ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

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実家の終わり(4)

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「お邪魔します」
「お邪魔しまーーーす!」

 うるさ……。

「どうぞ。なんのお構いもできませんが」
「お気遣いなく。こちらお土産です。つまらないものですが」
「ありがとうございます」

 騒がしい日和ひよりはともかく、すぐるはいつもおとなだなぁと思う。
 小学生とは思えない真っ当な定型のやり取り。
 ちなみに日和ひよりからはボディーガードの方が謎の紙袋を三つも渡された。
 な、なんで三つ……?

「こちらの紙袋は安倍家当主ご夫妻からです。花柄の紙袋が春月しゅんげつ様、縦縞の紙袋が理人りひと様からとなります。茶色い紙袋は日和ひより様からのお土産となります。どうぞお納めください」
「お納め……お、大袈裟に感じますが……ええと、ありがたくいただきます……」

 受け取るの怖ええええ……。
 でもお断りする理由がない。
 りんからも息を呑む音が聞こえてきたし、これは多分ダメだと思う、断るの。
 というわけで受け取ってりんに手渡す。
 玄関で立ち話もなんだから、ボディーガードの人たちも含めて全員茶の間に通す。

「それで、本日はどのようなご用件でしょうか?」

 完全にくつろぎモードな日和ひよりはともかく、すぐるは姿勢を正して「先日の『六芒星会議』でのことなのですが」と話を切り出した。
 ああ、鬼ババアとマザコンがどうなったかとか、千頭山せんずやま家のその後のこととかね。
 確かにどうなったのかは気になる。
 私自身がやることは変わらないけれど。

「どうなったのですか?」
「一部はすでにお聞きになっているかと思いますが、当主であった千頭山せんずやま菊子様が悪魔に取り憑かれていたことが発覚して悪魔祓いが急遽、行われました。悪魔自体は祓われましたが、菊子様の精神はすでに悪魔と同化しており、『五芒星収容所』に隔離されることとなり、千頭山せんずやま家の御当主を解任されると正式決定がされています」
「はい。そこまでは聞きました」

 こくり、とすぐるが頷く。
 妥当だとは思う。
 悪魔に取り憑かれて、悪魔と同化していた祈祷師なんて結界にどんな悪影響を与えるかわかったモノではない。
 あの鬼ババアは相応の報いを受けるべきだ。
 何人も何人も人生を振り回されているのだから。

「それで、ここからはさらに後日、他の六芒星の家々で話し合いが行われてまとめられたことなのですが……その、本来であれば安倍のご当主様がお伝えする予定だったのですが……」
「え……?」
「まあ、あの……さすがに緊張されると思ったので、年が近く交流もある俺と日和ひよりでそのお役目を交代させていただいているので……言葉が間違えてしまうこともあるかもしれないので、そこはお許しいただきたいのですが」
「はい、大丈夫ですよ」

 そうだよね、緊張するよね。
 結構重大なことだもんね。
 なにしろ――六芒星の家の一角が失脚したと言っても過言ではない状況。
 最悪、結界に影響を及ぼしかねないのだ。
 私も無関係ではない。
 とはいえ、子どもなので巻き込まれたくはないけれど。

「次期当主候補であった千頭山せんずやま礼次郎れいじろう様は安倍家、大離神おおりかみ家、善岩寺ぜんがんじ家、宇治家うじいえ家から反対が出て、本人自身も辞退の意を示されたため千頭山せんずやまとおる様に当主の座をお任せすることになりそうです。それで……その……」

 突然言い淀むすぐる
 なに? 私の意思確認?

「私がどうこうの話?」
「は、はい。一応、千頭山せんずやま家の当主の座をどう思っているかだけはお聞きしなければと」
「興味はないわね。私はVtuberになるんだから! ……あと、なにより私は子どもだしね。鬼ババアにも千頭山せんずやま家の者と認められていないし」

 そう答えると、すぐるの表情はなにやら渋い。
 日和ひよりはおとなしくお菓子を食べていたが、なにか……なんか、言いたそうな顔をしている。
 これは、すぐるに「余計なことを言うな」と言われていそう。

「他になにか理由があるの?」
「実は、直系は真宵お嬢しかいないのです。千頭山せんずやま家は特殊な家で、屋敷に住まう千頭山せんずやま家の守護神に認められた者のみが当主となれるとされている。当主の候補に今上がっている方々は皆、その守護神を見ることができない・・・・・・・・・そうなのです」
「……おっふ……」

 守護神というのは秋月のこと。
 直系って他に春月しゅんげつさんもいるけれど、彼女は安倍に嫁に行ってしまっているから無理。
 確か祖父は婿入りだよね。
 ああ、そうか。
 祖父が新しく作った家庭に千頭山せんずやま家の血がまったく、一滴も入ってないのか。
 ……りんにも――。

「あれ? でも、りんは秋月が見えるよね?」
「はい。でも、それはわたしの霊力が高いだけなので……」
「霊力が高ければ誰にでも見えるのでしょう? それなら別にお祖父さまのお家の方が当主になってもいいのでは?」
「どうでしょうか……。秋月様は血が入っていないとお認めにならないのではないでしょうか。秋月様にとって千頭山せんずやま家の人間でなければ……」

 えー? そうかなぁー?
 首を傾げるが、そんなの結局は本人に確認してみるしかない。

「秋月に聞いてみてもいいですか?」
「お願いしてもいいでしょうか?」
「あ――ああ、うん。もちろん」

 そうか、本来の目的はそれか。
 すぐるは秋月が見えないし、どちらかと言うと私の弟弟子っぽい立ち位置。
 すぐるが私に話をしにきたのは私と顔見知りで年が近い点と、秋月に関わったことがあるからか。
 万が一秋月が千頭山せんずやま家の血が入っている者しか認めない、とした時に、説得してもらえるように。

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