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第四章:
海辺の大商都③
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「で、飲み薬塗り薬は昨日のうちに漬けといた。染める作業は媒染の用意とかもあるから、明日まとめてやろうと思ってるんだ。人手があると助かるんだけど、一緒にやってくれるかい?」
「わあ、ホントですか? ぜひやってみたいです」
「毎年のことだしね。あれ結構力仕事だから男子二人は絶対いるとして、リラは」
「やるやる! おばさん、また余ったのでリボン染めていーい?」
「もちろん良いよ。他にもなんかあれば持っといで」
「「「はあーい」」」
どうやら毎年お手伝いしているらしき一同と元気よく申し出る。草木染めってなかなかやる機会がないけど、実はこっそり憧れだったのだ。楽しみだなぁ。
「――そうそう、イブマリーの仕事の話なんだけどね。
うちでも雇えないことはないけど、この際だ。思い切ってこの子たちと同業になってみたらどう?」
「、えっ!? いやでも、わたし魔法が」
「生得のやつしか残ってない、だろう? うちの子からざっと聞いたよ」
大変だったね、と、こちらを真っすぐ見て優しく労ってくれる。……一番しんどかったのはガワの人だとは思うけど、今はわたしが代理だ。遠慮なくじーんとさせてもらおう。
「アタシの現役時代にね、腕のいい術士だったんだけど、いろいろあって魔法がほとんど使えなくなったヤツがいたんだ。ぱたっと姿を見なくなって、もうやめちまうのかと思ってたら――ひと月くらい後だったかな、またいきなり戻って来て」
ナイショ話をするみたいに、こっちに顔を寄せて続けるシェーラさん。面白くてたまらないって表情だ。
「『まだやりたいことがあるから、職業を変えてきた。いろいろ足を引っ張るだろうがよろしく頼む』って、その場で土下座」
「土下座ッ!?」
「あっはっは! だってはっきりとは決めてなかったけど、うちのパーティーじゃあほぼリーダー格だったからねぇ。黙って消えたのを気にしてたんだろうさ」
もちろん、他のメンバーだって嫌なわけがない。めでたくそのまま合流して、シェーラさんが引退するまではずっと一緒に冒険したんだそうな。
「そんなこんなでね、一番の特技がなくなったのは確かに痛い。でもやり方を工夫すれば、いくらでも道はあると思うんだよ。
だって雷獣がこれだけなついてるし、話を聞いた感じだと星の子とか、獣人族にも好かれたんだろう?」
『うん! まわりでずっとほわほわしてたー』
いつの間にか肩に乗ってきたティノくんが、元気よくお返事してくれた。それに頷いて、
「極めつけは精霊竜の背中に乗っけてもらったことだね。ああいう上級精霊は滅多にひとと触れ合わないし、基本気位が高いから、初対面の相手を乗せてくれるってのはまずない。この子たちだって嫌われてはいないけど、そこまで厚遇してもらったこともなかったしね。十中八九、イブマリーのおかげだと思うよ」
「そ、そうなんでしょうか……」
ゲーム内では、動物に懐かれるのはほぼヒロインの方だったから意外だ。
いまいち実感がわかないけど、こういう時は経験のある第三者の意見もよく聞いといた方がいい。何より今、女子二人と雷獣さんからどうする!? てキラキラした目が向けられてるし。
「……うん。やってみたいな、出来れば」
『わーい!』
「よしっ」
「やったー! これで一緒に冒険できるーっ」
「うん、俺らも近くで様子が見れた方が安心だし。な」
「ああ。こう申しては何だが、早くに決まりそうで安堵いたしました」
おずおずとだが受け入れてみると、なんだかとっても喜んでもらえた。黙って聞いていた男子二人もうれしそうにしてくれていて、何だかこそばゆい。
「あ、そうそう。テイマー系にもいろいろあるんだけど、どれも職業として認められるには『最低三つの種族からの加護』が要るんだ。
まあうちは結構大きな町だし、ギルドの規模もかなりのものだ。そのつもりで探せばすぐだと思うよ」
「じゃあ早いとこごはん済ませて、報告がてらギルド行ってみよう!」
『おー!! んじゃご主人、もろこしのスープちょうだい~』
「……うん、パンとか他の野菜も食べようね。ティノくん」
お肉ばっかりよりはマシかもしれないけど、このトウモロコシ大好きっぷりもどーなんだろう……
