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連載
ウェブ版鍛冶見習い100・『霧の森』の宝箱
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前回のあらすじ・キャンプでマリル兄ちゃんの作った夕飯を食べた。
翌朝。
寝不足気味で不機嫌なユーリにねだられて、再びハチミツがけのアケビを食べていると、昨日のベッジさんがやって来た。
ユーリが寝不足なのは、もちろん、隣のテントのテリテおばさんのイビキのせいだ。
「なんや、それ、『くらやみハニー』か!?
自分らで食べよるなんて、なんてもったいない!
王都に運べは、一壺で切り餅一つ(25両)はくだらない代物でっせ!?
まだあるんやったら、わいに、わいに売ってんか!?」
「売るくらいなら自分で食べるに決まってるじゃん」
木のさじをくわえながら、ユーリが器用にあっかんべーとしている。
「かーっ、これだから子どもは。
それより、どこで手に入れはったん?
ここいらの暗闇バチは狩りつくして、今は幾つものパーティが連動して、地下五階のハチを少しずつおびき出しながら倒しとるとこや、っちゅーに」
「地下十階だよ」
「ハァ?
地下十?
からかっちゃあ、いけまへんわ。
地下十階言うたら、エリアボスのいる階層でっせ?
ベテラン冒険者が、パーティ単位で準備に準備を重ねて挑む階層や。
こんな坊ちゃん嬢ちゃん連れて、ピクニック気分で行って来られるとこと違うわ。
五階からは、文字通り『暗闇のダンジョン』やし。
まして、昨日の今日で往復してくるやなんて。
たいがいにしてや」
なるほど。
この階にハチはいなかった、と昨日ユーリたちが言っていたけど、事実だったのか。
「えー、ノア、冗談だったの?」
「うん、冗談冗談」
オイラは軽く流すものの、カウラがジト目で見ている。
うん、まあ、冗談じゃないけど。
「ところで、ベッジさん、何の用?」
「そや、わいが来たのはグレートボアの毛皮や。
まあ、ハチミツも売ってもらえたら有り難いんやけども。
ハチミツは、ここにおる冒険者でも何とか手に入れられるよって」
オイラはひとつ頷くと、少し離れた水場に顔を洗いに行っていた二人を呼ぶ。
テリテおばさんは、ハチミツ食べるとベチャベチャになるからね。
「おーい、テリテおばさーん、マリル兄ちゃーん!
昨日の商人のおっちゃんが来てるよーー」
「おっちゃんて。
……ん?
テリテ?」
ベッジさんが首をかしげる。
何かに気づき、それから自分の中で、寄せ木細工が組み上げられていくように目まぐるしく表情が変わっていく。
「なんだい、結局来たのかい?」
それが、テリテおばさんの顔を見た瞬間、かちーんとハマったようだ。
ベッジさんがあんぐりと口を開く。
「あーーーっ!
テリテて、『冬のテリテ』やったんか!
現役最強のSランク冒険者やないかいっ。
グレートボアかて狩れるはずやわっ」
つばを飛ばして喚き散らすベッジさんに、テリテおばさんとマリル兄ちゃんは、キョトンと顔を見合わせた。
「暗いよー。
目が慣れても全然見えないー」
さっきからぶつくさ言っているのは、相変わらずのユーリだ。
ミストタイガーにはご隠居と満月先生が乗って、今日のユーリとカウラは自力で歩いている。
とは言っても、何も案内がないと歩けもしないので、マリル兄ちゃんの服のすそをつかんでつながっている。
ブルさんは相変わらず自力で動いているけど、いざというときに王子王女を守らなきゃだそうで、マリル兄ちゃんが選ばれた。
暗いけれど、5階~9階は花畑エリアだ。
闇に咲く花の香りが辺りに広がり、転んでもさほど痛くない。
「何言ってるの、ユーリは魔力探知があるんだから、まだいいじゃないか」
「魔力探知で見えるのは人間と魔獣だけだよ。
壁とか足元のデコボコとかは見えないんだからー。
なんで魔法のランプとか使っちゃダメなのさー」
