ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

文字の大きさ
87 / 132

子どもは帰る時間

しおりを挟む

「第三段階は日付が変わる時間帯。君たちのような子どもは20時以降外出禁止だから、そろそろ帰ろう」
「え? もう遊べないの?」
「そろそろ放送が入ると思うけれど、法律で決まっているんだよ。十歳以下の子どもは陰の気が強まる20時以降は家から出ない。外出中なら帰宅すること、と。子どものうちは陽の気をたくさん取り込んで、いっぱいぐっすり寝るのが一番だからね!」
 
 それは絶対にそう!
 私もそう思う。
 子どもはいっぱい寝るべきだよね!
 
「えーーーー! ヤダー! まだ遊びたい!」
「ぼくもまだ帰りたくないよぉー!」
「ダメですよ、真智くん。法律で決まっているのですから」
「そうよ! 十夜! わがまま言わずにお家に帰ったらお風呂に入って歯磨きしてすぐ寝るの!」

 そうかー。
 小学生男児の寝る前の準備を思うと確かに20時には帰らないと夜更かしかぁ。
 おとなしくお風呂入って歯磨きして寝るかどうか、怪しいもんなあ。
 真智なんかすでに真智叔父に抱えられて「ヤダヤダー」って言ってる。
 ずいぶん甘えん坊になったもんだなあ、真智。
 それがいいことなのか。
 いや――いいことだろう。
 ゲームの中の、復讐に取り憑かれた姿を私は知っている。
 余裕がなく、他人を信用せず、ヒロインを助けて保護していたのも“悪魔祓い師”として仕方なく。
 でも、元来の優しさや世話焼きな面が出てきて……次第に打ち解けていく――的なストーリーだろうという、予想。
 なぜなら真智のストーリーは未公開だから。
 オタクたちの予想よ。
 でも真智を見てるときっとそういうストーリーだったんだろうなって思う。

「真宵嬢たちは我々がお送りします」
「え。いや、家も近いので、うちが」
「いやいや、俺の家でお送りしますよ!」
「……お嬢、どこの家の車に乗りますか? 一応、俺も車で来ているので送れますよ。ちなみにもういい時間なので送りをお断りするのはなしで」
「う……」

 支援してもらっている十夜の家。
 家の家格が一番高い日和ひより
 家が一番近い真智の家。
 すぐるの家は――御愚間おぐま家は秋月があんまり好んでいないからなぁ。
 う、うーん……こういう場合どうしたらいいの?
 日和ひよりはなしでしょ?
 二人でいて空気が保つわけがない。
 すぐるはアリ寄りのアリだけれど、やはり秋月が嫌がりそうだから避けられるのなら避けたい。
 十夜か真智なら私は真智!
 シンプルに家が近いから!

「じゃあ、宇治家うじいえのおじ様の車に乗せていただいてもいいでしょうか? 一番家が近いので……」
「もちろんです」
「あらぁ! うちの車に乗ってもいいのよ? 四台で来てるし!」

 十夜の家、家族総出で来てるから車の台数も多いんだよね。
 余計頼りづらいよ。

「いえ、そんな……。やはりお家が一番近所なので……お手間をおかけするのも申し訳ないですし」
「そおー? 遠慮しなくってもいいのにぃ!」
「んー。真宵が一緒に帰るなら、帰る」
「おお……」

 さっきまで地団駄を踏んでいた真智がそう言い出したことで、真智叔父と真智叔父妻さんが目を丸くする。
 同年代の子どもを持つ親たちが顔を見合わせて、いかにも『じゃあ仕方ないな』みたいな空気になる。
 日和ひよりは不満げに頬を膨らませていたが、ボディーガードの人がなにかを耳打ちすると子どもとは思えない顔つきになって踵を返す。

「仕方ないなぁ。わかったよ。今日のところは別件もあるし、引くよ。今度デートに誘うから、真宵嬢、デートしようね」
「しない、ですかね」

 なにを言ってるんだ、この男は。

「うーん、釣れなーい。まあ、それじゃあまた今度。すぐるもまた今度! デートしよう」
「しないですね」

 私とすぐる二人に振られたというのにウインクしててへぺろ顔をしながら、アイドルよろしく軽い敬礼して去っていく。
 き、キザぁ……。
 そういえば日和ひよりってああいうキャラだったわ。
 カッコつけ。
 まあ、あと十年ぐらいしたらアイドルというか、除霊するパフォーマーになるっていうか。
 すでにその片鱗が現れているのか。こわ。
 見なよ、私の隣にいるすぐるの表情。
 終わってるものを眺める目だよ……小学二年生がする目じゃないよ。

「マヨイちゃん、また遊ぼうね」
「うん。また別の夏祭りで遊ぼう」
「うん!」

 そして十夜は素直。
 よく見るとご飯を食べて、お腹いっぱいになったから若干眠そう。
 そうか、十夜母が十夜のこの様子を見て早く家に帰って寝かせた方がいいと判断したんだ。
 もう寝たい、みたいな顔だもんなぁ。
 でもここからお風呂に入れて歯を磨いたら覚醒するんだろうなぁ。
 そして寝かしつけに時間がかかるんだろうなぁ……。
 なんか、子持ちの親御さんの気持ちがちょっとわかるようになってしまった。

「じゃあ、真宵嬢。帰ろう」
「はい。お世話になります」
「お、お世話になります」

 りんと一緒に真智の家の車に乗せてもらうことにした。
 夏祭り、この世界では初めて参加したけれどなかなか勉強になったな。
 怖い思いもすることになったけれど……日和ひよりがボディーガードに耳打ちされていたのを見た時、「犯人が……」と漏れ聞こえた気がする。
 多分、私を攫ったあの男がボディーガードたちの式神に見つかったのではないだろうか。
 あの犯人がどうなるのかわからないけれど、ゲームの中の日和ひよりは穢れに対して容赦がない。
 人間であろうと、呪い屋に対しても……。
 だから、私を攫った犯人は大変な目に遭うし絶対に捕まる。
 そこはまったく不安がない。
 そういう面では、日和ひよりを信頼している。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!

ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」 卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。 よくある断罪劇が始まる……筈が。 ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

処理中です...