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第六章:
レディ・グレイの肖像⑪
しおりを挟むつまり、このバンシーさん(仮)を助けようと思ったら、一体何種類いるかもわかんない激レアさんたちを全員解放出来る方法を考えなくてはいけない、ってことなわけで。日没まであと何時間もなさそうなのに、黒幕がやって来るまでに出来るんだろうか、そんなこと。
「だとすると、相当時間かかりそうだよね……でもイオンのお母さんも助けたいし、この分じゃマンドラゴラさんの仲間も捕まってそうだし~~~」
『きゃー! ねーねーだいじょぶさーっ』
『まあ~っっ』
はっきり言って、ロクに魔法が使えない今のわたしには間違いなく無理ゲーだ。しかしだからって諦めたりは絶対したくないわけで、ない知恵を絞ろうとしたら頭が痛くなってきた。うう、情けない。
小動物さんたちが焦る声を聞きながら頭を抱えていたところ、なだめるみたいに頭をぽんぽん叩いたひとがいた。いうまでもない、さっきから隣にいるりっくんである。
「はいはい、勝手に悩んで追い詰められないでよね。何でもひとりでやろうとするの、君の一番悪いクセだよ」
「う、そうかも……って、じゃあ何か案があるの? りっくん」
「探すヒマがないんなら、いっそ案内させてしまえばいい。そうすれば黒幕の正体と目的も分かるし、みんな万々歳だろ?」
「サラッとすごいこと言ったー!! つまり犯人が来るまで待ってるってことだよね!? イオンたちもいるのに危ないってばっ」
「大丈夫だってば。僕は備えもナシに突撃する、なんて一言も言ってないよ」
あくまでも落ち着いている騎士さん、相変わらずわたしの頭をぽふぽふしつつ片手で襟首を探って、細い鎖のようなものを引っ張り出してきた。先端に五センチくらいの、水晶で出来た細い筒が付いている。おお、もしかしてこれは!
ピィ――――!!!
筒の片方を口元に当てて、息を吹き込むと鋭い音が鳴り響いた。見た目同様、透きとおった綺麗な音だ。その余韻が消えるより早く、視線よりもちょっと高い位置にぼんやりしたものが現れる。
「よし、来たね。風霊くん」
『はいっ、馳せ参じました!! 本日は何度もご用命いただき、有難うございますッ』
あ、やっぱり。
びしっ! と効果音が付きそうな敬礼を返してくれたのは、半透明の……なんて言ったらいいんだろう。ハロウィンのイラストでよく描かれてる、シーツを被った簡単オバケにちっちゃい翼をつけたようなコだ。高くて可愛い声なのに、しゃべり方が軍人さんみたいに堅苦しいのが何ともミスマッチである。
さっき言ってた通り、この子はリックが契約してる風霊さんだ。要するに風の精霊なんだけど、ヒエラルキーが厳しい精霊界では一番の下っ端に当たる。なので、こうやって契約相手に呼び出されてその用事をこなしていくことで経験を積んで、ちょっとずつレベルを上げていくんだそうだ。
もちろんゲームにも出てきたし、あの笛きれいだな~風霊もかわいいな~グッズとして売り出してくれないかな~、なんてオタ友と盛り上がったりしたものだ。
「毎回すまないね。いま大丈夫かな」
『勿論ですとも! ワタクシは主のために居ります、いつでもどんなことでもお申し付けくださいませ!』
「ありがとう。じゃあさっそくお願いしたいんだけど――この地下空間に捕らえられている魔法生物の数と種類、あと何がどこにいるのかを調べて教えてほしい。出来るだけ迅速に」
『了解いたしました!! 速やかに任務に移りますッ』
しゅばあっ!! と、残像が残るくらいの勢いで空をカッ飛んでいく風霊さん。相変わらず見た目に反してバリバリの体育会系である。
「……とまあ、これで間取りと配置は把握できるね。上にいるお嬢さんたちと連携して、ギルドにいるメンバーを呼び寄せたら作戦会議と行こう」
『ほあ~、にーにーかっこいいさ~!』
『ままま~~』
「はは、ありがと。子どもって素直で可愛いなぁ」
「うん、まあ、それは全面的に同意しますけど……ほんっとに変わったよねぇ、りっくん」
ぴょこんと肩に飛び乗ってきたとかげさんとマンドラゴラを撫でてあげるリックに、思わずしみじみと呟いてしまったわたしは悪くないと思う。
だってシナリオ中のあのテンプレすぎるツンデレを見続けてきた身としては、進んで誰かと協力体制を取ってくれるなんて夢みたいな光景なわけで……
言ってしまってから、さすがに怒るかなーと一瞬心配になったのだけど。
「それはどうも。なんせ君の教育の賜物だからね? 君の為ならどんどん活用しなくちゃ」
「……おおう」
それはもう、暗い中でも目にまぶしい爽やかスマイルで即答されてしまったのだった。そーいうとこだぞ最年少。
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