ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

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秋月と英

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 結局一番安いやつのワンランク上の錫杖、35センチのものを購入。
 約二万円。
 高い……と落ち込む私にりんが「生活費から出しましょう!」と言ってくれる。
 
「次の修行はいつでしょうか?」
「あ、それじゃせっかく新しい錫杖を買ったことだし、明日橋の反対側の浄化に行きましょうか?」
「了解しました!」
 
 すぐる、瞳がキラッキラ。
 修行好きなんだ?
 修行が好きなんてちょっと変。
 いや、霊能力開花のためだもん、仕方ないか。
 あ、そうだ。
 
すぐるさん、まだお時間大丈夫なようでしたら、私の師匠に会って行かれますか? 呼んでみますので」
「えっと、確か霊能力がないと姿が見えないと……」
「そうです。でも、すぐるさん自身を一度師匠に会わせて視てもらうといいかも、と思っていたのです。私よりもすぐるさんに合わせた修行を教えてくれると思いますし」
「ぜひ!」
 
 食い気味!
 というわけで、それじゃあ……と家の中に案内する。
 鏡に向かって「秋月ー」と呼んでみると、ぬるりと出てきた。
 早いー。
 
「今日は早いね」
「見て見て! 御愚間おぐま家で錫杖を買ってきたよ!」
「ああ、なかなかいいものを買ってきたのだね。思ったより短いのを買ってきたんだぁ、って思ってしまったけれど」
「私の身長ではこれが限界だったのっ」
 
 買ったばかりの錫杖を見せると、やはり地面にトントンできるサイズがくると思っていたらしくて若干落胆された。
 そんなこと言われても仕方ないじゃない。
 私の身長のことを言うと「それはそうか」と納得してくれたけれど。
 
「で、その後ろの男の子のことは無視でいいのかな?」
「ううん。秋月に紹介しようと思って。御愚間おぐま家のすぐるさんです。霊能力を開花させたいって、最近私の修行にもついてきてくれているの」
「えっと……初めまして。御愚間おぐますぐると申します」
 
 すぐるは秋月がどこにいるのかわからないから、茶の間をキョロキョロと見回しつつ私が話しかけた方向に向かって頭を下げる。
 視えないなりに礼を尽くす姿に秋月は「へえ……」と目を丸くした。
 どういうこと?
 
御愚間おぐまの家の子にしては礼儀のなっている子もいるのだね」
「ええ……?」
御愚間おぐまの家の者は霊力がある者以外、商売に携わる者は我々のようなモノを侮ってかかる。痛い目を見ることがすくないんだよ。現場で関わることがないからね。……ただ、あこぎな商売をしていると祟られるなり呪われるなりするから、完全に馬鹿にすることはないみたいだけれど……我々のようなモノを“商売道具”と思っている節があるんだよ」
「わあ……」
 
 でもあの視線を思い出すと納得ではあった。
 完全に人のこと金蔓って感じの目で見られて気分がいいものではない。
 霊能力者として御愚間おぐまの家の売る道具は必需品だから、こっちが切れないのをいいことに結構容赦なくそういう目で見てくる。
 そういう感情をよくよく感じ取れる霊能力者にとっては、筒抜けだ。
 それを知ってか知らずかまったく気にせずあの視線を送ってくるのだから、『侮っている』と言われるのはその通りなんだろう。
 御愚間おぐまの家に対する秋月のイメージはあまりよくないし好感度は低そうだが、すぐるに対してはそうではなさそうだ。
 
「えっと、なんて?」
御愚間おぐまの家の子にしてはまともな感覚の子だね、って。えっと、商魂に染まってない、みたいな感じのニュアンス?」
「あ……。ええと……なんか、申し訳ありません」
 
 さすがにすぐる自身も家族に対して思うところはあるらしい。
 項垂れるすぐるには申し訳ないけれど、可愛い。
 
「それで、この子は霊能力がほしいと?」
「そうなの。今は私の修業につき合ってもらっているのだけれど、他にもやった方がいい修業ってなにかある?」
「目指す方向性にもよるかな? 祈祷師になりたいのなら祈祷師らしい霊能力が開花するよう誘導できるが、悪魔祓い師や霊媒師、陰陽師ならまた別の開花修業をした方がいい。合う合わないがある。彼自身の身心の成長具合にもよるから、希望があるのなら精神面もそっちに誘導していく方がいい」
「なるほど。ちょっと聞いてみるね」
 
 首を傾げるすぐる
 今秋月に言われたことをすぐるに説明すると、それはもう面白いほどに目を丸くしたあとなんとも複雑そうな表情になった。
 なんだその形容し難い、嫌いな食べ物を並べられたみたいな表情。
 どんな気持ちだそれは。

「えっと……考えたこともなかった?」
「は、はい……そんなこと考えたこともなくて……。まず、スタート段階が違うってことですか?」
「向かう方向性に合わせて開花させた方が、その後の修行にも有利に働きかけることができるって言っていたわ。希望はないということかしら?」
「なにになるにしても、まずは霊能力の開花が必要不可欠なのだと思っていました」

 まあ、霊力がないとそう思うよね。
 私もそう思ってた。
 考え込むすぐるだが、すぐに顔を上げる。

「本家の……叔父のような霊能力者になりたいです。霊媒師、でしょうか」
「それならばバランス型にした方がいいか。しかし、霊媒師にも種類があるしなぁ。滝行で心身を清めつつ強靭な耐性をつけつつ、体力と持久力を増やし、とにかく気の流れの感知能力を伸ばす方向がいいね」
「え……!? 思い切り肉体改造……!?」
「え!?」
「そうだよ。霊媒師ってかなり肉体派だよ」

 思わずすぐるの方を見る。
 すぐるも「ええ?」という困惑の表情。
 まあ、ええと……そのまま伝えるか、とりあえず。

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