ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

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パソコンデビュー!

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「家の財政状況も悪いみたいだし、私が家を立て直さなきゃ」
「お前そんなことまでしなきゃいけないのか。大変だな」
「すごく他人事だなぁ」
「そーゆー難しいことわかんねーしな」

 まあ、小学校一年生はそうだよね。
 それよりも、お弁当の最後のおかずを口に放り込み「おばさんのからあげすごいうまい」と咀嚼するショタ推しの幸せそうな顔を見てると、今の時間を大事にするのも必要なことかも、と思えてしまう。

「でも、お前のこと叔父さんに話したら今度家に連れて来いって言ってたから、今日とか明日とか、こない?」
「今日はダメー。家電を揃えに行くのー。あと、会計士さんを探しにいくしー」
「そっか。明日は?」
「明日は……いいかな」

 ショタとはいえ推しの家に遊びに行く?
 いいの? それ。大丈夫?
 小学生同士ならセーフ?




 帰宅してから粦とともに家電量販店に向かう。
 家の中を一度見て周り、必要なものをリストアップしてお財布を握り締めて行った。
 買うものは電子レンジ、クーラー、ドライヤー、炊飯器、掃除機、食洗機、パソコン。
 ……パソコンは絶対!
 扇風機やストーブはその都度必要そうなら購入する。
 とりあえず粦の負担を減らしたい。
 家事をしながら学生をやるのはしんどいもんね。
 できるだけ頼れるものは家電に任せた方がいいでしょ。
 鬼ババアには『無駄遣いしやがって!』とか言われそうだけれど、必要なもんは必要なの!
 学生の時間は貴重なんだぞっ!
 ってわけで便利な家電を全部買おうと思う。

「わ、わ、わ、わあ……! 粦は家電量販店に初めてきました……!」
「初めて!?」
「は、はい。真宵様は初めてではないのですか?」
「はじ……………………めて、かも」

 記憶がないけれど、多分行ったことはないんじゃないだろうか。
 今までの扱い的に考えて、だけれど。

「ねえ、粦」
「はい、なんでしょうか」
「私、お母さんの記憶が……飛んじゃったの。粦は私のお母さんのこと覚えてる……?」
「えっ」

 私が前世を思い出す前の私……真宵は多分、母の吊られた姿で心を壊してしまったんじゃないだろうか。
 きっと唯一の味方だった母が、真宵を遺して――逃げたから。
 どうしてこんな地獄に私を一人で遺して逝ったの?
 って、思って、絶望したんじゃないだろうか。
 そんな気がするのだ。
 だから“私”が、入る隙間があった。
 その隙間に私は入り込んで、ピッタリハマって出られなくなっている……みたいな。
 だからなにも覚えていない。
 引っ越しの時に思ったけれど、写真すらなかったんだよね。
 だからなにも……本当になにも、記憶がない。
 残っている記憶は私が真宵になった時に、目の前に吊り下がった姿。
 項垂れる頭、長い髪、失禁の異臭、薄い水色のワンピース。
 熱いような、でも、間違いなく熱が冷めていく感覚が……。

「ごめんなさい、粦もよく存じ上げないんです」
「そっか。そうだよね。うん、大丈夫! よーし、パソコン買うぞー!」
「は、はい! 買いましょう!」

 で。

「「回線契約」」
「はい。パソコンをお買い上げの方におすすめしているのですが、インターネットに繋ぐためにはこちらの回線の契約をしていただかなければいけなくてですね。未成年の方はそのー……保護者の方に手続きをしていただかなければならなくてですね」

 粦と二人、顔を見合わせてしまう。
 あ、う、あ、う。
 それは考えが至ってなかったぁ……。

「わ、わかりました……えっと、あの……ほ、保護者を連れてきたら、契約して、インターネットができるようになるんですね」
「はい。そうですね」
「ち、ちなみに携帯電話……とかは……そのー……」
「そちらも保護者の方に契約を……」
「「「………………」」」

 店員さんと、三人でなんとも言えない空気感が流れる。
 ヤバいなぁ、これ……。
 インターネットに繋ぐには、おとなの力が……必須……!
 とりあえず手に入れた家電を家に配送してもらう手続きだけして、インターネットに関しては保留。
 二人ですごすごと家電量販店を出た。

「まさかインターネットや携帯電話の契約に年齢が関係していたなんて」
「いや、まあ、そんな気はしていたけれど」
「ど、どうします?」
「ど、どうしようね……」

 まったくの第三者に頼むわけにはいかない。
 多分インターネット料金、携帯電話料金は契約者に発生する。
 どうしようー! ここまで考えてなかったぁー!

「とりあえず保留で。ぐっ、でも携帯電話くらいは契約したいな~。連絡取れ合う方が楽でいいもんね」
「粦は今まで携帯電話がなくてもこまったことはないですが……」
「これからは必要だよ。粦、学校に携帯持っている子いないの?」
「……えっと……います」
「でしょう? 友達とも携帯で連絡取り合わないと、ぼっちになっちゃうよ」
「えっと……」

 この反応は……まさか……。

「もう、ぼっち?」
「は、はい。粦は友達がいません」
「携帯がないからじゃない?」
「そ、そうなのでしょうか? でも、放課後は仕事がありますから、ご一緒できませんし……お休みの日も特にありませんでしたし」
「これからは家電が手伝ってくれるから、粦は放課後遊んできてもいいんだよ! 土日祝日も、ちゃんとお休みして!」
「ええええ!?」

 手を握る。
 粦には今からでも青春を満喫してほしい。
 そうすることで、きっと人生変わるから。

「友達を作って、粦。絶対にその方がいい。その人は絶対に粦がピンチになったら助けてくれるから。粦の人生を豊かにしてくれるから」
「真宵お嬢様……」

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