ユーリが言っているのは、魔道具ではなく、魔法で明かりを出す魔法だそうだ。
研究肌の魔法使いは、ほとんど全員使えるそうだ。
「虫ってのは、光に寄ってくる性質があるのさ。
この階層中のハチにたかられてもいいなら、使うがいいよ」
「むー。
テリテさんとノアがいれば、ハチにたかられても大丈夫じゃんか」
ぶーん、と鈍い音が幾つかして、続いてザシュっ、と音が続く。
近づいてきたハチの魔獣をテリテおばさんがぶった切ったようだ。
いくら暗闇でも、ここにいるのはほとんどがハチの魔獣。
羽音が派手な分、かなり楽だ。
「ハチの必殺技に、熱殺蜂球ってのがあるんだよ。
何十匹もで外敵を包んで、翅を動かす熱で蒸し焼きにするんだ。
普通の蜜蜂なら、スズメバチくらいなら殺せても、動物を殺すほどの高温にゃならないが、ここのは魔獣。
五十度は軽くいくね。
熱だけだったら何とか耐えられなくもないけど、熱殺蜂球の中は空気が薄くなる。
酸欠で気を失ってる間に蒸し焼きだ」
運よくドロップしたらしいハチミツの壺を、背嚢に放り込みつつ、テリテおばさんが淡々と説明してくれる。
「うわ何それ、えげつない」
「ハチだって必死。
こっちが外敵。
しょうがない」
暗くてユーリたちが見えないぶん、リリィがしゃべっている。
明るい内いっぱい、呆けた表情でユーリたちを見ているのはどうにかしてほしい。
「ほら、そうこうする内に、十階への階段だよ。
この先はどうするんだい、ノアちゃん?」
テリテおばさんが確認してくれる。
十階は、ほんのりと明るい仕様になっている。
十階からの階段から、わずかに光が漏れていた。
「うーん、そうだな。
ここのクイーンビーを倒したことがあるのは?
テリテおばさんと、ご隠居と満月先生?」
エリアボスというのは決まった部屋にいて、、一回倒すと、次に通る時には現れず、素通り出来る。
では、倒した人間と、倒したことのない人間が一緒に部屋へ入った場合、どうなるのか?
その場合、エリアボスは現れない。
この仕様が逆だった場合、強い冒険者が、新人(もしくは金で雇ったシロウト)を連れて行けば何度でもエリアボスと戦えるという裏技が成立してしまうわけで……
さらに言うなら、エリアボスにトドメを刺した本人でなくても、その時パーティを組んでいれば、次に一人で行ってもエリアボスは現れない。
つまりは、クイーンビーを倒したことのあるテリテおばさんたちと一緒に行けば、ユーリやカウラもエリアボスのフロアを素通り出来るわけだ。
(もちろん、普通のハチの魔獣は出るけど)
でも、この方法は、普通は使わないほうがいい。
エリアボスというのは、一種の試練だ。
エリアボスを倒せない実力の者が先に進んでも、実力不足で倒れることが多い。
「じゃあ、オイラ以外の皆で、先に進んでくれる?
オイラは、クイーンビーのローヤルゼリーをもう一個くらい入手したいし、次にドアが開いたら追いかけるから」
エリアボスの部屋というのは、普段は扉が開きっぱなしだけれど、パーティが中に入ると扉が閉まる。
中に先着のパーティがいる限り、次のパーティは入れない。
これもまた、エリアボスが出現している間に、エリアボスを倒したことのある冒険者が来たらどうなるのか?の答えと言えるだろう。
逆を言えば、エリアボスからは逃げられない。
倒さないと先に進めない、戻れない。
それがエリアボスだ。(普通は。)
オイラの場合、ローヤルゼリーをドロップするか倒すギリギリまで攻撃して、背後の転送魔方陣を踏み、次の階層へ行ってから戻っている。
戻るときには、エリアボスは出現しない。
どーいう仕組みになっているのか、さっきまで戦っていたはずのクイーンビーと兵隊蜂が、きれいさっぱりいなくなっている。
ひょっとして、同じ造りの別の部屋なのかも知れない。
「ちょっと待ってよ。
それって、僕たちが通った後に、ノアだけクイーンビーと戦うってこと?
さっきブルームに聞いたんだけど、ここって、十階を過ぎたらハチって出ないんでしょ?
