64 / 132
錫杖、お高い……
しおりを挟む三日後、英から連絡が来て私と粦は御愚間家が手配してくれた車に乗って御愚間のお店に向かった。
申し訳ないな~、とは思うが英には「ご令嬢ならこのくらい当たり前なんですけれどね」といわれてハッとする。
そういえば私、『宵闇の光はラピスラズリの導きで』の公式悪役令嬢だったわ。
千頭山家も一応名士。
『六家』の中で一番格上ってことになっていたわ。
家が正常なら私ってこういうお嬢様の扱いをされていたってことか。
それなら今のままでも別にいいなぁ。
やっぱり中身は前世の庶民OLにすぎないもん。
「到着いたしました」
「ありがとう。お嬢、どうぞ」
「あ、ありがとう」
助手席にいた英が後部座席に座っていた私と粦を降ろして、そのまま店の中にエスコートしてくれる。
なんか、こう、気恥ずかしい。
お店の中に入ると、英の家族が瞬時に入口に走ってきた。
「「「いらっしゃいませえええええええええ!」」」
「うぐう……お、お邪魔いたします……」
「あ! 千頭山家のお嬢様! これは失礼しました。確か、あまり大きな声出の接客は苦手なんでしたよね」
「真宵お嬢様の接客は俺がやりますので、父さんたちは通常業務に戻ってくださって大丈夫です」
「あらあ」
英の母が私に視線を合わせるように屈んでくれる。
しかし今日は英に全部任せてほしいと言われていた。
おかげで賑やかでごり押しされそうな家族からは、放っておいてもらえそう。
こちらへどうぞ、と紳士的にエスコートしてくれる英についていくと個室。
そこにはいくつもの細長い木箱が並んでいた。
「これは翁仰さんのところの錫杖です。和尚さんが祭壇で使うサイズのものです。お嬢が使えそうな錫杖というと、こういう30~50センチ台のものしかないと思うのですがいかがでしょうか」
「た、確かにこのサイズなら私でも使えそう」
しかし、秋月が言っていた『地面に杖の底を突いて結界を張る』っていうのが、この短さではできないっていう点。
おとなが使う錫杖を見本として手渡されたがまあ、持てない。
持つとふらふらする。
バランスが保てない。
結構重いのだ。
「わぶぶ」
「わあ! お嬢様危ない!」
「やはり長いサイズはお嬢には早いですね」
「今の真宵お嬢様が使えるサイズの錫杖は、ないんですね」
「オーダーメイドになりますね。その場合、サイズや素材にもよりますがやはりお高めになると思います」
「で、ですよねー」
ちなみに30センチ~35センチの錫杖が一般的で、素材と長さで二千円くらい値段差がある。
なお、一番安い32センチのもので二万円……。
もっと簡素で、木製のものでも一万八千円…………。
「い……いや、高い!」
「ちなみに金属部分などに霊石が使用されているともっと高いです」
「うぐう……」
でもその分霊力は通りやすくなり、効果も絶大。
そうなんだよね~~~! やっぱりそういうのってお高いよねぇぇぇ!
お鈴もほしいけれど錫杖は物理的にも自分の身を守るためにちゃんとしたやつがほしい。
とはいえ、オーダーメイドはさすがに……。
一応、私だって成長する予定だもの。
今の身長のものをおとなになったあとも使うかどうかわからない。
使おうと思えば使えると思うけれども。
「いや! これは経費! で、落ちる! はず!」
「経費ですか」
「………………あ……」
自分で言ってハッとしてしまう。
そ、そうだ。
Vtuberをやるに至り、こういうモノを経費で落とすためには自営業として申請しなければならない。
しかし、当然未成年がそういうことをするには――保護者の同意が、必要。
「お嬢様?」
「ど、どうしよう。Vtuberとしての収益を得るには、そういう申請が国に必要だよね? ほ、保護者の同意とか、どうしよう……」
「あ……」
「自営業ということで申請するのですよね? 確か、そのぶいちゅーばーというのは」
「そ、そう。活動をするに至り収益を得るにはそういうのが必要ですよね?」
「そうですね。多分……」
ぐぬぬぅ。
じゃあ、こういうのは経費にできないのか。
自立したいのに……そのために親のどういうが必須なんて、どうしたらいいの……!?
秋月に頼めれば一発なのに、秋月は座敷童……普通の人は目に見えない。
っていうかーーー!
あんな鬼ババアやマザコン親父が『おとな』のカテゴリなの、納得いかねぇぇぇぇ!
「あの……こんなことを言うのは……差し出がましいですが……千頭山家には春月様という方が安部家に嫁入りされております。春月様にそういう手続きをお願いされて見るのはいかがでしょうか? 俺も会ったことがあるわけではないのでなんとも言えないですが」
「春月様……?」
「はい。現当主の、長女」
え……お、伯母!?
「四年前に嫁がれた千頭山家のご長女ですよ」
「粦、知ってたの?」
「は、はい。ですが、もう嫁がれた方ですし……あの、その……」
言葉を濁す粦。
それだけで、察した。
あの長男教のムチュコタンLoveババアが私と同じ性別の女性……我が子とはいえ娘を可愛がるイメージがまったくない。
「私みたいに、疎まれていた人なのね……」
「は、はい。私のような使用人にもとても優しくしてくださっていたのですが……」
「そういえば礼一郎様も春月様と仲がよかったですよね。結界の外に行って、一度もお戻りになっていないそうですが」
1
あなたにおすすめの小説
転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!
柊
ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」
卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。
よくある断罪劇が始まる……筈が。
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
【完結】前提が間違っています
蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった
【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた
【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた
彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語
※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。
ご注意ください
読んでくださって誠に有難うございます。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる