ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

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ライブ2D完成か!?

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 私の中の“おとな”が、そんな真智を愛おしく思う。
 少しずつでも、まっとうなおとなに育ってほしい。
 ゲームの中では難しかったかもしれないけれど、このまま男の子らしい男の子に育つといいな。
 
「おーい、マヨイちゃーん。おうちに行こう~」
「あ、十夜くん。今行くね。それじゃあね、真智。なにか用事があったら携帯に電話ちょうだい」
「わかった。おい、十夜。あんまりマヨイに甘え倒すなよ」
「わかっているよぉ」
 
 わざわざ迎えに来てもらったので、本日も十夜の家の車に乗せてもらい善岩寺ぜんがんじ家へ。
 ライブ2D、作るのに時間がかかるとは聞いていたがそろそろお願いをして三ヶ月くらい経つよね。
 進捗の確認もしたい。
 まあ、一夜さんは自分の分のライブ2Dも作っているみたいだったし、急かして変なものができるのも嫌だ。
 この世界でVtuberらしい存在はまだ確認できていないわけだし、自分が最初のVtuberになる気合と覚悟で生きて行こう。
 私自身はプログラミングとかよくわからないし、人に制作作業のすべてを丸投げしてどうこう文句つけられる立場ではないけれど。
 真智がパソコン教室に通うみたいなことを言っていたからこの世界にもプログラミングを習う教室があるっぽいし、会計士さんに私もそういう習い事ができる余裕があるか聞いてみようかな?
 いや、難しくはないと思いたいんだけれど、家具家電の買い物とかVtuberになるための立ち絵の依の依頼費とか本来の生活費とは違う使い方しちゃったから不安なんだよね。
 物価自体は前世とあまり変わらない……っていうか、だいぶ安いんだけれど。
 でも前世の感覚が強いせいか、お金に関しては不安なくらいでちょうどいいんじゃないかと思っている。
 主にあの鬼ババアが後々『お前らにはもう一千万もくれてやっただろう』と来年以降生活費を祓ってくれない可能性が大いにあると思っているからだ。
 できるだけ、実家から渡されたお金は温存しておきたい。
 自分たちで稼げるようになるのが絶対に安パイ!
 
 
 
「お邪魔しまーす」
「ただいまー」
 
 十夜家の玄関に入ると、いつも通り使用人の人たちが出迎えてくれて、リビングに通される。
 お茶やお菓子を差し出され、会釈すると使用人の女性が微笑みを返してくれた。
 優雅なおとなの女性って感じだ。
 しかしドダドダドダと二階からものすごい足音。
 
「真宵嬢ーーーーーー!」
「一夜さん、ご無沙汰しております」
 
 ぺこり、と立ちあがてお辞儀をすると、ノートパソコンを持った一夜さんがリビングに滑り込んできた。
 勢いヤバい。
 よくテーブルに足をぶつけず済んだな。
 
「完成したぞ! 見て確認してほしい!」
「は、はい!!」
 
 そしてそう叫びながらノートパソコンをテーブルに置く。
 完成した……ライブ2Dが!
 本当に……ついに!
 胸が高鳴って、興奮して仕方ない。
 期待で胸がバクバク。
 開かれたノートパソコンの画面に映し出されたのは、小柄でピンク色の髪のツインテールに兎の耳が頭についた美少女アイドル風Vtuberの立ち絵が、ぴこぴこゆらゆら動いていた。
 ………………。ん?
 
「どうかな! こんな感じの動作ができるようになったんだが!」
 
 あ、動作サンプルってことかな?
 びっくりした、私が依頼したガワじゃなかったからなんだこれはと思った。
 
「わあ~! 絵が動いてる~! どうなっているの、これ」
「すごいと思います! 理想に限りなく近いです!」
「むむ!? ということはもっと滑らかに動くのが理想的ということかな!?」
「いえ、十分だと思います!」
「いや、君が不十分だと思うのならもっとこだわってみ――」
「そこまで動きにこだわってないですよ!」
 
 わざわざプログラミングを学ぶところからやってもらったと考えると、この短期間でここまで動かせるようになったの事態ものすごいことだと思う。
 慌てて繰り返し「十分すごいです!」と伝えるが一夜さんは納得せず。
 
「だが俺としても満月夜ミミタソには滑らかに動いてほしいから、やはり妥協するべきではなかったかもしれない」
「満月夜ミミタソ……!?」
「わたしのVtuber名よ!」
「「私……!?」」
 
 ばっきばっきの二の腕を突き出し、大声で叫ぶ。
 突然の女言葉。
 そして、まさかこの見せられた動作のサンプルは――!
 
「も、もしかしてこの動作のサンプルは……一夜さんのキャラクターなんですか?」
「そうよ! 今言葉使いも練習しているのよ! どうかしら!?」
「こ、濃さは……キャラクターの濃さは……問題ないかも……?」
「本当か!」
 
 ああ、ガチだ。
 ガチで美少女になるんだ。
 困惑の私と、十夜。
 そして控えていた使用人の皆さん。
 いや、ものすごくやる気満々で協力的だったけれど……。
 
「お兄ちゃん、この可愛い女の子なの?」
「そうよ!!」
「へえ~~~、可愛いねぇ~~~~」
 
 と、十夜、十夜……! 否定しないのか……!
 いや、否定できないしね……! で、できないけれども……!
 
「私は憧れていたのよぉ! ずっと、ずっと! この筋肉がつきやすい、毛も生えやすい体質、強面、ゴツゴツ! 可憐で華奢な美少女たちを描いているのは、私の理想だからよ! 可愛いひらひらの服を着て愛らしい声で小動物のような仕草できゃーきゃー黄色い声で愛でられる! そんな存在に私はなりたかった! 自分にはない、すべてを持っているアイドル系美少女……自分にないものになりたいという気持ち……みんなにはまだわからないかもしれないその、気持ち――!」

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