ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

文字の大きさ
128 / 132

覚悟

しおりを挟む

「秋月、いるかなぁ? 秋月ー」

 秋月がよく出てくる鏡に近づく。
 秋月は割と呼べば来てくれるけれど……さすがに今は来ないかなぁ?
 心配していたけれど、鏡からうっすらと半透明な秋月が現れた。

「話は聞いていたよ」
「あ、聞いていた? えっと、どうかな?」
「真宵は千頭山せんずやま家を立て直してくれるんじゃなかったの?」

 不満そう。
 その約束はもちろん覚えている。

「そのつもりだよ。でも現実問題、今の私は未成年なの。祈祷師としてもVtuberとしても自分の身が自分で守れるようにならないと、千頭山せんずやま家を立て直すところに立てない。だからちゃんとおとなになって、千頭山せんずやま家を立て直せるよう今頑張っているんだよ? 私が立て直しができるようになる前に千頭山せんずやま家がなくなっても困るでしょ? だから一旦、お祖父さまにお任せしようかなって」
「……ふむ」

 私の考えを告げると、秋月はちょっと腕を組んで目を細める。
 この辺りは未成年の限界。
 少なくとも今は無理って話。

「それは理解したけれど、それならいつか、真宵が千頭山せんずやま家の当主になるってことだよね?」
「そうね。今は無理だけれど……」

 目を閉じる。
 ここで腹を決めなければいけないと思った。
 正直なことを言えば、私は中身が違う。
 私は千頭山せんずやま真宵まよいじゃない。
 けれど、前世の私は絶対に死んでいる。
 千頭山せんずやま真宵まよいに体を返す日が来るのはわからないけれど、もしそうなった時……彼女は千頭山せんずやま家の当主になりたいと思うんだろうか?
 わからないけれど、彼女が食べるに困らない状況にしておいてあげた方がいいよね。
 たかが人に使われるだけの一般OLの私ごときにそれができるのか、自信はないけれど。
 でも、そうしてあげたい。
 乙女ゲーム『宵闇の光はラピスラズリの導きで』の悪役令嬢として、祟り神になって死んでしまう未来だけは回避してあげて――それで……。

「うん……私、いつか、千頭山せんずやま家を背負うよ。約束したものね。ちゃんと勉強して、色々な人に協力してもらうことにはなると思うけれど……私、立派な祈祷師Vtuberになって千頭山せんずやま家を立て直す」

 秋月と約束したもの。
 今、腹を括った。
 それを聞いた秋月が、目を少しだけ見開いてから安堵したように目を細める。

「うん、それならいいよ。釘だけは刺しておいてね」
「がんばるね」
「もしも約束を違えるようなら、僕はまた鬼になってしまう――って、伝えておいて」
「脅しじゃない」

 ふふふ、と笑う秋月。
 まあ、多分笑い事ではない。
 ガチだ、これ。

「真宵お嬢、あの……秋月様はなんと?」
「許すそうです。ただし、条件があります」
「条件」

 こそーっと襖を少し開けて、りんすぐるが顔半分を出してお伺いを立てている。
 それに対して秋月が出した条件を伝えてあげた。

「一つ、私がおとなになるまでの間、仮の当主として認めるそうです。私が成人したら、千頭山せんずやま家の当主の座を明け渡してください」
「代理人ということですか」
「はい。私が秋月に祈祷師として色々教わっているのは、いつか千頭山せんずやま家の当主になるためなんです。鬼ババア――祖母は千頭山せんずやま家のお金を散財していたそうなので、私に立て直してほしいと言われていたので私がやらなければ。契約違反・・・・になっしまうので」
「っ……」

 この業界で人ならざる者との契約・・はどこにどんな影響があるかわからない。
 契約を違えれば、祟りが生まれることもある。
 まして千頭山せんずやま家が抱える守護神は元悪鬼。
 祟り神の一歩手前。
 悪魔よりも強力で、半分神に足を突っ込んでいる。
 そんなものと契約を違えたら、間違いなく祟りが発生してしまう。
 多分、秋月は相当強い“悪鬼”だったのだと思うから、絶対祟りを発生させたくないはずだ。
 脅しとしては凄まじい威力。

「一つ、ということは二つ目もあるのですか?」
「あるわ。二つ目は私の自由にさせること。私、Vtuberになりたいから、そのあたりは邪魔しないでほしいの。Vtuberをやりながら当主としての勉強もするからサポートしてほしいかなって。これは秋月というか、私の希望が半分くらいだけれど」
「それは当然かと。Vtuberに関しては興味を持っている家も多いので、構わないと思います」
「うん!」

 キーン、と耳が痛い。
 突然入ってきたのは日和ひよりだ。
 うん、だけでこんなに大声貫通させてくるとか強すぎでしょ。
 っていうか、Vtuberに日和ひよりも興味がある?

「――あなたが千頭山せんずやま家の守護神、秋月様か! ぜひご挨拶をと思って! 初めまして! 大離神おおりかみ日和ひよりと申します!」
「ああ、初めまして」
日和ひよりは秋月が見えるんだ?」
「まあ、この子は霊力が高いからね。見えるんじゃない?」

 なんか秋月って、千頭山せんずやま家の関係者にしか見えないイメージだった。
 霊力が高い人になら誰にでも見えるのか。

「真宵嬢が千頭山せんずやま家を継ぐのであれば、大離神おおりかみ家の天才! 安倍晴明の再来と言われるこの俺を! 婿にとってはいかがでしょうか! 絶対幸せにしますし! 千頭山せんずやま家のために働きますよ!」
「それは真宵が決めることだから、今どうこうということはないかな」
「うーん! 真っ当かつ辛辣!」
「別に辛辣ではないでしょう」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!

ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」 卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。 よくある断罪劇が始まる……筈が。 ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

処理中です...