デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします

古森真朝

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第一章:

ヴァイスブルクの休日③

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 ギルドを出て少し行った左手には、海側に突き出した広場がある。最初に街を歩いたとき、フェリクスさんと出逢ったところだ。もうずいぶん前のような気がするけど、実際はほんの半月くらいしか経ってなかったりする。

 「あー、ずっと座ってたから肩こったな~」

 『ふぃっ?』

 「ううん、痛いとかじゃないから大丈夫。みんなを待ってる間にちょっと見て回ろっか」

 『はーい!』『ままま~』

 女子コンビを見送ってから、首を回して独り言のつもりでこぼしたら、今日も肩にちょこんと乗っかっているリーシュが顔を覗き込んできた。軽くもふもふしてあげると、安心したみたいに翼をぱたぱたさせる。

 そういやこの子、こないだの騒動で初めて魔法使ったんだっけ。出番が少ないのは申し訳ないけど、そんなギリギリの状況になかなか遭遇しないのはいいことだし、難しいところだ。

 『まーま、まあ』

 『お店いっぱいだねーって。ぼくねてたからおぼえてないけど、いつもこんなかんじなの?』

 「ううん、今日はちょっとにぎやかだね。バザーでもやってるのかな」

 前回来たときは広々としていたが、今日は外縁に沿って露店が立ち並んでいて、ちょっとした市場みたいになっていた。

 ざっとみたところ、手作りしたお菓子とか雑貨とかを並べているみたいだ。特に多いのは草花を扱っているお店で、海風に混ざってすがすがしい香りがしていた。あんまり詳しくはないけど、ハーブかな?

 『ふぃー』

 『うん、いいにおい~。ご主人、これなあに?』

 「だねぇ。多分この紫のがラベンダーで、こっちの白っぽい花は――わっ!」

 ご機嫌なティノくんたちとおしゃべりしつつ、並んだ花に顔を寄せて歩いてたのがいけなかった。立ち止まって品物を見ていた人に気付かなくて、思いっきり正面からぶつかってしまう。よっぽど体幹がしっかりしているのかびくともしなくて、逆にわたしの方がぽーん、と後ろに弾かれて――

 「すまない! 君、怪我はなかったか?」

 「……ふぇっ?」

 がしっ、と、倒れ掛かったのを大きな手に支えられる。同時に、めちゃくちゃ至近距離で爽やかすぎる声がした。
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