デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします

古森真朝

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第三章:

今そこにあるフラグ③

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 なんて説明したものか、と心の中で頭を抱えていたところ、ふあーんと軽やかな音がして我に返った。そっちに視線をやると、透明な羽根を震わせて飛んでいる妖精蜂さんの姿がある。無言のままつぶらな瞳でじーっ、と眺め続けること、しばし。

 『……ねえねえ。アナタ、もしかして未来を知ってる人?』

 前置きなくずばっと言われてしまった。なんでそれを⁉

 「な、な、ななななんでなんでそれ知って」

 『うん。カンが鋭い、っていうんだっけ? ワタシたち、見たり聞いたり以外の感覚がとっても鋭いみたいなの。それで何となく』

 「えっマジで⁉ イブそんなことできるのっ」

 「初耳なんですけど⁉ ていうかレオさんとりっくんは聞いてた⁉」

 「いや、俺たちも知らない。……そもそも、ランヴィエルには先視の力を持つものが滅多に現れないんだ。今はリュシーだけだろう」

 「そんな希少な能力を持ってるなら、魔導師じゃなくて巫女か占術師を目指すことになったと思うよ。勘当とか絶対にありえないだろうし」

 そうそう、そんな設定だったっけ。だから殿下とリュシーが仲良くなり始めたころ、ライバルの不肖の父親であるマグノーリア侯爵が『どうせならもっと稀有な力をもって生まれてくればよかったものを』とかひどいセリフを投げつけて、アンリエットにすっごく悲しい顔をさせるシーンがあった。

 ちなみにもちろん、わたしを含めたファンの意見は『てめえなんぞにそんな都合のいい子供が生まれてくるかボケー!!!』ということで全会一致をみている。ほんと人望ないな、あのおじさん……ってそうじゃなくて!
 
 「えーっと、その、ですね……前に崖から落ちたじゃない? それで死にかけた時にちょっと……」

 「「「あ゛っ」」」

 ライバルを直接知ってる元パーティと、死にかけてからずっとお世話になりっぱなしの『紫陽花』メンバーだけしかいないならともかく、現在地は招待してもらったベルンシュタイン公爵のお屋敷だ。必死で言葉を選びつつ、どうにかウソにはならないくらいの言い訳をすると、全員が一斉に小さくうめいた。さすが察しがよくて助かる。

 「……そっか、そういや大変だったもんなぁ。最近すっかり元気になったと思って、うっかりしてた」

 「彼岸に渡りかけたことで、生命力の一部と引き換えに新たな能力が開花する、という話は偶に聞き及びます。考えが及ばず申し訳ない」

 「あの、おれたち、なにか嫌なことを言ったりしたりしませんでしたか⁉」

 「う、ううん、大丈夫。全然平気だから」

 口々に謝られて気遣われてしまって余計に申し訳ない。まさか憑依トリップとか魂半分ことかの件をオープンに話すわけにいかないし、しょうがないっていえばそうなんだけど、

 《……ううん、皆さんのお人が良いだけに心が痛むわね……》

 (ほんとそれー!!!)

 脳内通信で返ってきたガワの人のぼやきに、全力で心のこぶしを握り締めたわたしだった。

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