シェーラさんのナイスアドバイスに心から感謝しつつ、ひとまずは朝ごはんと、雷獣さんに他のものを食べてもらうことに集中するわたしたちだった。
「わあ、ホントですか? ぜひやってみたいです」
「毎年のことだしね。あれ結構力仕事だから男子二人は絶対いるとして、リラは」
「やるやる! おばさん、また余ったのでリボン染めていーい?」
「もちろん良いよ。他にもなんかあれば持っといで」
「「「はあーい」」」
どうやら毎年お手伝いしているらしき一同と元気よく申し出る。草木染めってなかなかやる機会がないけど、実はこっそり憧れだったのだ。楽しみだなぁ。
「――そうそう、イブマリーの仕事の話なんだけどね。
うちでも雇えないことはないけど、この際だ。思い切ってこの子たちと同業になってみたらどう?」
「、えっ!? いやでも、わたし魔法が」
「生得のやつしか残ってない、だろう? うちの子からざっと聞いたよ」
大変だったね、と、こちらを真っすぐ見て優しく労ってくれる。……一番しんどかったのはガワの人だとは思うけど、今はわたしが代理だ。遠慮なくじーんとさせてもらおう。
「アタシの現役時代にね、腕のいい術士だったんだけど、いろいろあって魔法がほとんど使えなくなったヤツがいたんだ。ぱたっと姿を見なくなって、もうやめちまうのかと思ってたら――ひと月くらい後だったかな、またいきなり戻って来て」
ナイショ話をするみたいに、こっちに顔を寄せて続けるシェーラさん。面白くてたまらないって表情だ。
「『まだやりたいことがあるから、職業を変えてきた。いろいろ足を引っ張るだろうがよろしく頼む』って、その場で土下座」
「土下座ッ!?」
「あっはっは! だってはっきりとは決めてなかったけど、うちのパーティーじゃあほぼリーダー格だったからねぇ。黙って消えたのを気にしてたんだろうさ」
もちろん、他のメンバーだって嫌なわけがない。めでたくそのまま合流して、シェーラさんが引退するまではずっと一緒に冒険したんだそうな。
「そんなこんなでね、一番の特技がなくなったのは確かに痛い。でもやり方を工夫すれば、いくらでも道はあると思うんだよ。
だって雷獣がこれだけなついてるし、話を聞いた感じだと星の子とか、獣人族にも好かれたんだろう?」
『うん! まわりでずっとほわほわしてたー』
いつの間にか肩に乗ってきたティノくんが、元気よくお返事してくれた。それに頷いて、
「極めつけは精霊竜の背中に乗っけてもらったことだね。ああいう上級精霊は滅多にひとと触れ合わないし、基本気位が高いから、初対面の相手を乗せてくれるってのはまずない。この子たちだって嫌われてはいないけど、そこまで厚遇してもらったこともなかったしね。十中八九、イブマリーのおかげだと思うよ」
「そ、そうなんでしょうか……」
ゲーム内では、動物に懐かれるのはほぼヒロインの方だったから意外だ。
いまいち実感がわかないけど、こういう時は経験のある第三者の意見もよく聞いといた方がいい。何より今、女子二人と雷獣さんからどうする!? てキラキラした目が向けられてるし。
「……うん。やってみたいな、出来れば」
『わーい!』
「よしっ」
「やったー! これで一緒に冒険できるーっ」
「うん、俺らも近くで様子が見れた方が安心だし。な」
「ああ。こう申しては何だが、早くに決まりそうで安堵いたしました」
おずおずとだが受け入れてみると、なんだかとっても喜んでもらえた。黙って聞いていた男子二人もうれしそうにしてくれていて、何だかこそばゆい。
「あ、そうそう。テイマー系にもいろいろあるんだけど、どれも職業として認められるには『最低三つの種族からの加護』が要るんだ。
まあうちは結構大きな町だし、ギルドの規模もかなりのものだ。そのつもりで探せばすぐだと思うよ」
「じゃあ早いとこごはん済ませて、報告がてらギルド行ってみよう!」
『おー!! んじゃご主人、もろこしのスープちょうだい~』
「……うん、パンとか他の野菜も食べようね。ティノくん」
お肉ばっかりよりはマシかもしれないけど、このトウモロコシ大好きっぷりもどーなんだろう……
シェーラさんのナイスアドバイスに心から感謝しつつ、ひとまずは朝ごはんと、雷獣さんに他のものを食べてもらうことに集中するわたしたちだった。
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