デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします

古森真朝

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第五章:

ホーム・スイート・ホーム?②

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 ――改めて確認することでもないけど、わたしは声のきれいな人に弱い、と思う。

 男性女性関係なく、この人の声が好きだなーと思ったキャラクターはまず間違いなく推しになる。逆に声が好きじゃなかったばかりに感情移入できなくて、せっかく応援していたマンガとかが映像化した時にしょんぼりしたり、最悪そのままお別れしてしまったり……なんてこともあった。

 そんな中『エトクロ』は、ほぼ全員がイメージとキャラ設定にぴったりのキャスティングをしてあって、全くのノーストレスで楽しくプレイできたというありがたい作品だった。

 むしろ、他のゲームでめちゃくちゃいいひとの役だった声優さんが、プレイヤー総出で嫌われるほどイヤ~な役柄を見事に演じ切ってたので全然気付かなくて、ラストのスタッフロールで発見して『役者さんて凄いな!?』って本気で驚いたくらいだ。

 で、そのイヤ~な役というのが、何を隠そう我が最推しの身内だったりする、わけなんだけど……

 「……えーっと、今のってまさか……」

 『…………ごめんなさい。そのまさかだと思うわ』

 声質はきれいだったせいで、キャラ自体は嫌いだけどすっかり覚えてしまっていた。普通に会うのだって嫌なのに、こんな人外魔境ではなおのこと会いたくない。とりあえず、なぜか脳内で謝ってくるアンリエットのせいでないことだけは確かだけど。

 とにかくこのままではらちが明かないので、覚悟を決めてぱっと振り返った。すると、

 「えっ、白髪染めた!?」

 『待って! 第一声がそれでいいの!?』

 「……、開口一番でそれか。崖から落ちた衝撃で頭までおかしくなったか?」

 相変わらず冷たい口調だが、すぐさま言い返せなかった辺り、しょっぱなのジャブがそこそこ効いたらしい。

 オールバックにした黒っぽい髪に口ひげ、やっぱり同じ色合いをした切れ長の瞳で、彫りが深く目鼻立ちのくっきりしたナイスミドル……なんだけど。徹底的な貴族階級至上主義、なおかつ現代っ子に間違いなく嫌われる『子供を頭ごなしに否定するイヤミな親父』というキャラクターだ。

 ジョナス・デュ・ラ・マグノーリア侯爵。ランヴィエルでも指折りの名門貴族現当主にして、残念ながら(ここにアンダーラインを引いて欲しい)わたしのガワの人・アンリエットの父親である。……ていうか、

 「いや、だって。こないだまで銀髪だったのに、いきなり真っ黒になってたらふつうそう思うでしょ? あっちこそ箔付けるためにわざと白っぽくしてた、ってケースもあり得るけど」

 「品性のかけらもない発想だな。市井に追いやられた一族の恥さらしに相応しいわ」

 「あー、怒ったってことはわざと染めてた派か。背はそこそこ高いけど、迫力とか風格とかが全ッ然足りてないもんね~、おとーさま??」

 「っ、この、口の減らん小娘が……!」

 全力でイヤミをスルーした上で倍返しされて、侯爵のこめかみらへんにみしっと青筋が浮かんでいる。ふん、ざまあみろ。

 ゲーム中に出てくるたびに、娘さんを嫌味で生き埋めにする気かってくらいの毒舌を吐いていたこのおっさん。他は全く、絶対、断じて似てないけど、きれいな銀髪だけはアンリエットとそっくりだった。

 髪以外の見た目と中身は、彼女が生まれてすぐ亡くなったっていうお母さんに似たに違いない、ともっぱらの評判だったし、わたしなんかは一つでも似てる部分があるのが許せなくて、プレイしながら文句という名の呪詛をぶつぶつ吐きまくったものだ。いやー、まさか面と向かって言ってやれる日が来ようとは!

 『そ、そんなに嫌われていたのね……貴女って本当に物怖じしないというか、言行一致しているというか……』

 (えっほんと? そんなに褒められると照れるな~)

 『……褒めているのかしら? これ』

 天然ボケとはよく言われたけど、そんなカッコいい言葉をもらったのは初めてでちょっと照れくさい。当のアンリエットは身内が嫌われてるせいか、声の調子が微妙な感じだったが。ちょっぴり申し訳ない。

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