しかも、エリアボスの部屋は薄暗いけど、なんとか見えるって言ってたよ?
最後のチャンスじゃん。
今まで、『くらやみハニー』一個も手に入ってないんだから」
確かに、ユーリは今朝からこっそり練習して、攻撃魔法もいくつか使えるようになっていた。
カウラも魔獣と戦いたがっていたようだけれど、結局ほとんど戦えていない。
片っ端から、テリテおばさんとブルさんが倒してしまっている。
「え?
じゃあ、ユーリもクイーンビーと戦いたいってこと?」
「クイーンビーはノアに任せるよ。
クイーンビーは、兵隊蜂と蜜蜂を連れてるんでしょ?
その蜜蜂だけ」
「また都合のいいこと言ってる。
でも、そうだな。
私も手持ち無沙汰だったんだ。
出来れば戦いたい」
カウラも乗り気なようだ。
「ちょ、ちょっと待っておくんなさい。
ユーリ様も、殿下も!
エリアボスってのは、そんな生易しいもんじゃ!」
「ブルさんは?
ここのクイーンビー倒したことある?」
「……ありやす」
ブルさんがしぶしぶと認める。
「じゃあ、ブルさんは先行組ね」
「だから待っておくんなさいって。
俺がクイーンビーを倒したときだって、かなりギリギリで!」
「倒す予定はないから」
「ああっ、そうだった!
って、そっちのほうがむしろ難易度高ぇんじゃ?」
一人で納得したり混乱したりしているブルさんの後ろから、マリル兄ちゃんとリリィが手を挙げる。
「じゃあ、俺も一緒に行くよ」
「リリも」
言うと思ったよ、マリル兄ちゃん。
「マリルも~?
まあ、盾くらいにはしてやるよ」
「ひどっ」
ユーリのマリル兄ちゃんへの過小評価が止まらない。
でも満更でもなさそうだし、まぁいいか。
先行組と後行組が決定しようとしたとき、不意にユーリが動いた。
「ねぇ、あれって宝箱じゃない?」
十階からのわずかにもれる光が届くかどうかのところに、鈍色の鋲がいくつもついた、茶色い木の箱が見えた。
四角い箱にカマボコ型のふた。
全身で宝箱を主張している。
「やった!
ダンジョンていえば宝箱だよねー!
ここに来て初めてだよ」
小走りに近づき、るんるんで蓋に手をかけたユーリが開けようと力をこめて……
「危ないっ!」
追いついたオイラが、ユーリに飛びつき、横抱きにユーリをひっかかえて転がった。
後書き
牛雑学?この前話題にしたプラセンタ(胎盤)の話を、女性ヘルパーさんにしたら、『食べるのは嫌ですけど、塗るくらいならなんとか!』と言ってました。おひとついかがでしょう。
ついに百話目!
兎にも角にも百話までは書いてみよう、と始めた鍛冶見習い。ここまで来られたのも読んでくださる皆様のおかげです。ありがとうございます!リクエスト、好きなキャラ、好きな場面など、ご意見・ご感想など頂けると嬉しいです!
翌朝。
寝不足気味で不機嫌なユーリにねだられて、再びハチミツがけのアケビを食べていると、昨日のベッジさんがやって来た。
ユーリが寝不足なのは、もちろん、隣のテントのテリテおばさんのイビキのせいだ。
「なんや、それ、『くらやみハニー』か!?
自分らで食べよるなんて、なんてもったいない!
王都に運べは、一壺で切り餅一つ(25両)はくだらない代物でっせ!?
まだあるんやったら、わいに、わいに売ってんか!?」
「売るくらいなら自分で食べるに決まってるじゃん」
木のさじをくわえながら、ユーリが器用にあっかんべーとしている。
「かーっ、これだから子どもは。
それより、どこで手に入れはったん?
ここいらの暗闇バチは狩りつくして、今は幾つものパーティが連動して、地下五階のハチを少しずつおびき出しながら倒しとるとこや、っちゅーに」
「地下十階だよ」
「ハァ?
地下十?
からかっちゃあ、いけまへんわ。
地下十階言うたら、エリアボスのいる階層でっせ?
