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第三章:
今そこにあるフラグ②
しおりを挟むそのシナリオ、正式には『精霊の蜜酒』というカッコいいタイトルだが、エトクロファンの間では誰が言い出したのか『デスハニークエスト』なんて呼ばれていた。理由はさっきも言ったとおり、発生すると確実に血を見るからだ。
最初はいたって普通に、知り合いからの頼み事という形でクエストが始まる。最近国内でミツバチが謎の集団失踪をするというケースが増えていて、その対策をしたいのでちょっとした調査を頼みたい、というものだ。そこでランヴィエルの王都周辺にある養蜂場とか、個人的にハチを飼っている人とかに聞き込みを開始するんだけど……
『単なる病気とか環境問題だと思うじゃない? ところがどっこい、最終的には国そのものの暗部にまで関わるハメになるのよねー』
絶対に突入したくないから、フラグがどうやって立つかとか教えて! と拝み倒したわたしに、快く解説してくれた我がオタ友の声がよみがえる。ついでに話を聞かされて、大惨事シナリオと名高い理由に深く納得したことも。
(そりゃ逃げられないよなぁ。状況が悪すぎるって……)
「――リー、ねえちょっと、イブマリーってば!」
『ご主人~!』
「うわあ!?」
突如耳元で呼ばれて、冗談抜きで飛び上がった。急いでそっちを向くと、そこにはいつの間にかすぐそばにやって来ている、さっき和気あいあいだった皆さんの姿が……やばい、全然気づいてなかった。
「さっきからどうしたのよ? あんた虫は平気なんじゃなかったっけ」
「ていうかエラちゃん、ハチさんというより妖精さんに近いよねー。りっくん、なんか昔にヤなことあったの?」
「いや、そんな覚えはないよ。リュシーも大概だけど、彼女も生き物っていう生き物には片っ端から関わってくタイプだったし。……ただ、こっちも会ってから一年と少しだからね」
「おれも始終一緒にいたわけではない。彼女は周りを気遣って弱い部分を隠すところがあるし……」
だからなにか困ってるなら言ってくれ、と訴えてくるりっくん、およびうちの殿下である。まっすぐな眼差しがやたらと胸に痛い!
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