デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします

古森真朝

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第四章:

森の迷宮(メイズ)にご用心③

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 こういうダンジョンはゲーム内でいくつも登場したけど、実際に見るのはもちろん初めてだ。内心どきどきしながら待機していると、先頭のショウさんが進み出て石板に触れる。

 すると、真ん中に刻まれたレリーフが内側からぼんやり光って、ごごごっと地鳴りのような音と共に左右に分かれた。その先に広がるのは、今までとはけた違いの本当の真っ暗闇だ。

 「……お、入ってすぐ階段になってるぞ。右手側から壁沿いに下へ向かってる」

 「の、ようだな。ティノたちは早速に明かりを、皆も足元に注意して進んでくれ」

 「はーい」

 早速生得魔法を使ってくれたディアスさんの目が、猫みたいにキラリと光っている。リーダーの号令で雷獣さんが光の玉みたいなのを出してくれたので、さっきより視界が広がった。後ろからは相変わらずエルドくんが照らしてくれるので、真昼のようとまではいかないけど断然歩きやすい。

 手すりのない螺旋状になった階段を、壁に手をついて慎重に降りていく。ちなみに反対側は吹き抜けになっていて、どこまでも続いていそうな深い穴がぽっかり口を開けていた。通路の幅はそこそこあるけど、うっかり踏み外さないように気をつけなきゃ。

 「……そういえばさー」

 しばらく無言での移動が続いたのち、リラがふと口を開いた。高く澄んだ声が階段のある空間に響いて、わーんと木霊を作り出す。

 「フェリクスさん、今から会いにいくひととどうやって知り合ったの? ここに引き込もって出てこないんだよね?」

 「ああ、それはですね。まだランヴィエルに行く前、あちらこちらをひとりで旅していた時にたまたま入り込んでしまって……
 実を言いますと、こちらの遺跡にはちょっとした仕掛けがあるんです」

 「仕掛け?」

 「はい。中に入ろうとする者の内面を読み取って、迷宮の仕様を組み換える、というものです。
 彼らを己のものにせんと考えている者がいれば、その魂胆を察知してより難解になります。が、逆に」

 「ただ会いたい、元気にしてるかなって思ってるひとには何にも起こらない、ってことですか」

 「ご明察です。もっとも、例えそうと知っていても、意識をコントロールするというのは難しいことですが……」

 なるほど、オンラインゲームなんかである『入る度にマップが変わってるダンジョン』みたいなものか。

 「フェリクスさん優しいもんね。顔を見せに来てくれるのうれしいんじゃないかなぁ、そのひと」

 『くわ~』

 「ふふふ、ありがとうございます」

 「――ごほん。少々良いだろうか」

 いつの間にかなついているエルドくん共々、詩人さんに頭を撫でられていたところ、咳払いが飛んできた。そっちに目をやったら、何だか微妙な顔をして足を止めているうちのリーダーの姿が。

 「ご歓談中申し訳ないが、そろそろ階が終わるようです。また石板の入り口が見えるゆえ」

 あ、ホントだ。

 指し示した先にさっきと同じレリーフを見つけて、そんなに長いこと話し込んでたのかと軽くショックだった。なるほど、そりゃ微妙な表情にもなるわ。『緊張感ないのか、この人ら』って呆れられてもしょうがない……

 と。

 『あのね~ご主人、若だんなね、ご主人と詩人さんがお話ししてるの見てさびしそうだったー』

 ごふっ!

 「……はい?」

 ちょっとしょんぼりしかけたところへ、ティノくんがマイペースに割り込んできた。しれっとバラされた当人、および近くで見ていたと思われるディアスさんが同時にむせたのを見るに、多分ホントなんだろうけど――え、呆れてたんじゃなかったの?

 『あとねぇ、アニキにも気づかれていわれてたよ。なんだっけ、おもち?』

 「……あー、うんうん、そーだな。ヤキモチな。ぐふっ」

 「~~~っ、雷獣殿は致し方ないとして! 改めて吹き出さないでくれるかディアス……!!」

 「いだだだだだ」

 相手の首に腕を回してぐいーっと引く、確かフェイスロックっていったと思うけど。とにかく笑いまくりの盗賊さんを締めにかかってるショウさん、電気玉の明かりでもわかるくらい顔が真っ赤だ。

 えーと、つまり多分だけど、『こないだ拾ってきた仔犬が、自分より遊びに来た友達の方に懐いてて悲しい』っていう飼い主、もとい保護者あるある……?

 (だっ、ダメだわたし! 笑っちゃダメ、ここで笑ったら当分口きいてもらえなくなる……っ!!)

 やだ若旦那かわいい! と思わずニヤけそうになってしまい、力いっぱい足をつねって必死で耐えるわたし。そして背後で女子二人がいえーい! とハイタッチして喜んでるんだけど何でなのか。これでメンバー入りが九割方確定ってことか、いやそれはわたしもうれしいけども!!
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