ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

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真智の成長

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 ピンポーン、とそのタイミングで玄関のチャイムが鳴る。
 りんが「出てまいりますね」と言って離席。
 チェーンをかけて出てね、と言いかけたが残念ながら我が家、引き戸……!
 
「一応誰が来たのか確認してから鍵を開けるようにねっ」
「わかりました!」
 
 近所も鍵をかけずにいるようだから、防犯意識が低い地域なのだ。
 しかし、今この家にいるのは小学生二人と女子中学生が一人だけ。
 秋月は物理的には役に立たない。
 ……役に立たないよね? 多分。
 
「お嬢様、真智様がいらっしゃいましたよ」
「え? 真智? なんで?」
「さあ?」
 
 遊ぶ約束はしているけれど、今日遊ぶ予定はないのだけれど……。
 よくわからないけれど真智が私を指名なら会うか。
 玄関に向かうと、車輪付自転車を背後に真智が立っていた。
 衝撃だった。
 じ……自転車、だと……!?
 
「真智、自転車買ってもらったの……!?」
「おう……!」
 
 なんかちょっと泣いてない?
 なんで?
 いや、それより車輪つきとはいえ自転車デビュー……!
 こ、こいつ、私よりも先に行動範囲を広げている……!
 
「お前に言われた通りにした」
「え? ああ、おばさんのお手伝いをやってみろっていうあれ?」
「そう。そしたら、買ってくれた」
 
 と、言って顔を赤くする真智。
 か、可愛い奴め。
 ちょっとゲームの中の真智とのギャップがすごすぎて胸キュンしすぎて胸がいっそ痛い。
 そっかぁ、家のお手伝いをしたら自転車買ってもらったのかぁ。
 よかったねぇ。
 
「お前の言う通りにすると、おれ、いいことばっかり起こる」
「え? そんなことないと思うよ」
「そんなことある。まだ、おばさんのこと、母さんとは呼べないけど……でも、おばさんもおじさんもおれの“母さん”と“父さん”の代わりじゃなくて、“母さん”と“父さん”になりたい、おれにそう認められたいって言ってくれた」
「うん」
 
 それが一番難しいところではあるよね。
 だって真智の気持ちの問題だもん。
 それにはきっともっと時間がかかる。
 でもお互いに歩み寄っていければいつか、きっと血よりも確実な絆で結ばれた家族になれるはずだ。
 
「真智ならきっと、それができるよ」
「うん……」
 
 コクリと頷く真智。
 この子がこのまま復讐者にならず、健やかに育ってくれたらと思う。
 でも、急に不安を覚えた。
 
「真智が自分で強くなって、おじさんとおばさんを守れるといいね」
「おれ?」
「うん」
「守る……」
 
 真智の両親が悪魔に負けて亡くなった話はあえてせず、今生きている二人に目を向けてほしいと思った。
 それでもいつか、もしかしたら――ゲームの強制力のようなモノで、真智の“家族”が亡くなるようことになったらどうしよう。
 真智にはこのまま優しい世界にいてほしい。
 推しだからっていうのもあるけれど、それとは別に……この世界で私の初めての友達だからっていうのが一番大きい。
 ねえ、真智。
 真智は家族を大事にしてね。
 私は私の家族と前世から疎遠だから、真智の孤独が少しわかるの。
 少しだけね。
 だって真智は愛してもらっている。
 愛を失って復讐者になる。
 私とは決定的にそこが違う。
 その情に深いところがいいなって、思うの。
 羨ましくて、大事にしてほしいの。
 だから真智にはその絆を守れる強男の子になってほしいな。
 私みたいな余裕のない強さじゃなくて、誰かのための強さを持ってほしい。
 まあ、これは私のわがままなんだけれど。
 
「わかった。おれ、強くなる」
「うん! 私も頑張るから、真智もね。どっちが強い霊能力者になるか、競争したっていいよ」
「いいな! それ、面白そうだ! やろうぜ!」
 
 拳を突き出される。
 あー、これ、グータッチ?
 なんかアニメで流行ってるんだっけ?
 いいよ、と私もグーを差し出して、真智のグーにコツンとした。
 
「じゃ! おれ帰る!」
「うん! 修行一緒にやろうねー!」
「おー!」
 
 そう言って車輪つき自転車で颯爽と去って行く。
 くっ……羨ましい。
 シンプルに自転車が、羨ましい!
 そうか、自転車という交通手段があったのか。
 学校もスーパーも徒歩圏内だったから選択肢がなかった……!
 あと、りんはともかく私はまだ自転車が早いと……そうか、補助輪っていう存在があったんだ……!
 都内住まいだと車よりもチャリ、田舎ならチャリより車。
 この近辺は都内なのに田舎みたいに一家に一台車必須みたいな感じだから盲点だった!
 錫杖よりは安いよね?
 ちょっと検討してみようかな……。
 
「ご家族と仲良くなったのですね」
「あ、ごめんね。りん、今戻るね。すぐるさん、秋月と二人じゃなにもわからないもんね」
「あ、そうですね」
 
 真智を見送ってから茶の間に戻ると、やはりというか想像以上にシュールなことになっていた。
 座り込む秋月。
 秋月がどこにいるのかわからないので、一人おろおろ待つすぐる
 私が戻ると二人とも安堵した顔でこっちを見る。
 可愛いかよ。
 
「ごめんなさい。それで、すぐるさんは霊媒師になるという方向でよろしいのかしら?」
「えっと……はい! 霊媒師を目指したいと思います。御指南をいただいてもいいでしょうか?」
「ということらしいけれど、すぐるさんはなにをしたら霊媒師としての霊能力開花修業をしたらいいの?」
「シンプルに体力と持久力を鍛えるためにランニングをした方がいいね。ランニングをしながら周囲の気配を注意深く探るのも同時進行でするといい。霊媒師はとにかく霊や他者に気を与えたり体を貸し与えたりする。体力持久力気力がないと寿命が取られかねない。体の感覚を自覚することで霊力も感じ取れやすくなるだろうしね」
「な、なるほど」


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