攻撃の出来ない勇者は誰が為に拳を振るう・・・

ma-no

文字の大きさ
107 / 187
10 勇者VS魔王

106

しおりを挟む
 サシャと魔王が対面し、少し打ち解けると今後の話に移る。

「サシャ様も魔族に力を貸していただけると有り難いのですが……」
「う~ん……報酬はなんだしぃ?」
「報酬ですか……魔族に誇れる物は、野菜と果物しかないので、サシャ様を喜ばせる事が出来るかどうか……」
「野菜? 果物?? 伝説の武器や防具はないの!?」
「はい……」

 報酬の話に移ると、サシャは驚く事となった。そりゃ、一番に来た報酬が野菜と果物では文句があるのだろう。

「ちなみに、兄貴の報酬はなんだしぃ?」
「えっと……私をめとると言う事になっています」
「はあ!? あんたそれでいいの!?」
「はい。でも今は、妹としか見てもらえていないんですけどね」

 勇者の報酬の話になると、初耳の者が噛み付く。

「ま、魔王殿! 勇者殿と結婚するのか!?」
「アニキと結婚なんて聞いてないわ!」

 姫騎士とコリンナだ。

「言ってませんでしたけど、そういう契約になっていますから、間違いなく結婚しますよ」

 そして魔王はのほほんと恥ずかしい答えを口走る。

「ちょっと待て! 勇者殿は魔王殿を妹としか見てないじゃないか」
「そうよ。俺にも好きじゃないって言っていたわ。それで結婚なんて出来ないでしょ!」
「ですから、契約なんですから結婚しますぅぅ!!」

 三人で勇者を取り合う事態となり、しばらく喧嘩が続くが、それを黙って聞いていたサシャからゴゴゴゴと怒りの音が聞こえて来て、三人は「ハッ」として振り返る。

「報酬は決まったしぃ! この世界で兄貴の結婚は誰ともさせないしぃ!!」
「「「え……」」」
「とくに魔王! あんただけは絶対阻止するしぃ!!」
「な、なんでですか!」
「ウチとそっくりな巨乳が、兄貴とイチャイチャしてるところを見たら寒気がするしぃ! だから、近付くのも禁止だしぃ!!」
「そんな~」

 サシャの剣幕に押され、魔王は情けない声を出す。でも、巨乳は言わなくてもよかったのでは……。あ、自分が小さいからか。
 魔王が脱落すると、残された二人はチャンスと見たのか、サシャに意見する。

「それなら、私は問題ないだろう?」
「オレも似てないから、大丈夫でしょ?」
「兄貴がモテてる姿も気持ち悪いしぃぃぃ!!」
「「そんな~」」

 どうやらサシャは、勇者が幸せになること事態に腹が立つようだ。姫騎士もコリンナも情けない声を出し、はたから見ていた四天王の三人は、小さくガッツポーズをしていた。魔王ファンクラブのおっさんは、よほど嬉しかったのだろう。

 そんな中、冷静にそのやり取りを見ていたヨハンネスがよけいな事を口走る。

「なんだかんだで、サシャはブラコンなんだな……ヒッ!」
「死にたいみたいだしぃ……」
「ごめんなさい、ごめんなさい……」

 ヨハンネスは、サシャの目にも止まらぬ抜刀で首筋に刀を押し付けれれ、へにゃへにゃと謝る。よけいな事を言うから悪いのだ。


 この場に居たほとんどの者がサシャに屈服したその時、会議室の扉が開き、勇者が入って来た。

「ふぁ~。いい夢みたな~」

 寝惚け眼で目をこする勇者は、今日の出来事を夢だと思っているようだ。しかし、現実は目の前にある。

「わ! サシャが二人もいる!! これは……ハーレム展開か!?」

 いや、ハーレムは同一人物が二人いる事ではない。そんな事もわからないとは、まだ夢の中に居るようだ。

「何がハーレムだしぃぃぃ!!」

 サシャは素早く動いて勇者にハグ。

「プシュー!」

 ただそれだけで絶大な威力となり、勇者はノックアウト。勇者にしか効かない攻撃だが……

「うぅぅ……初めて兄貴を倒した……」

 サシャ、初体験の勝利で涙を……

「さぶイボ出てるしぃ! 痒いしぃぃ! 気持ち悪いしぃぃぃ!!」

 どうやら後悔して涙が出たようだ。ひとまず勇者は、四天王に運ばれて寝室で休ませる。そうして身体中を掻きまくっていたサシャは、勇者の処置を話し合う。

「ウチは兄貴と会いたくないから、見付からないように滞在するしぃ。だから、こことは違う家を用意してくれしぃ」
「……わかりました」

 魔王は少し考えて、それならサシャに見られる事はないかと返事をする。

「でも、兄貴とイチャイチャしてたら、わかっているしぃ?」
「「「はい……」」」

 釘を刺された魔王、姫騎士、コリンナは、目論見が外れたのか、しゅんとして返事をするのであった。

 こうして勇者ハーレム計画はサシャに潰され……もとい、勇者サシャ来襲の一日は終わりを告げるのであった。

「なんだかつまんなくなったわね」

 オッサン妖精女王のテレージアには、物足りない未来が始まるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...