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すれ違い気味の二人
しおりを挟む「聞いたけれど~」
「あなたがいれば本当に危険な時にお嬢を助けてくださると思ったからです。今のは“本当に”危険な時でしたか?」
「う……うーん……まあ、その……もう少し頑張れたかも?」
「そうですよね? あなたは自分の力を使いたいのと、ただ単にライブをしたいだけなのが見え見えなんですよ」
「う、えーーー……」
こ、こいつ……!
ライブしたいだけなのかよ!
でも小学校三年生にしては歌が上手かった!
それは認めるし、将来有望すぎて震える。
オトメゲーの攻略対象らしく顔は当然いい。
歌も上手いし、今歌った強制浄霊の歌も彼の作詞作曲。
お経を読んでいると自分の霊力がお経に乗って場所や霊に届いているのがわかる。
多分、その究極的な形のひとつなのだと思う。
その年でその極地に辿り着いているのが本当にすごい。
さすが、一部で“安倍晴明の生まれ変わり”と囁かれているだけはある。
しかし、そんな日和も英に詰められるとしどろもどろ。
「お嬢、申し訳ありません。こいつは俺がしっかり注意しておきます。力があるのを鼻にかけて、力がない人間を見下しているからこういうことができるんですよね」
「そ、そんなこと思ってないよ!?」
「別に取り繕わなくていいですよ。俺に霊力がないのは事実なので」
「ち、違……本当に違う! 絶対! 英のことを馬鹿にしたことなんてないよ!」
慌てて弁解をし始める日和。
それを見て「あ」っと思い出した。
『宵闇の光はラピスラズリの導きで』は、攻略対象個々のストーリーをプレイするわけだが当然他の攻略対象も他のキャラの攻略ストーリーの中に登場することがある。
私の推しVtuber、織星ハルト演じる宇治家真智のストーリーは復讐譚だったから、他のキャラとの接触はほぼなかった。
だからまさか真智と十夜……と、私……が幼馴染だとは知らなかったんだけれども。
でも、英と日和はお互いのストーリーに比較的がっつりと絡みがあった。
英は日和をあまり好きではないらしく、仕事中以外には塩対応。
持ち前の寡黙なところをグイグイ押し出して、単語返事で会話を秒速終了させていた。
まあ、今目の前の英はあまりその“寡黙な性格”があんまり出てないような……。
英にもなにかしら、変化はあったのだろうか?
それなら、英と日和の関係性も変えられるのではないだろうか?
霊能力のない英と、『安倍晴明の生まれ変わり』なんて言われるほどの霊力を持つ日和。
夢のためにやりたくないことを強いられて、自分を殺して営業スマイルとハイテンションを維持して苦しむ英と、若い頃から夢を叶えて歌手としても陰陽師としても世間から認められる日和。
この対比――。
ゲームの中の二人の仲は悪い。
というか、英が一方的に距離を置いているのに対して、日和は英と仲良くしたくてグイグイ行って、さらに嫌われている。
パッと見相性悪いしなあ……仕方ないのかなあ……。
でも、なんで日和はこんなに英に嫌われたくないのだろう?
ゲームの中ではそのきっかけのようなもの、詳しく語られていなかったんだけれど。
……積み重ね?
積み重ねか?
確かにこの年齢の頃から十年、執拗につきまとわれたらそりゃあ嫌われるよな。
「日和さんはどうして英さんと仲良くしたいのですか?」
ええい、ここはきっぱり黒白つけよう。
まあね、子どものうちは『相性が悪いから』とかで距離を取るとかそんなのわかんないもんね。
男の子は特に。
まず『みんな仲良くしましょう』って教育されるもん。
『仲良くできないなら、仲良くしなくていい』とか『仲良くしたくないから、こちらから諦めて距離を取る』とか、小学生低学年の男の子がわかるわけない。
でもやっぱり英の気持ちの方が私にはわかる。
味方するのなら英だ。
だからちゃんと、この二人には適切な距離感をここで保つように誘導した方がいい。
英の場合の破滅エンドは『呪具』を手に入れることでの反転。
日和の場合の破滅エンドは『呪い屋の罠』だから、今の時点で私がなんとかしてあげられることはない。
なんとかできるのは人間関係くらいなんだもん。
「そ……それは……」
「スイミングスクールで日和が水に顔をつける練習につき合っていたら、なんか、懐かれたんです。別に家の方ら大離神家に恩を売れと言われていたから待っていただけなのに」
「なんでそんなにハッキリ言うの! でも、そんなふうにハッキリ言ってくれた人初めて! 俺のこと面倒って思っている反面『仕方ないなー』って思ってる優しい部分もわかるから! 俺、裏表があるようでない英お友達になりたいんだよ!」
「お断りします」
「なんでぇぇぇ!」
あーーーー。
あーーーーー、なるほどーーー。
それはなんか、わかる。
霊力が強くなってくると、相手がなにを考えているのか、感情が少しわかってくるのだ。
日和ほど強い霊力を持つ人なら、その感覚はより強い。
つまり、人の考えていることが“理解る”のだ。
粦と真智と十夜は自分の霊力があるからちょっぴりわかりづらいのだが、英は割とストレートに考えていことや感情が理解できる。
私よりも強い霊力を持つ日和は余計に感じるだろう。
大離神家の天才児、と持て囃される日和にとって、あまり裏表はあるけれど裏表のない英は貴重な存在。
わかる。
私はゲームの知識があるから余計にその意味がわかる。
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