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日和のワンマンライブ
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橋の入口に立ち、私の姿が映らないように配慮してもらいながらお香を地面に置き、手を合わせて数珠を揉みながらお経を読む。
裏の林の澱みとか比じゃないくらいに淀んでいる。
なにこれ、こんなに淀むものなの?
入口の浄化だけでお経の力が押し返される感じ。
これ、これが私の力の限界なんだろうか?
いや、絶対にまだイケるはず。
私の霊力の方が強い。
でも、橋の上の悪霊から逃げてきた霊の圧力――数の暴力の方が強いって感じだ。
なんで逃げてきたのに端から出て行かないんだろう?
『こわい』
『でもここ以外行く場所がない』
『あいつをなんとかしろ!』
『お前があいつを倒せよ!』
『うるせえ! お経なんて読みやがて!』
『どっか行け!』
『邪魔しないでよ。せっかく落ち着ける場所にきたんだから邪魔しないで!』
『ママ、どこォ?』
『いやああああああああああ! あいつが来る、あいつが来るゥゥゥぅ! 助けてぇぇぇ』
なにこいつら、好き勝手言って!
だったらどいて。
そこをどいてよ!
救われたい、みたいに言っているめちゃくちゃ上から目線だし、命令形だし。
声が、いつも以上に……なんかっ、重い……!
「俺の! 俺の! 俺のお経を聴けーーーーーーーーー!」
「ッ!?」
ジャアーーーン、と突如鳴り響くギター。
私が目に見えて苦戦しているとわかったからだろう、見守っていてといったのに、ギターをかき鳴らし始めた。
その手さばき、とても小学校三年生とは思えない。
小学校三年生ってだいたい九歳くらいでしょう?
あんなにギターを上手く奏でられるものなの?
じゃ、なくて――。
「ちょ、ちょっと、日和さん! 私がやらなきゃいけないんです」
「うんうん。でも君にはまだ早い。霊に舐められている」
「うっ」
「霊は簡単にこっちを舐めてかかってくる。俺たちが子どもだからだ。君は特に、加えて女だ。女は男より舐められる。子どもは大人より舐められる。君は霊に舐められる要素が揃いすぎているのだから、もっと威張っていかなければならない。この橋にいる霊は生きている時から人を小馬鹿にして、自分が偉い強い優秀で美しいと思っていた者が多い。そういう霊と、悪霊の波長が非常に合うからだろう。そして、君はこいつらを跳ね除けられない!」
「う……」
言い返せない。
私は、確かに自分の力なら跳ね除けられるとわかっている。
わかっているけれど……。
霊も人間。
だから大量の気配が押し寄せてきて、足踏みした。
この“人”たちを、力で跳ね飛ばしていいのかと。
それは暴力だ。
そもそも、こんなにたくさんの霊に力を暴力的な意味で使ったこともないから躊躇するのは当たり前じゃないか。
でも、それを見透かされたから舐められているってことなのだろう。
ギターをかき鳴らす日和がふん、と鼻を鳴らす。
「聴け! お前たち! 我が名は大離神日和! お前たちに俺のお経を聴かせてやろう! 全力で浮かばれて二度とこの世に帰ってくることなく、あの世に行って次の人生に備えるがいい! ~~~♪」
「っう……!」
ゲームの中では『なんかすごい』程度だった大離神日和の除霊は、今、千頭山真宵になり、修行を重ねてきた今だからこそその破格の力――『天才』と呼ばれる理由がよく理解できた。
ギターはお鈴のような役割を持ち、広範囲に力を拡張。
歌イコールお経はギターの音に乗ることで有無を言わさぬ強力な“力”になって霊たちをほぼ強制的に浄化して成仏させる。
橋の入り口にいた霊の圧迫感が、日和の歌声に呼応して引いていく。
霊力の使い方が、全然違う……!
ギターを弾きながら、時折空中に五芒星を描き周辺に結界を張る。
逃げ場を失った霊たちの悲鳴に満ち、耳を塞ぎたくなった。
「轟けーーー! 俺の魂の、声ー!」
曲が終わりに差しかかり、フィニッシュ! と日和がその場でジャンプする。
な、なんてやっちまっだ感じのある小3なんだ……!
これ、大きくなった時黒歴史になりそうなのに大離神日和はマジでこのまま成長する。
この強烈な“ライブ”により、周辺が黄金の光に包まれて、あまりの眩しさに目を閉じた。
っ、これ……動画にはちゃんと映っているのだろうか?
私の動画なのに……これ、使えるのかな……?
初の橋入り口浄化動画なのに、使えないなんてことになったら反対側を初めてってことにしなきゃいけないと思うんだけれども!?
ぎぬぬ……この男ぉ!
いや、学ぶべきことはものすごくたくさんあったけれどもー!
「ふう……。じゃ、中央部まで行ってみるか!」
「「行かない行かない! 行かないです!」」
「えー」
不満気!
ダメなものはダメです!
っていうか――。
「もう! ダメですよ! 私に任せてくださいって言ってるじゃないですか! 見守っててくださいって!」
「普通に危なかったのだから仕方ないだろう!? この場で一番強くて年上なのは俺! そんな俺が危険から君たちを守るのは当然の務めだろう!」
それは確かにそうなのだけれど!
……確かに……おとなの視点から見ると、年上が年下を守るのは当たり前のことだし、私はともかく英にはちゃんとした親がいるもんなあ……!
「だとしても、今回の“修行”はお嬢のものです! 勝手なことはしないでくださいと言ったじゃないですか!」
「む」
お、お嬢……? お嬢……?
す、英さん……?
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