デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします

古森真朝

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第四章:

海辺の大商都①

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 ぱっと目が覚めると、部屋の中がすっかり明るくなっていた。

 「……あれ? えっと」

 ここ、どこだっけ。一瞬デジャヴを感じつつ、まだぼんやりした頭でことんと首をかしげる。

 この前までいた宿屋さんの、軽く二倍はある部屋だ。おいてある基本的なものは同じだけど、例えばふっかふかのベッドに掛けられたお布団からはハーブのいい香りがしているし、窓にかかったカーテンも裾にフリンジの付いたおしゃれなデザインだ。サイドテーブルに置いてある水差しとコップに至っては、切子みたいに凝ったカッティングがしてあって、一目で『あ、これ高いな』と分かる一品だった。

 そんな、どう考えてもお客様用の一室を見渡しているうちに、だんだん記憶がよみがえって来る。……それと同時に血の気も引いたが。

 「うそっ、いま何時!?」

 あわててベッドから飛び降りて窓を開けたら、まぶしい日差しと一緒に町の賑わいが流れ込んできた。

 三階から見えるのは、広がる家並みと石畳の道だ。その間をいろんな年恰好、いろんな種族のひとたちが行き交って、買い物したり商品を勧めたり、あるいは知り合い同士で楽しそうにおしゃべりしたり。活気あふれる往来のはるか向こうには、たくさんの帆船を浮かべた碧い海が、朝日にキラキラ輝いていた。

 ……まずい。これはどう考えてもあれだ。

 「ね、寝過ごしたー!!!」

 『……ふにゃ~~~』

 頭を抱えて叫んだわたしの声が、聞こえているのかいないのか。枕元で丸くなっている雷獣さんが、平和にむにゃむにゃ言いながら寝返りを打った。



 ――スコールくんと一緒に大蛇を退治して、天の川のドラゴンのご厚意により一気に町まで送ってもらえたのが昨夜のことだ。星の子達も楽しそうだったし夜景はきれいだったし、何より全員が無事に目的地についたわけで、それが一番嬉しかったりもした。

 ……ただ、出来るだけ目立たないようにって町の手前で降ろしてくれたのに、光るわ長いわ空飛ぶわですぐさま発見されて大騒ぎになってしまい、大急ぎで離陸するハメになったマージョリーさんが気の毒だ。すみません、この埋め合わせは必ずしますね。

 幸いわたしたちが乗り降りするところは誰も見てなくて、皆が空に注目してる間にその場を離れることができた。そのあとは予定通り、依頼人に品物を届けに行って、ありがたいことに泊まっていくといいよと言ってもらえて、現在にいたるわけだ。

 「ごごごごごめんフィア、おはよう! なんかものすごく寝てた!!」

 「おはよ。なんだ、もう起きたの? ゆっくりしてて良かったのに」

 「そーいうわけにいかないでしょ、ここフィアのご実家なんだからっ」

 「あんだホント真面目よねぇ。リラもちょっとは見習ったら? きっとお淑やかになれるわよ」

 「あっ、失礼だなぁ! 今朝はちゃんと早起きしてお手伝いしたもんっ」

 猛ダッシュで階段を駆け下りた先で、今まさにカゴに盛ったパンを運んでいたフィアメッタが明るく笑った。軽くいじられたリラもおはよー、と笑顔で声をかけてくれる。……よかった、思ったより時間オーバーしてなかったらしい。

 そんなこんなで。冒険者チーム『紫陽花』の一同は、現在フィアメッタのご実家であるグラディオーレ商会で過ごしているのだった。
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