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10 勇者VS魔王

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 サシャと魔王が対面し、少し打ち解けると今後の話に移る。

「サシャ様も魔族に力を貸していただけると有り難いのですが……」
「う~ん……報酬はなんだしぃ?」
「報酬ですか……魔族に誇れる物は、野菜と果物しかないので、サシャ様を喜ばせる事が出来るかどうか……」
「野菜? 果物?? 伝説の武器や防具はないの!?」
「はい……」

 報酬の話に移ると、サシャは驚く事となった。そりゃ、一番に来た報酬が野菜と果物では文句があるのだろう。

「ちなみに、兄貴の報酬はなんだしぃ?」
「えっと……私をめとると言う事になっています」
「はあ!? あんたそれでいいの!?」
「はい。でも今は、妹としか見てもらえていないんですけどね」

 勇者の報酬の話になると、初耳の者が噛み付く。

「ま、魔王殿! 勇者殿と結婚するのか!?」
「アニキと結婚なんて聞いてないわ!」

 姫騎士とコリンナだ。

「言ってませんでしたけど、そういう契約になっていますから、間違いなく結婚しますよ」

 そして魔王はのほほんと恥ずかしい答えを口走る。

「ちょっと待て! 勇者殿は魔王殿を妹としか見てないじゃないか」
「そうよ。俺にも好きじゃないって言っていたわ。それで結婚なんて出来ないでしょ!」
「ですから、契約なんですから結婚しますぅぅ!!」

 三人で勇者を取り合う事態となり、しばらく喧嘩が続くが、それを黙って聞いていたサシャからゴゴゴゴと怒りの音が聞こえて来て、三人は「ハッ」として振り返る。

「報酬は決まったしぃ! この世界で兄貴の結婚は誰ともさせないしぃ!!」
「「「え……」」」
「とくに魔王! あんただけは絶対阻止するしぃ!!」
「な、なんでですか!」
「ウチとそっくりな巨乳が、兄貴とイチャイチャしてるところを見たら寒気がするしぃ! だから、近付くのも禁止だしぃ!!」
「そんな~」

 サシャの剣幕に押され、魔王は情けない声を出す。でも、巨乳は言わなくてもよかったのでは……。あ、自分が小さいからか。
 魔王が脱落すると、残された二人はチャンスと見たのか、サシャに意見する。

「それなら、私は問題ないだろう?」
「オレも似てないから、大丈夫でしょ?」
「兄貴がモテてる姿も気持ち悪いしぃぃぃ!!」
「「そんな~」」

 どうやらサシャは、勇者が幸せになること事態に腹が立つようだ。姫騎士もコリンナも情けない声を出し、はたから見ていた四天王の三人は、小さくガッツポーズをしていた。魔王ファンクラブのおっさんは、よほど嬉しかったのだろう。

 そんな中、冷静にそのやり取りを見ていたヨハンネスがよけいな事を口走る。

「なんだかんだで、サシャはブラコンなんだな……ヒッ!」
「死にたいみたいだしぃ……」
「ごめんなさい、ごめんなさい……」

 ヨハンネスは、サシャの目にも止まらぬ抜刀で首筋に刀を押し付けれれ、へにゃへにゃと謝る。よけいな事を言うから悪いのだ。


 この場に居たほとんどの者がサシャに屈服したその時、会議室の扉が開き、勇者が入って来た。

「ふぁ~。いい夢みたな~」

 寝惚け眼で目をこする勇者は、今日の出来事を夢だと思っているようだ。しかし、現実は目の前にある。

「わ! サシャが二人もいる!! これは……ハーレム展開か!?」

 いや、ハーレムは同一人物が二人いる事ではない。そんな事もわからないとは、まだ夢の中に居るようだ。

「何がハーレムだしぃぃぃ!!」

 サシャは素早く動いて勇者にハグ。

「プシュー!」

 ただそれだけで絶大な威力となり、勇者はノックアウト。勇者にしか効かない攻撃だが……

「うぅぅ……初めて兄貴を倒した……」

 サシャ、初体験の勝利で涙を……

「さぶイボ出てるしぃ! 痒いしぃぃ! 気持ち悪いしぃぃぃ!!」

 どうやら後悔して涙が出たようだ。ひとまず勇者は、四天王に運ばれて寝室で休ませる。そうして身体中を掻きまくっていたサシャは、勇者の処置を話し合う。

「ウチは兄貴と会いたくないから、見付からないように滞在するしぃ。だから、こことは違う家を用意してくれしぃ」
「……わかりました」

 魔王は少し考えて、それならサシャに見られる事はないかと返事をする。

「でも、兄貴とイチャイチャしてたら、わかっているしぃ?」
「「「はい……」」」

 釘を刺された魔王、姫騎士、コリンナは、目論見が外れたのか、しゅんとして返事をするのであった。

 こうして勇者ハーレム計画はサシャに潰され……もとい、勇者サシャ来襲の一日は終わりを告げるのであった。

「なんだかつまんなくなったわね」

 オッサン妖精女王のテレージアには、物足りない未来が始まるのであった。
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