ベテラン冒険者が、パーティ単位で準備に準備を重ねて挑む階層や。
こんな坊ちゃん嬢ちゃん連れて、ピクニック気分で行って来られるとこと違うわ。
五階からは、文字通り『暗闇のダンジョン』やし。
まして、昨日の今日で往復してくるやなんて。
たいがいにしてや」
なるほど。
この階にハチはいなかった、と昨日ユーリたちが言っていたけど、事実だったのか。
「えー、ノア、冗談だったの?」
「うん、冗談冗談」
オイラは軽く流すものの、カウラがジト目で見ている。
うん、まあ、冗談じゃないけど。
「ところで、ベッジさん、何の用?」
「そや、わいが来たのはグレートボアの毛皮や。
まあ、ハチミツも売ってもらえたら有り難いんやけども。
ハチミツは、ここにおる冒険者でも何とか手に入れられるよって」
オイラはひとつ頷くと、少し離れた水場に顔を洗いに行っていた二人を呼ぶ。
テリテおばさんは、ハチミツ食べるとベチャベチャになるからね。
「おーい、テリテおばさーん、マリル兄ちゃーん!
昨日の商人のおっちゃんが来てるよーー」
「おっちゃんて。
……ん?
テリテ?」
ベッジさんが首をかしげる。
何かに気づき、それから自分の中で、寄せ木細工が組み上げられていくように目まぐるしく表情が変わっていく。
「なんだい、結局来たのかい?」
それが、テリテおばさんの顔を見た瞬間、かちーんとハマったようだ。
ベッジさんがあんぐりと口を開く。
「あーーーっ!
テリテて、『冬のテリテ』やったんか!
現役最強のSランク冒険者やないかいっ。
グレートボアかて狩れるはずやわっ」
つばを飛ばして喚き散らすベッジさんに、テリテおばさんとマリル兄ちゃんは、キョトンと顔を見合わせた。
「暗いよー。
目が慣れても全然見えないー」
さっきからぶつくさ言っているのは、相変わらずのユーリだ。
ミストタイガーにはご隠居と満月先生が乗って、今日のユーリとカウラは自力で歩いている。
とは言っても、何も案内がないと歩けもしないので、マリル兄ちゃんの服のすそをつかんでつながっている。
ブルさんは相変わらず自力で動いているけど、いざというときに王子王女を守らなきゃだそうで、マリル兄ちゃんが選ばれた。
暗いけれど、5階~9階は花畑エリアだ。
闇に咲く花の香りが辺りに広がり、転んでもさほど痛くない。
「何言ってるの、ユーリは魔力探知があるんだから、まだいいじゃないか」
「魔力探知で見えるのは人間と魔獣だけだよ。
壁とか足元のデコボコとかは見えないんだからー。
なんで魔法のランプとか使っちゃダメなのさー」
ユーリが言っているのは、魔道具ではなく、魔法で明かりを出す魔法だそうだ。
研究肌の魔法使いは、ほとんど全員使えるそうだ。
「虫ってのは、光に寄ってくる性質があるのさ。
この階層中のハチにたかられてもいいなら、使うがいいよ」
「むー。
テリテさんとノアがいれば、ハチにたかられても大丈夫じゃんか」
ぶーん、と鈍い音が幾つかして、続いてザシュっ、と音が続く。
近づいてきたハチの魔獣をテリテおばさんがぶった切ったようだ。
いくら暗闇でも、ここにいるのはほとんどがハチの魔獣。
羽音が派手な分、かなり楽だ。
「ハチの必殺技に、熱殺蜂球ってのがあるんだよ。
何十匹もで外敵を包んで、翅を動かす熱で蒸し焼きにするんだ。
普通の蜜蜂なら、スズメバチくらいなら殺せても、動物を殺すほどの高温にゃならないが、ここのは魔獣。
五十度は軽くいくね。
熱だけだったら何とか耐えられなくもないけど、熱殺蜂球の中は空気が薄くなる。
酸欠で気を失ってる間に蒸し焼きだ」
運よくドロップしたらしいハチミツの壺を、背嚢に放り込みつつ、テリテおばさんが淡々と説明してくれる。
「うわ何それ、えげつない」
「ハチだって必死。
こっちが外敵。
しょうがない」
暗くてユーリたちが見えないぶん、リリィがしゃべっている。
明るい内いっぱい、呆けた表情でユーリたちを見ているのはどうにかしてほしい。
「ほら、そうこうする内に、十階への階段だよ。
この先はどうするんだい、ノアちゃん?」
テリテおばさんが確認してくれる。
十階は、ほんのりと明るい仕様になっている。
十階からの階段から、わずかに光が漏れていた。
「うーん、そうだな。
ここのクイーンビーを倒したことがあるのは?
