デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします

古森真朝

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第四章:

海辺の大商都②

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 お店は大きな通りに面して建っていて、手前側が商品を扱う店舗部分。奥に進んで廊下と中庭を突っ切ると、従業員さんのための寮とフィアメッタの家族が住んでいる棟が隣り合っている。台所兼食堂はその住居部分の一階にあって、朝はお店の人たちが一斉に食事をするからだろう、結構かなり広かった。

 今はいちばん混み合う時間を過ぎたのか、比較的落ち着いている食堂内で、てきぱきお皿とかジュースの入った水差しとかを運んでくれている男子コンビがいた。数名分となると結構重さがあるから、これもまた進んで引き受けてくれたんだろうな。

 「おはよう! 遅くなってごめんね、わたしも手伝います」

 「おはよ。ちゃんと寝れたか? 顔色は良さそうだけど」

 「昨日の今日ですが、体調に影響はありませんか?」

 間に入ってコップとかを配りながらあいさつすると、さっそく気を遣われてしまった。ディアスさんに至っては片手で頭をポンポンしてくれるし。

 ……わたしってそんなか弱そうに見えるんだろうか。いやまあ色はかなり白いし、肩とか腕とか結構華奢ではあるけど、昨日まで元気に歩いてたぞ。いちおう。

 若干の疑問を覚えて両手をしげしげ見ていたところ、厨房の奥からひょっこり顔を出した人がいた。

 「おや、ずいぶん早いね。良く眠れたかい? イブマリー」

 「あ、おはようございます! あの、お母様」

 「あははは! そんな畏まらなくていいって、うちの子の友達なんだから。普通にシェーラおばさんとか、おばちゃんて呼んでおくれ」

 両手でスープ鍋らしきものを抱えて運びながら、いたって気さくに笑っている相手。頭のてっぺんでまとめてある紅い髪に明るい碧の目、生き生きした快活な表情が似合うとってもきれいな人だ。何を隠そうこの方こそ、商会をまとめる女将にしてフィアメッタのお母上、シェーラさんである。

 「食器並べてもらってありがとう、スープが出来たから配ろうかね。さ、座って座って」

 「「「はあーい」」」

 『――はっ! これとうきびのにおいだ~~~』

 「ほいほい、ティノくんも一緒に座ろうね」

 鍋から漂ういい香りに、今まで半分以上夢の中だった雷獣さんが突然目を覚ます。まだまだ熱い湯気に当たらないようによいしょ、と肩の上に固定して、私は急いで自分の席に陣取ることにした。



 「昨夜はありがとうね、おかげで今年も良い花が手に入って助かったよ。ギルドには朝一番で連絡したし、報告に行き次第報酬を受け取れるからね」

 「ありがとうございます。お役に立てたようで何より」

 無事に始まった朝食の席で、依頼主からお礼を言われたショウさんがきちんと頭を下げた。相変わらず姿勢が良くてきれいなお辞儀だ。

 食べながら聞いてね、とのことだったので、わたしもパンをいただきながら耳を傾けている。ホントはお話が終わるまで待つべきなんだろうけど、あったかいうちにって勧められたし、焼き立てのいい匂いには勝てなかったので。……すみません、ホント。

 「こういう依頼って、必ずギルドを通して受付してもらうの? みんなちゃんとしててえらいね」

 「全部がそうってわけでもないんだけどね。冒険者ギルドと提携してるお店の人は大体そうしてくれるかな」

 フィアメッタいわく、シェーラさんはいつもギルドを通して依頼をしてくれる優良依頼主、らしい。なぜならこうやって中継ぎを頼むことでギルドに仲介料が入って、なおかつ依頼主も意欲のある働き手を紹介してもらえる。持ちつ持たれつの良いシステムなんだから使わないのは損! てことだとかで。

 「それにうちのかーさん、元冒険者だからね。後輩の自立のためにって、こうやってちょこちょこ依頼を持ってきてくれるの」

 「そうなんだ! えっと、ちなみに職業は」

 「錬金術師アルケミストだよ。昔っからモノを作ったりするのが好きでね、生得魔法もそっち系統だったから。まあ地味なもんさね」

 「…………最前線で偃月刀シミターぶん回して人工精霊バリバリ操るのは十分ハデだと思う。あたし」

 「んっふっふっ、余計なことを言うのはこのお口かな~お嬢ちゃん」

 「むぎゅううう」

 ぼそりとつぶやいた娘さんのほっぺたを、深~い笑顔のシェーラさんが容赦なくつねっている。つまり、現役時代はバリバリの武闘派だったってことだな。うん。
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