玉で日々の空腹を耐え忍んでいる状況。
 さすがに成長期がこんなの耐えられないから、途中コンビニのゴミ箱漁ってくるしかない。
 今日という今日は覚悟を決めてゴミ漁り、やる!
 というわけで隠密行動!
 物陰に隠れ、コンビニの裏に回り込み、周囲を確認。
 車なし、通行人なし、自転車なしっ!
 ターゲット、ゴミ箱ロックオン!
 
「ほいっしょぉ」
 
 ゴミ箱の蓋を開けると、宝の山!
 サンドイッチ二つとおにぎり三つをくすねて、蓋を閉じる。
 カバンに詰めて、逃走!
 学校に着く前にサンドイッチを証拠隠滅っ!
 
「美味しい~」
 
 途中の公園で水も飲めば、何日振りかの満腹感。
 お腹をぽん、と叩いてから学校に向かおうとしたが、私と同じく水道で水を飲む同い年くらいの男の子がいた。
 振り返った男の子は、私の顔を見るなり怪訝な顔をする。
 赤茶色の髪と赤い目の――。
 
宇治家真智うじいえまち
 
 ヤバい、本物!?
 我が推しVtuber、織星おりほしハルトVCの攻略対象!
 そのショタ版!
 なんでこんなところに!?
 
「もしかして、お前もあのコンビニで飯、盗んだ?」
 
 喋ったああああああ!
 ……でも織星ハルトVCじゃない。
 そうか! 声変わり前か!
 チッ、残念。
 
「ま、万引きはしてないわよ」
「まだあった……?」
「……あった、けど……あなたもご飯食べてないの?」
「……うん」
 
 同じ制服なんだけど!?
 一応私学ってことはいいところの家の子どもしか入学できないはずだよね?
 私みたいな事情があるのならともかく、なんで宇治家真智うじいえまちまでコンビニのゴミ箱の中身を確認してくるの!?
 この子、そんな経歴だっけ?
 えっと、確か――悪魔祓い師の家系。両親が悪魔に殺害されたことで自分を必死に鍛えて、悪霊、悪鬼、悪魔、死神を目の敵にして憎みすぎた結果祟り神と化して『宵闇の光はラピスラズリの導きで』の祓われる可能性のある攻略対象の一人。
 
「――――」
 
 ストーリーが公開されていないから、確信はないけれど……このプロフィール通りなら……。
 
「あなたもお父さんとお母さんがいないの?」
「え……お前、も?」
「うん」
 
 頷くと、目を見開かれた。
 ショ、ショタ真智可愛い~~~!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!

ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」 卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。 よくある断罪劇が始まる……筈が。 ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

処理中です...