デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします

古森真朝

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第五章:

たそがれの速さはどれくらい④

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 シェーラさんと同じ頃に冒険者として活躍してたなら、大体年齢も同じくらいだろうし、わたしたちくらいの子供がいたっておかしくない。男の子か、それとも女の子か。奥さんにはまだ会ったことがないけど、どっちに似ても絶対綺麗でかっこいいだろうなーという確信がある。だってお父様も素敵だもんなぁ。

 というかその子、一体今までどこにいたんだ。生き別れってことは突然いなくなってしまったんだろうけど、それって意地の悪い魔女かなんかに誘拐されてないか。そしてどこか深い森の中にある、出入り口のないひたすら高い塔の上に幽閉されて育ってないか。手のひらサイズのカメレオンがお友達で、毎朝長~い髪を梳かしながら綺麗な声で歌ってたりしないか!?

 『……どちらかなーといいつつ、いつの間にか女性で確定していない? というか、特定の誰かを想像してない??』

 (あ、ばれた?)

 身分の高い人の子どもがさらわれて十年以上たって再会、ってシチュエーション、何気に好きな某夢の国アニメのひとつにそっくりだったからつい……

 しかしまあ、そんなわたしのシュミは置いといてだ。離宮から連絡が来た直後にこの話題ってことは、今あっちにいる誰かが関わっていると思うのが自然だろう。となると、

 (リュシーかな、やっぱり)

 『わたくしもそう思うわ。あの子が暮らしていた村って、ランヴィエルの東南の国境沿いにあったし』

 (確か山を下りてちょっと行くと、りっくんとこのお父さんの領地なんだっけ?)

 『よく覚えていたわね、その通りよ。彼があそこで暮らしていたのは、お母様のご実家の采配だったそうだけれどね』

 (すぐ近所に雲隠れしてきた元彼の実家があるとか、気が休まらなかっただろうな、りっくんのお母さん……)

 『ええ。まさかそんな近くにお連れ合いがいたとは、伯爵の方も思わなかったそうだけれど。――あの村は四方を山に囲まれていて、人の出入りがほとんどないわ。どんな目的があったにせよ、他人から隠しておくには絶好の場所ね』

 うん、ほんとそれ。なんせ国境をまたいですぐのとこにあるという都合の良すぎる立地だ、実家側でも必死で探していただろうし、その追っ手を撒きつつ身を潜めるには絶好のロケーションだろう。……ただ、わからないのがその目的だ。

 リュシーの持っている光魔法は、『エトクロ』のストーリーが始まるときに女神さまからもらったものだ。光属性はランヴィエルで本当に珍しくて、しかも浄化魔法に至っては魔族に使うとすべてクリティカルダメージになる。本編中では何度もお世話になったもんだ。けど、

 (あれって生まれた時からわかってたわけじゃないんだよね? わざわざある日突然、って前置きがあったし)

 『そう、彼女が国を救うと、前もって予言があったわけでもない。だから養い親として恩恵にあずかることを狙った、という線はなさそうね。
 第一、あの子は自分を天涯孤独だと思っていたもの。わざわざ命がけで誘拐して、その後ずっと放っておいたということ? それこそ意味が分からないわ』

 だよね、うん。

 ここのお邸はひたすら広くて、お邪魔して日が浅いわたしにはどこに何があるかすらわからない。けど正面にある門のところとか、建物の奥に向かう廊下の途中とか、お揃いの武防具で身を固めた警備のひとがばっちり監視していたのを覚えている。

 もしもここから、いつ泣き出すかわからない生まれたての赤ちゃんとか、同じく小さな子供とかを連れ出そうとしたら、よっぽど運が良くなければ無理だ。それこそわたしの好きな話の冒頭みたいに、森を越えようが山に入ろうがひたすら追跡されてとっ捕まるだろう。

 ……もちろんこれ、生き別れの原因が『第三者の誘拐』って前提の推理だ。まさかあの公爵さんが自分から子どもさんを手放すとか、危ない目に遭わすとかは、ちょっと想像できないけども。

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