ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

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錫杖、お高い……

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 三日後、すぐるから連絡が来て私とりん御愚間おぐま家が手配してくれた車に乗って御愚間おぐまのお店に向かった。
 申し訳ないな~、とは思うがすぐるには「ご令嬢ならこのくらい当たり前なんですけれどね」といわれてハッとする。
 そういえば私、『宵闇の光はラピスラズリの導きで』の公式悪役令嬢だったわ。
 千頭山せんずやま家も一応名士。
六家むつけ』の中で一番格上ってことになっていたわ。
 家が正常なら私ってこういうお嬢様の扱いをされていたってことか。
 それなら今のままでも別にいいなぁ。
 やっぱり中身は前世の庶民OLにすぎないもん。
 
「到着いたしました」
「ありがとう。お嬢、どうぞ」
「あ、ありがとう」
 
 助手席にいたすぐるが後部座席に座っていた私とりんを降ろして、そのまま店の中にエスコートしてくれる。
 なんか、こう、気恥ずかしい。
 お店の中に入ると、すぐるの家族が瞬時に入口に走ってきた。
 
「「「いらっしゃいませえええええええええ!」」」
「うぐう……お、お邪魔いたします……」
「あ! 千頭山せんずやま家のお嬢様! これは失礼しました。確か、あまり大きな声出の接客は苦手なんでしたよね」
「真宵お嬢様の接客は俺がやりますので、父さんたちは通常業務に戻ってくださって大丈夫です」
「あらあ」
 
 すぐるの母が私に視線を合わせるように屈んでくれる。
 しかし今日はすぐるに全部任せてほしいと言われていた。
 おかげで賑やかでごり押しされそうな家族からは、放っておいてもらえそう。
 こちらへどうぞ、と紳士的にエスコートしてくれるすぐるについていくと個室。
 そこにはいくつもの細長い木箱が並んでいた。
 
「これは翁仰さんのところの錫杖です。和尚さんが祭壇で使うサイズのものです。お嬢が使えそうな錫杖というと、こういう30~50センチ台のものしかないと思うのですがいかがでしょうか」
「た、確かにこのサイズなら私でも使えそう」
 
 しかし、秋月が言っていた『地面に杖の底を突いて結界を張る』っていうのが、この短さではできないっていう点。
 おとなが使う錫杖を見本として手渡されたがまあ、持てない。
 持つとふらふらする。
 バランスが保てない。
 結構重いのだ。
 
「わぶぶ」
「わあ! お嬢様危ない!」
「やはり長いサイズはお嬢には早いですね」
「今の真宵お嬢様が使えるサイズの錫杖は、ないんですね」
「オーダーメイドになりますね。その場合、サイズや素材にもよりますがやはりお高めになると思います」
「で、ですよねー」
 
 ちなみに30センチ~35センチの錫杖が一般的で、素材と長さで二千円くらい値段差がある。
 なお、一番安い32センチのもので二万円……。
 もっと簡素で、木製のものでも一万八千円…………。
 
「い……いや、高い!」
「ちなみに金属部分などに霊石が使用されているともっと高いです」
「うぐう……」
 
 でもその分霊力は通りやすくなり、効果も絶大。
 そうなんだよね~~~! やっぱりそういうのってお高いよねぇぇぇ!
 お鈴もほしいけれど錫杖は物理的にも自分の身を守るためにちゃんとしたやつがほしい。
 とはいえ、オーダーメイドはさすがに……。
 一応、私だって成長する予定だもの。
 今の身長のものをおとなになったあとも使うかどうかわからない。
 使おうと思えば使えると思うけれども。
 
「いや! これは経費! で、落ちる! はず!」
「経費ですか」
「………………あ……」
 
 自分で言ってハッとしてしまう。
 そ、そうだ。
 Vtuberをやるに至り、こういうモノを経費で落とすためには自営業として申請しなければならない。
 しかし、当然未成年がそういうことをするには――保護者の同意が、必要。
 
「お嬢様?」
「ど、どうしよう。Vtuberとしての収益を得るには、そういう申請が国に必要だよね? ほ、保護者の同意とか、どうしよう……」
「あ……」
「自営業ということで申請するのですよね? 確か、そのぶいちゅーばーというのは」
「そ、そう。活動をするに至り収益を得るにはそういうのが必要ですよね?」
「そうですね。多分……」
 
 ぐぬぬぅ。
 じゃあ、こういうのは経費にできないのか。
 自立したいのに……そのために親のどういうが必須なんて、どうしたらいいの……!?
 秋月に頼めれば一発なのに、秋月は座敷童……普通の人は目に見えない。
 っていうかーーー!
 あんな鬼ババアやマザコン親父が『おとな』のカテゴリなの、納得いかねぇぇぇぇ!
 
「あの……こんなことを言うのは……差し出がましいですが……千頭山せんずやま家には春月しゅんげつ様という方が安部家に嫁入りされております。春月しゅんげつ様にそういう手続きをお願いされて見るのはいかがでしょうか? 俺も会ったことがあるわけではないのでなんとも言えないですが」
春月しゅんげつ様……?」
「はい。現当主の、長女」
 
 え……お、伯母!?
 
「四年前に嫁がれた千頭山せんずやま家のご長女ですよ」
りん、知ってたの?」
「は、はい。ですが、もう嫁がれた方ですし……あの、その……」
 
 言葉を濁すりん
 それだけで、察した。
 あの長男教のムチュコタンLoveババアが私と同じ性別の女性……我が子とはいえ娘を可愛がるイメージがまったくない。
 
「私みたいに、疎まれていた人なのね……」
「は、はい。私のような使用人にもとても優しくしてくださっていたのですが……」
「そういえば礼一郎様も春月しゅんげつ様と仲がよかったですよね。結界の外に行って、一度もお戻りになっていないそうですが」

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