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新生活(2)
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実際今の私には粦と秋月しか味方がいないんだ。
この二人から見放されたら詰む。
だからちゃんとここにいてもらうために、繋ぎ止めるためにも彼女の今の環境を変えていく必要がある。
確かに孤児が学費も生活費も出してもらい、住む場所を提供されてたら遠慮してしまうのも無理はないけれど、前世一応社会人の私からしたら年若い学生がお小遣いもなしに家事炊事と勉学でいっぱいになっているのは可哀想なのよ。
このくらいの歳の子が友達と遊びに行くこともなく漬物みたいな生活して過ごすなんて、親戚のおばちゃんみたいな心境になっちゃう。
楽しく幸せに暮らせ……!
私も自分ができることはやろう。
「そ、そうですね。お金は大事ですよね。粦なんかにお金をすべて預けるのは不安ですよね」
「計算できるならいいけれど」
「……………………」
ダメそうなんだよなぁ。
「計算が得意な人に任せた方がいいと思うの」
「はい……そうですよね……」
「一ヶ月分とかじゃなくて、一年分として渡されているんでしょう? 子どもにそんな大金の管理難しすぎるよ。ちゃんとしたおとなの人に任せた方が責任を取らなくていいよ」
「は、はい」
子どもがそんな大金の責任を負うべきじゃない。
それに、あの鬼ババアは私たちがお金の管理を完璧にしたとてしても絶対になにか言ってくる。
その前に大人を入れて、お金の管理を任せて責任の場所を移す。
でないと『こんなに無駄遣いしやがって、働いて返せ!』とか言われそうじゃん。
一千万円とか、小学校一年生に返せる額じゃないよ!
「そうですよね。奥様、『これはお前らに与えた金じゃない。耳を揃えて必ず返せ』とおっしゃっていましたし」
「へぁ!? い、言ってたの!?」
「はい。お嬢様には話さない方がいいと思ったんですが、わたしよりもお嬢様の方がお金に関してしっかりしておられたので……その……申し上げていた方がいいのかなって。あくまでも『貸付だ!』とおっしゃっておりました」
「くっ……」
最初から借金扱いだとぉーーーー!?
あ、あの鬼ババアーーー!
「それなら尚更お金のプロに入ってもらった方がいいじゃない! 会計士さんを探すぞ!」
「はい! わかりました!
――という感じでお金に関しては会計士さんを雇うことにした。
おとなが一人入るだけで絶対に違うからね。
「っていうのが悩みかなあ」
「ふーん?」
学校での昼休み。
私は粦が作ってくれたお弁当。
攻略対象の一人である宇治家真智のお弁当は、おばさんの手作り。
真智は私に「話し合うように」と言われたあと、素直な気持ちを叔父さん夫婦に話したらしい。
そうしたら案の定、真智の叔父夫婦は真智のことを思って真智の言動を制限せず、時間をかけて慣れてもらおうとしていた、と話してくれたそうだ。
おとなが子どもに、とても真摯に向き合ってくれるというのはそれだけですごいこと。
うちの鬼ババアどもには絶対に真似できないこと。
真智はちゃんとした“保護者”を得て、普通の小学生らしい生活を送り始めたという。
純粋に解決したことが嬉しいし、羨ましい。
私も一人暮らしを始められたことで、だいぶ身の危険が減ったように思うし。
一人暮らしと言っても粦がいるから正確には二人暮らしだけれど。
で、悩みが解消した真智が「お礼におれもお前の悩みごとをなんとかしてやる」と生意気にも言ってきたから、とりあえず話をしてみたわけですよ。
小学校一年生になんとかできるわけもないから、話を聞いてもらう程度の軽い気持ちでね。
「なんか、お前んちのばーさん悪魔に取り憑かれてるみたいだ」
「え? どういうこと?」
「言ってることとか、やってることが悪魔に取り憑かれてる人間の言動みたい」
「え、そうなの?」
「うん。俺の家、悪魔専門だから」
あ、そうだ。
真智のプロフィールは『悪魔に両親を殺害された、悪魔祓い師の一族の末裔』だ。
叔父さん夫婦に引き取られてもなお、悪魔への憎しみが残るようならゲーム通りになりかねないが、それはそれとして悪魔のプロなのは私よりも真智の方。
真智が言うのならそうなのかもしれないけれど……。
「でも、うちの家系も祈祷師だよ? 悪魔に取り憑かれるなんてことあるの?」
「あるよ。祈祷師ってどっちかって言うと“整える”とか“跳ね返す”とかに特化しているんじゃん?」
そうなん?
私まだそのレベルに到達してないからわからん。
「跳ね返すのに失敗したら悪魔に取り憑かれるし、悪魔祓い師だって隙を見せれば乗っ取られる。だから悪魔祓いは、力もそうだけれど精神力がなによりも必要なんだって。あいつらは人の心の弱みに漬け込んでくるから」
「怖いね」
「でも負けたくない。負けない。おれ、強くなって母さんと父さんの仇を取るんだ。悪魔に苦しめられている人たちを助ける、立派な悪魔祓い師になって」
あれ、もしかしてやはり復讐心は残っている?
