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鬼ババアが思った以上に鬼ババアだった件
しおりを挟む「ですから、あの……いくら家から出ていても油断はなさらない方がいいというのは本当にその通りで……。礼次郎様と春月様のことはお名前も出さない方がよろしいといいますか」
「そうね……」
あの鬼ババアマジで人間辞めているんだな。
いったいいつ、悪魔に乗っ取られたの?
私が生まれるよりもずっと前。
粦が千頭山家に来たばかりの頃よりも、前の可能性すらある。
時間軸がはっきりしないからわからないけれど、多分礼一郎さんという私の伯父はもうこの世にはいないんだろう。
誰も触れないってことは、鬼ババアが怖くて誰もなにも言えないんだろうし。
しかし、嫁ぎ先が安部宗家の春月さんも実弟のことを気にかけないのはちょっと不思議。
礼一郎さんはお姉さんに助けを求めたりしなかったんだろうか?
いや……あの鬼ババアのことだから、溺愛ムチュコタンたちにも実姉を虐げるように指示とかしてそう。
姉と仲良くしたくても、それほど甘やかされていたなら母親の言うことは絶対。
現にマザコン親父は自分の妻を見殺し同然。
実の娘の私のこともこの扱い。
自分で考えるということを放棄している。
母親が世界の中心とでも思っているのだろうから、それ以外の人間――たとえ血のつながりのある姉であろうと――がどういう扱いになってもそれに追従するんじゃないだろうか。
頭が痛くなるような話だ。
実際、ついつい頭を抱えてしまう。
「ねえ、もう一つ教えて、粦。お祖母様の夫……私のお祖父様は? お祖父様も行方不明なの?」
「大旦那様は――ええと……べ、別邸に別の女性と……住んでおられると、先輩に聞いたことが……」
「そ……うなの……」
いかん、頭痛までしてきた。
頭を抱えたまま、肩まで落ちてくる。
千頭山家、終わっとる……!
「大旦那様は婿養子だから、奥様には絶対に逆らえないのだと先輩たちが話しておりました」
「そう……。色々言いにくいだろうことを教えてくれてありがとう、粦」
我が家の恥というか、闇というか。
秋月のために家を建て直すとは決めたけれど、思った以上に問題がゴロゴロしていた。
とりあえず祖父は放置していてもいいだろう。
愛人と暮らしているっていうことは後々状況を調べなければならないが、まあ、あの鬼ババア相手では余所に女作って逃げたくなる気持ちもわからないでもない。
それでも子どもを三人も作ったのはすごいと思うけれども。
伯父、礼一郎さんはおそらく……だが、一応ちゃんと生死の確認は必要。
私の保護者としておとなの手続きをするのに協力してもらえそうなのは春月さんだが、鬼ババアに苛め抜かれて今は幸せに過ごしているであろうところにまた千頭山家の問題に巻き込むのは申し訳がない。
春月さんを娶った安部家の当主さんも、関わらせたくはないだろうしね。
じゃあ、どうしたらいいか……うーん。
「英様をお呼びしてもよろしいですか?」
「そうね。錫杖も選ばなければいけないし」
本来の目的は錫杖の購入だ。
とりあえず混乱のあとだからか、いやに頭が冴えている。
課題として裏の林の悪霊退治や橋の悪霊退治を言いつけてきたのだから、錫杖の料金は実家に請求してやろう。
もしケチるようなら、その時は別で考える。
たとえば――真智や十夜の家に仕事を紹介してもらう――とかね。
「お待たせしました。お話はもういいのですか?」
「ええ。たいした話ではありませんでしたから」
「「え?」」
「粦が大げさな反応をしてしまってごめんなさい。使用人の粦にとっては本家の話はどれをどう話せばいいのか難しかったみたいなの。ありきたりな話しばかりだったわ」
粦と英の困惑の表情。
まあ、無理もない。
私が思った以上にけろりとしているから、特に粦の困惑は空気からも伝わる。
でも、実際名士ならありきたりな話しなのではないだろうか?
品がよくないのは確かだけれど。
それに、忘れそうになるがここは御愚間家の店舗の個室。
防犯カメラもあるから、もし音声も拾うタイプなら今までの話は筒抜けになっているだろう。
その情報に関して御愚間家がどんな動きをするかは未知数。
正直商売に使える話ではないと思う。
それでも、情報というのは武器であり防具にもなりえるものだ。
商売人がそれを知らないわけもない。
こっちとしては鬼ババアが悪魔に乗っ取られている可能性が非常に高いので、御愚間家がその情報を安部家や大離神家に流して、私の知らないところで悪魔祓いや断罪なんかをしてくれたらとっても助かる。
だって私は中身はおとなだけれど、小学校に上がったばかりの子どもなのよ?
幼女なのよ?
こういうのはおとながなんとかするべきじゃない?
おとながなんとかしてよ、私は幼女なんだから!
子どもの私がなんとかしようと頑張っても、限界があるんだから……!
Vtuberになって有名になって自衛しつつ自立する。
そういう道を目指すのは、誰にも頼れないからだ。
そうよ、私は小学校一年生になったばかりの子どもなんだから、わからないのは仕方ないわよね?
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