ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

文字の大きさ
32 / 132

結界の外の話

しおりを挟む

「あ、お邪魔しています」
「いらっしゃい! 今日はどのようなご用?」
「あ、えっと、依頼していたイラストが完成したからと……呼んでいただいたので、お邪魔させていただきました」
 
 ぺこ、と頭を下げると十夜母はものすごく嬉しそうに「一夜のイラストをそんなに気に入ってくれるなんて!」と近づいてきた。
 これだけ大きなお屋敷に住んでいるのだから、相当に稼いでいるのだろうけれど……専業主婦をやらずにちゃんとお祓いのお仕事に行っているんだ?
 
「おばさんもお仕事?」
「こんにちは、真智くん。そうよ。このあともすぐに遠方に出張なの」
「あのお化け屋敷?」
「そうね」
「お化け屋敷?」
 
 なにやら聞き捨てならない言葉だ。
 不安に感じて聞き返すと、真智が「いっぱい遠くのところにでっかいお化け屋敷があるんだって」と教えてくれた。
 この世界観でお化け屋敷なんて呼ばれるような場所、絶対にろくでもなくない!? 
 
「ケッカイの外にあるんだよー。パパも、一夜お兄ちゃん以外のお兄ちゃんたちもお姉ちゃんたちも昨日から行ってるの」
「家族総出で?」
「うむ。結界の外にある『坩堝るつぼ』という建物がね、無数にあるんだよ。百年前、巫女が反転したお話は知っているかな?」
「は、はい。えっと、本家の人に聞きました」
 
 嘘は言ってない。
 秋月は本家の守護神だからね。
 
「うん、いつか教わるとは思うが『六家むつけ』により結界が張られているのは最初、日本の六大都市――東京府東京市、神奈川県横浜市、愛知県名古屋市、京都府京都市、大阪府大阪市、兵庫県神戸市だけだった。その後、安部家、大離神おおりかみ家、千頭山《せんずやま》家が中心となり各地の都市を浄化、結界を張って祟りの軽減と現状の回復に努めているのだとか」
 
 つまり、六芒星結界を張った六家は巫女の反転により穢され切った世界の浄化と回復のため、安全圏である結界の中で次世代を育成しつつ結界の外の人々の生活を戻すために定期的に結界の外に出て新たな人々の居住区にするよう浄化や浄霊に勤めていたってことらしい。
 め、めちゃくちゃ大変じゃん……!
 っていうか、世界の半分を壊滅させ、百年経った今ももう半分を祟り続ける巫女って本当に激ヤバ祟り神じゃん。
『宵闇の光はラピスラズリの導きで』の制作陣は攻略対象を祟りが身にして殺すくらいなら、こっちの激ヤバ祟り神をなんとかさせた方が主人公のすごさが伝わると思うんですがなんでやらなかったんですかねぇ!?
 さすがにゲームの主人公でも世界崩壊を引き起こしたレベルの祟り神は無理だったとか?
 もしくは――登場予定の攻略対象のストーリーが全員公開されたら、ラスボスとして登場予定だった……とか?
 は? じゃあ……もしもしもそうだとしたなら『宵闇の光はラピスラズリの導きで』の公式悪役令嬢、千頭山真宵せんずやままよいの存在ってなに?
 ラスボスが出てくるまでの繋ぎボス?
 それとも、反転巫女の祟り神が出てくれば千頭山真宵せんずやままよいには救済ルートが追加されるとか?
 そうだよね? だっていくらなんでも可哀想すぎるもんね?
 ……まあ、それがいつかわからない。
 本当に公式悪役令嬢、千頭山真宵せんずやままよいの救済ルートが追加されるかもわからない。
 だから結局のところ、あるかどうかわからないものにすがるより自分の力でなんとかするしかないってこと。
 
「じゃあ、おばちゃんは結界の外の悪魔や悪霊を祓っているの?」
「そうよ。力のある者が何時間もかけて人が通れる道を整備して、少しずつ拠点を増やしていくの。拠点が増えれば人が住める場所になるから、そうしてもっとたくさんの能力者がもっといろんな地域に浄化に行けるようになるのよ。パパや安部家、大離神おおりかみ家の能力者が中心になって作業が進んでいるから、いつか旅行にだって行けるようになるんだから!」
「旅行ー!」
 
 旅行!
 そっか、結界の外に出ることすら危険だから旅行っていうのも難しいのか!
 それでも結界の中だけでここまで前世の世界と変わらない科学技術なのすごくない?
 ネットの環境が整っているのも奇跡みたい。
 
「だからママ、また三日くらいお留守にするね」
「うん、わかったー! がんばってねー!」
「奥様、仕事の件で千頭山せんずやま家の方から急ぎの依頼が……」
「ええ? 珍しいわね? 詳しく教えて」
「……っ……!?」
 
 せ、千頭山せんずやま!?
 うちの鬼ババアからってこと!?
 まさか自分のところに来た依頼を、他の六家の家に振ってるって話じゃないでしょうね!?
 
「ちょっと行ってくるわね」
「ま、待ってください! そ、祖母がなにかご迷惑をかけているのでしたら、私にも教えてほしいです!」
「ええ?」
 
 困惑されたが、もしかしたらこの件が十夜母が悪魔に乗っ取られて行方不明になる件かもしれない。
 というわけでお仕事の内容をお聞きする。
 依頼人のプライベート内容は伏せるが、うちの鬼ババアが善岩寺ぜんがんじ家に依頼をした内容は『第一都市内のとある家の奥様に取り憑いている悪霊を祓ってほしい、というもの。
 悪霊? 悪霊なら違うのかな?

「悪魔ではないのですか?」
「悪魔だったら真智くんのお家に依頼が行くんじゃないかしら?」

 なるほど、確かに。
 真智の家――宇治家うじいえ家は悪魔祓いの名士だからな。
 じゃあ今回のこれは違うか。
 でも、なんか嫌な感じがするんだよなー。
 なぜなら鬼ババアからの依頼っていうところにね、嫌な感じがひしひしとね。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!

ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」 卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。 よくある断罪劇が始まる……筈が。 ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

処理中です...