だとしたらどうしよう……と思ったけれど、続いた目標はゲームの彼なら言わないような内容。
だってゲームの真智は――シナリオこそないものの、ヒロインとの会話でことごとく『悪魔に憑かれるような弱い人間、俺が悪魔を祓うための養分だ』と一貫していた。
お前が悪魔じゃねーか、と思うような発言だが、そのくらいに視野狭窄状態になっていたのだ。
まさしく復讐の鬼。
それが『人助け』を口にするなんて……。
この二人から見放されたら詰む。
だからちゃんとここにいてもらうために、繋ぎ止めるためにも彼女の今の環境を変えていく必要がある。
確かに孤児が学費も生活費も出してもらい、住む場所を提供されてたら遠慮してしまうのも無理はないけれど、前世一応社会人の私からしたら年若い学生がお小遣いもなしに家事炊事と勉学でいっぱいになっているのは可哀想なのよ。
このくらいの歳の子が友達と遊びに行くこともなく漬物みたいな生活して過ごすなんて、親戚のおばちゃんみたいな心境になっちゃう。
楽しく幸せに暮らせ……!
私も自分ができることはやろう。
「そ、そうですね。お金は大事ですよね。粦なんかにお金をすべて預けるのは不安ですよね」
「計算できるならいいけれど」
「……………………」
ダメそうなんだよなぁ。
「計算が得意な人に任せた方がいいと思うの」
「はい……そうですよね……」
「一ヶ月分とかじゃなくて、一年分として渡されているんでしょう? 子どもにそんな大金の管理難しすぎるよ。ちゃんとしたおとなの人に任せた方が責任を取らなくていいよ」
「は、はい」
子どもがそんな大金の責任を負うべきじゃない。
それに、あの鬼ババアは私たちがお金の管理を完璧にしたとてしても絶対になにか言ってくる。
その前に大人を入れて、お金の管理を任せて責任の場所を移す。
でないと『こんなに無駄遣いしやがって、働いて返せ!』とか言われそうじゃん。
一千万円とか、小学校一年生に返せる額じゃないよ!
「そうですよね。奥様、『これはお前らに与えた金じゃない。耳を揃えて必ず返せ』とおっしゃっていましたし」
「へぁ!? い、言ってたの!?」
「はい。お嬢様には話さない方がいいと思ったんですが、わたしよりもお嬢様の方がお金に関してしっかりしておられたので……その……申し上げていた方がいいのかなって。あくまでも『貸付だ!』とおっしゃっておりました」
「くっ……」
最初から借金扱いだとぉーーーー!?
あ、あの鬼ババアーーー!
「それなら尚更お金のプロに入ってもらった方がいいじゃない! 会計士さんを探すぞ!」
「はい! わかりました!
――という感じでお金に関しては会計士さんを雇うことにした。
おとなが一人入るだけで絶対に違うからね。
「っていうのが悩みかなあ」
「ふーん?」
学校での昼休み。
私は粦が作ってくれたお弁当。
攻略対象の一人である宇治家真智のお弁当は、おばさんの手作り。
真智は私に「話し合うように」と言われたあと、素直な気持ちを叔父さん夫婦に話したらしい。
そうしたら案の定、真智の叔父夫婦は真智のことを思って真智の言動を制限せず、時間をかけて慣れてもらおうとしていた、と話してくれたそうだ。
おとなが子どもに、とても真摯に向き合ってくれるというのはそれだけですごいこと。
うちの鬼ババアどもには絶対に真似できないこと。
真智はちゃんとした“保護者”を得て、普通の小学生らしい生活を送り始めたという。
純粋に解決したことが嬉しいし、羨ましい。
私も一人暮らしを始められたことで、だいぶ身の危険が減ったように思うし。
一人暮らしと言っても粦がいるから正確には二人暮らしだけれど。
で、悩みが解消した真智が「お礼におれもお前の悩みごとをなんとかしてやる」と生意気にも言ってきたから、とりあえず話をしてみたわけですよ。
小学校一年生になんとかできるわけもないから、話を聞いてもらう程度の軽い気持ちでね。
「なんか、お前んちのばーさん悪魔に取り憑かれてるみたいだ」
「え? どういうこと?」
「言ってることとか、やってることが悪魔に取り憑かれてる人間の言動みたい」
「え、そうなの?」
「うん。俺の家、悪魔専門だから」
あ、そうだ。
真智のプロフィールは『悪魔に両親を殺害された、悪魔祓い師の一族の末裔』だ。
叔父さん夫婦に引き取られてもなお、悪魔への憎しみが残るようならゲーム通りになりかねないが、それはそれとして悪魔のプロなのは私よりも真智の方。
真智が言うのならそうなのかもしれないけれど……。
「でも、うちの家系も祈祷師だよ? 悪魔に取り憑かれるなんてことあるの?」
「あるよ。祈祷師ってどっちかって言うと“整える”とか“跳ね返す”とかに特化しているんじゃん?」
そうなん?
私まだそのレベルに到達してないからわからん。
「跳ね返すのに失敗したら悪魔に取り憑かれるし、悪魔祓い師だって隙を見せれば乗っ取られる。だから悪魔祓いは、力もそうだけれど精神力がなによりも必要なんだって。あいつらは人の心の弱みに漬け込んでくるから」
「怖いね」
「でも負けたくない。負けない。おれ、強くなって母さんと父さんの仇を取るんだ。悪魔に苦しめられている人たちを助ける、立派な悪魔祓い師になって」
あれ、もしかしてやはり復讐心は残っている?
だとしたらどうしよう……と思ったけれど、続いた目標はゲームの彼なら言わないような内容。
だってゲームの真智は――シナリオこそないものの、ヒロインとの会話でことごとく『悪魔に憑かれるような弱い人間、俺が悪魔を祓うための養分だ』と一貫していた。
お前が悪魔じゃねーか、と思うような発言だが、そのくらいに視野狭窄状態になっていたのだ。
まさしく復讐の鬼。
それが『人助け』を口にするなんて……。
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