ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

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立ち絵完成

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「こんにちはー」
「お邪魔しまーす」
「ただいまー」
 
 その日の放課後、善岩寺ぜんがんじ家に二度目の来訪。
 すぐに使用人が出迎えに現れて、リビングに通される。
 
「おお! よく来てくれた! こちらが完成品だ。確認してくれ!」
「こんにちは、一夜さん。確認させていただきます。えっと」
 
 ノートパソコンを差し出される。
 い、いいなぁ……ノートパソコン。
 うちで買ったパソコン、ネット繋がってないんだもん……。
 データ自体は見られるけれど……え? 待って? もしかして……もしかしてあるの……?
 USBメモリ……! あるの!?
 
「どうかな」
 
 あったあああ!?
 USBメモリ、この世界にもあったああああ!?
 驚愕! あまりにも前世の世界に科学技術が近い!
 じゃあなに!? やっぱり千頭山せんずやま家がひと時代遅れしてるってこと!?
 ヤバすぎぃ!?
 い、いや、そのツッコミは後にしよう。
 科学力が前世に近いのだったら、やっぱりVtuberの夢はかなり叶えられる可能性が高まっているってことだもん!
 完成したイラストを拝見すると、なんということでしょう。
 想像以上に可愛い女の子のイラストがそこにはあった。
 
「可愛い! 理想通りです! すごいです! 十夜くんのお兄さん!」
「そうか! そうか!」
「ねー、一夜お兄ちゃんは天才でしょー?」
「うん! こういう感じがよかったの! ありがとうございます!」
 
 一応デザインの方は二万円。
 そしてここから表情差分、パーツ分け、衣装の細かいところの指示などをさらに細かくお願いしていく。
 一夜お兄さんは私みたいな子どもの話をとても真剣に、相槌を打ちながら聞いてくれる。
 
「なるほど、こうしてパーツ分けすることでX線Y線などの一部を固定して動くようするわけか。それが2Dというやつだな」
「そうです。で、特に動かしたいのは肩から上で……」
「瞼、眉、前髪、横髪、後ろ髪……ふむふむ。ちなみに猫耳を頭につける場合はその耳もパーツ分けするべきか?」
「動かすのならそうですね」
「全身を囲碁かす場合は服の裾の部分をこうして切り分けてパーツにするということかな?」
「はい。パーツが細かければ細かいほど、リアルな感じの動きができるようになると思います。3Dの場合は、もっと大きめの動きを可能にするようさらにしっかりとしたパーツ分け手足や表情の細かな動きの汲み取りができるなんかこう……スーツみたいなのが必要で、カメラも優秀なやつが必要になるかも、って思うんですけれど」
「スーツみたいなもの?」
「動きをPCに取り込む必要があるので、なんかこう、こういう感じの」
 
 紙を一枚いただいて、前世の記憶を総動員して3Dモデルを動かすパーツを説明する。
 指の関節、手首、肘、肩、首、頭、胸、腰、太もも、膝足首、足の先……このくらい細かく動きを再現できる、網みたいなスーツといえばいいのか。
 それを描くと一夜さんはむしろなにかを納得したように「素晴らしい!」と叫ぶ。
 鼓膜壊れたかと思った。
 
「これは考えたことがなかったな! すごい発想だ! 君は天才だな!」
「いや、えっと、あの……なにか、調べた時、見かけたような気がして……」
「いやいや! 俺もプログラミングは多少齧っていたが、ここまでのことは考えたことがなかった! 2Dというのも調べたが、3Dのことまで考えているとは……君は……神かな?」
「は、はい?」
 
 なにか変なことを言い出した。
 一夜さん、顔を上げてめちゃくちゃ瞳をキラキラさせている。
 瞳キラキラのマッチョ……。
 
「君は神だ。創造主だ! 君のその発想……俺は感動した! 俺は、確信した! そう! 俺は今! 見えた! 未来が!」
「は、は……」
「俺は女の子になれる! 美少女に!! なれる!!」
 
 鼓膜が痺れるぅー。
 ものすごい大声で、しかもなぜか立ち上がって叫ぶ一夜さん。
 あまりのことに震えながら十夜の方を見ると、ニコリと微笑まれる。
 なにも解決しそうにないので真智の方を見ると、真智は私以上に困惑していた。
 ま、まあ、そうだよねぇ。
 
「十夜の兄ちゃん、なに言ってるんだ?」
「さあ?」
 
 真顔で聞いている真智。
 無慈悲すぎる。
 子どもの無垢な残酷さが出てるってぇ……。
 
「まずは真宵くんと二人で目指そう! Vtuber!」
「は、はい!」
 
 なんかよくわからないけれど、やる気がめっちゃ出ておる。
 下手したら私より熱量ない?
 
「ではこれをこうしてこういう感じに動くようにプログラムをするという感じだな」
「はい。あの、できますか?」
「任せたまえっ!」
 
 鼓膜……鼓膜ががががが……。
 
「ち、ちなみにVtuberをやるための機材とかは、揃っていますか?」
「機材!?」
 
 こ、鼓膜ゥ……。
 耳栓ほしいレベルの大声。
 な、なんか、この人声だけで隠の気吹き飛ばしそう。
 お鈴いらずじゃない?
 それに、この圧。
 隠の気が圧倒されて、弱い悪霊なら声だけで吹き飛びそう。
 
「機材は――」
 
 調べた機材のあれそれをメモして手渡す。
 衝撃を受けたような表情。
 
「これほどの機材が必要なのか!?」
「あ、あとー……あのー……一夜さんは、防音室みたいなものが、あると……いい、かも……」
「防音室! 確かに!」
 
 私は動画に自分のLive2Dで実況を入れる。
 だからあまり防音については考えていなかった。
 大声で収録するような内容でもないし。
 
「今も結構うるさいって母様に怒られているから! 防音室は設置した方がいいかも!」
「確かにぃー」
「ただいまー! あらー! 千頭山せんずやま家のお嬢さん!」
「あ、ママお帰りなさーい」
 
 顔を上げる。
 玄関の方から白い着物を纏った十夜母が入ってきた。
 仕事帰り……?

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