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第二章:

職を求めて三千里?②

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 意識を取り戻したときも聞いたのだが、銀髪に碧眼のリラは神官のジョブに就いている。つまり防御回復を得意とし、敵がアンデッド系なら浄化魔法を使って無双状態にもなれる、光属性魔法のエキスパートである。

 そんな彼女がいうには、治癒魔法は確かに強力だけど、その分反動も大きいそうで。具体的に言うと、重傷の人を一気に治すと身体がもともと持っている傷を癒す力が弱まってしまうので、次にケガした時に血が止まらなくなったり、他の病気にかかりやすくなったりする、らしい。

 最初にわたしが起きた時、全身包帯まみれだったのはそのせいだ。ある程度まで治療して、出血とか痛みを抑え込んだら、後は薬草などで自然な治癒を促すのがいちばん負担が少なくてすむんだとか。

 「上手くいってよかったよね! 痕が残んなくてホッとした~」

 「うん、ほんと。お世話になりましたリラちゃん」

 「いいのいいの、困ったときはお互い様だから! 私も勉強になるし」

 それよかさ、と、気持ち声を潜めたリラに手招きされて顔を寄せる。すると、相手はさらに小さい声でこう続けた。

 「……あれからどう? 魔法、どれかひとつでも使えるようになった?」

 「あ~……ごめん。残念だけどひとつも」

 「うーん、そっかあ」

 本人よりよっぽど残念そうに眉を下げる神官さんに、わたしのせいじゃないけどなんだか申し訳なくなってしまった。

 ――ゲーム本編では魔導師として、強烈な魔法をガンガン使いまくってたライバルなのだが。どうも追放されたとき、そのほとんどを封印されているみたいなのだ。

 最初に気付いたのは養生中、本が読みづらくて明かりを灯す魔法を試したときだった。すっかり丸暗記していた呪文を唱えたところ、本来なら光の玉が出てくるはずなのに、手のひらがぼんやり輝くくらいの効果しか出せなかったのである。

 まあ完全なる冤罪とはいえ、悪いことしたお仕置きとして追放になってるのだ。魔法で無双して楽されたら意味がない、っていうのはよくわかる。

 家はないしお金もない、頼みの綱の魔法も軒並み使用不可。わりと本気でヤバかったところに声をかけてくれたのは、またしても命の恩人さんたちだった。

 「イブマリー嬢、少々良いだろうか」

 「はーい」

 先頭からかかった声に顔をあげる。これまた手招きしていたショウさんに駆け寄ると、手元に広げた地図を指差しながら、

 「いま歩いているのがこの街道ですな。順調に進めば明後日、我々が拠点にしている町に到着します。
 交易の要衝で人口も多いゆえ、人材の斡旋を生業とする御仁も大勢おります。ひとまずはそこで仕事を探されるのが良いかと」

 なるほど、こっちにもハローワーク的なのがあるんだ。

 この『紫陽花オルタンシア』のメンバーが出発してきたのは、海に面した大きな町なんだそうで。国内外との貿易だけでなく、その資産をいかして観光とかの文化事業にも力を入れていて、とても活気のあるところらしい。ヒトの集まるところなら、その分だけ働き口も増えるだろうと、帰るのに同行させてもらえることになったのである。

 ただ、ちょっぴり心配なのは……

 「わたし、正直魔法以外の取り柄がほぼない気がします……」

 「なーに言ってんの。読んだり書いたり計算したりは普通にできたでしょ? ってことは品物の管理とか帳簿つけとか、商売の手伝いには十分入ってけるわよ」

 「フィアん家は商人さんだもんね。ていうか直で雇ってもらえないかなぁ、確か住み込みオッケーでしょ?」

 「お、良いこと言うじゃん。よし、戻ったらまず実家で面接ってことで!」

 「あっうん、ありがとー……でもわたし、かなりどんくさいよ?」

 「大丈夫! うちでいちばん大事なのは、頭領ボスが気に入るかどうかだから!」

 「ええええ」

 すっかり実家に連れてく気満々なフィアメッタ。盛り上がってるのはいいんですが、仮にもお商家の採用面接がそんなザル判定でいいのだろうか……
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