ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

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ショッキング過去

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 善岩寺十夜ぜんがんじとうやもまた、破滅エンドのある攻略対象。
 霊媒師の家系で、霊を下ろし、そのまま悪霊に乗っ取られて行方不明となった母を探している霊媒師。
 声を聴いて寄り添うように仕事をする。悪魔になった母を倒しきれず、逆に取り込まれて祟り神になる。
 祟り神になったあとはお決まりの――ヒロインによって浄化されて倒されるエンディング。
 センターを務めるメイン攻略対象であり、ストーリーは公開済み。
 黒髪に水色のグラデ。青い瞳のイケメン。
 VCは人気ベテラン声優の久花藍くはなあい



「とーやー! ちょっと紹介したいやついるんだけどー」
「なぁにー?」

 昼休みになってすぐ、真智に連れていかれて隣のクラスを覗き込む。
 うちのクラスはおとなしい子が多いのか、家同士のあれそれがあるからなのか、クラスメイトであってもあまり話をしない。
 それは私と真智が友達になってからもあまり変化はなかった。
 これに関して真智に話を聞くところによると、「流派によっては力の相性の良し悪しが関係するからじゃない?」とのことらしい。
 あと、先日真智の叔父さんが言っていた通り、私の実家――千頭山せんずやま家の権威が強いため敬遠されている節があるように感じた。
 家の力が強いのなら、媚びてきそうなものだが……クラスメイトの雰囲気はそういう感じではなく、間違いなく『関わってもいいことはない』という感じ。
 要するに、腫れ物扱いなのだ。
 そんなことに今更気づくのも私鈍すぎない?
 教師も私への態度についてノータッチ。
 なんだか先生たちも巻き込んでここまで私に態度が冷たいって、本来の千頭山せんずやま真宵まよいはどんだけやばい子だったのだろう?
 それに関して真智に聞いてみるのは――ちょっとまだ心の準備ができてないというか怖いというか。
 で、その心の準備ができてないのはこちらも同じ。
 真智に呼び出された隣のクラスの男の子が、本を机にしまって近づいてくる。
 黒髪に水色のグラデ。
 青い瞳のイケメンの片鱗が垣間見える美少年ショタ。

「こいつ、マヨイ」
「うん? うん、はじめまして?」
「初めまして、千頭山せんずやま真宵といいます」
「ああ、あの有名な」

 それはどういう意味で……?
 こわ、怖い! 怖くて聞けない!
 隣のクラスの子たちも私の名前を聞くなり一瞬騒めいた。
 なに!? なにがあったの私!

「有名? マヨイって有名なのか?」

 ひぃ!? なんで聞いちゃうの真智!
 それを聞いて元々の千頭山せんずやま真宵がとんだイカれ女だったらどうしてくれるの!?
 私、この学校にいる間に人としての評判もなんとかしなきゃいけなくなるじゃん!?
 正直そこまでの気力はあんまりないよ!?
 普通に生活していたら、自然に友達ができるかなー、くらいの軽い気持ちでいたのに、なにか致命的にマズイことしてたとしたらそれを挽回するところなんですけど!?

「うん、有名だよー。入学式の時にママたちが座る席で、ママとおばあちゃんが喧嘩して大声で怒鳴ってた人! なんか、おばあちゃんがすっごい叫んで、千頭山せんずやまのママが叩かれて転んでた」

 鬼ババアのせいじゃねぇかぁぁぁぁあ!
 え、え!? 私の入学式の席で!?
 鬼ババアが私のお母さんを張り飛ばして騒動を起こしてたってこと!?
 や、ヤバすぎんだろあの鬼ババアー!
 よくそんなことして『世間体ガー』とか抜かしてんなマジでイカれてんのか!?

「え、なにそれこえぇー。そんなことあったんだ」
「なんで真智は知らないの」
「眠くてあんま覚えてねーや」
「あはは。真智はおねぼーさんだもんねー」

 言うて私も前世の記憶のおかげで前の真宵の記憶は残っていないから、そのできごとの記憶もないんだけれど。
 それにしたってあまりにも非常識すぎる。
 孫の入学式で保護者席に座っていた祖母が母親を叱りつけ、張り飛ばしていたなんて。
 そりゃあ腫れ物扱いされても仕方ない……。

「だから千頭山せんずやま家のマヨイちゃんとはあんまりお話ししないようにねー、って、ばあばとママに言われてるんだー。真智は言われてないの?」
「知らね」
「真智らしーねー」

 ふわふわと間延びした話し方。
 この辺りはゲームの時の印象が強く垣間見える。
 にこにことなにを考えているのかよくわからないが、存外裏表がない性格のため割とこのまま。
 天然で、非常に優しいため母親が悪魔に乗っ取られて襲ってきても、非情になりきれず敗北をしてしまう。
 ハッピーエンドを迎えるためには、彼の優しい性格に悪霊や悪魔に対して非情に処す心構えや覚悟を持たせなければならず、ヒロイン自身が厳しい修行を行わなければならない。
 自身を厳しく、甘えを許さずに修行することで彼自身が自らの弱さ、甘さを顧みて良し悪しのわからない子どもの霊が悪さしているところを鎮め、一皮剥けたところがカッコよかったんだよなぁー。
 ……まあ、ゲームの話なんだけれど。
 こうして蝶よ花よと愛でて育てられた結果、非常に素直で優しい子に育つんだよね。
 普通の職業なら問題はなさそうだけれど、霊媒師――いや、霊媒師に限らず“こちら側”の仕事はかつて人間だったモノや、土地神やその慣れ果て、人の悪意、呪い、それよりも強い強い祟りを相手にする。
 優しさだけではとてもやっていけない。
 思い出すだけで怖いんだから。
 それと対峙すると考えたら、優しいだけじゃやっていけないとわかる。

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