テリテおばさんと、ご隠居と満月先生?」
エリアボスというのは決まった部屋にいて、、一回倒すと、次に通る時には現れず、素通り出来る。
では、倒した人間と、倒したことのない人間が一緒に部屋へ入った場合、どうなるのか?
その場合、エリアボスは現れない。
この仕様が逆だった場合、強い冒険者が、新人(もしくは金で雇ったシロウト)を連れて行けば何度でもエリアボスと戦えるという裏技が成立してしまうわけで……
さらに言うなら、エリアボスにトドメを刺した本人でなくても、その時パーティを組んでいれば、次に一人で行ってもエリアボスは現れない。
つまりは、クイーンビーを倒したことのあるテリテおばさんたちと一緒に行けば、ユーリやカウラもエリアボスのフロアを素通り出来るわけだ。
(もちろん、普通のハチの魔獣は出るけど)
でも、この方法は、普通は使わないほうがいい。
エリアボスというのは、一種の試練だ。
エリアボスを倒せない実力の者が先に進んでも、実力不足で倒れることが多い。
「じゃあ、オイラ以外の皆で、先に進んでくれる?
オイラは、クイーンビーのローヤルゼリーをもう一個くらい入手したいし、次にドアが開いたら追いかけるから」
エリアボスの部屋というのは、普段は扉が開きっぱなしだけれど、パーティが中に入ると扉が閉まる。
中に先着のパーティがいる限り、次のパーティは入れない。
これもまた、エリアボスが出現している間に、エリアボスを倒したことのある冒険者が来たらどうなるのか?の答えと言えるだろう。
逆を言えば、エリアボスからは逃げられない。
倒さないと先に進めない、戻れない。
それがエリアボスだ。(普通は。)
オイラの場合、ローヤルゼリーをドロップするか倒すギリギリまで攻撃して、背後の転送魔方陣を踏み、次の階層へ行ってから戻っている。
戻るときには、エリアボスは出現しない。
どーいう仕組みになっているのか、さっきまで戦っていたはずのクイーンビーと兵隊蜂が、きれいさっぱりいなくなっている。
ひょっとして、同じ造りの別の部屋なのかも知れない。
「ちょっと待ってよ。
それって、僕たちが通った後に、ノアだけクイーンビーと戦うってこと?
さっきブルームに聞いたんだけど、ここって、十階を過ぎたらハチって出ないんでしょ?
しかも、エリアボスの部屋は薄暗いけど、なんとか見えるって言ってたよ?
最後のチャンスじゃん。
今まで、『くらやみハニー』一個も手に入ってないんだから」
確かに、ユーリは今朝からこっそり練習して、攻撃魔法もいくつか使えるようになっていた。
カウラも魔獣と戦いたがっていたようだけれど、結局ほとんど戦えていない。
片っ端から、テリテおばさんとブルさんが倒してしまっている。
「え?
じゃあ、ユーリもクイーンビーと戦いたいってこと?」
「クイーンビーはノアに任せるよ。
クイーンビーは、兵隊蜂と蜜蜂を連れてるんでしょ?
その蜜蜂だけ」
「また都合のいいこと言ってる。
でも、そうだな。
私も手持ち無沙汰だったんだ。
出来れば戦いたい」
カウラも乗り気なようだ。
「ちょ、ちょっと待っておくんなさい。
ユーリ様も、殿下も!
エリアボスってのは、そんな生易しいもんじゃ!」
「ブルさんは?
ここのクイーンビー倒したことある?」
「……ありやす」
ブルさんがしぶしぶと認める。
「じゃあ、ブルさんは先行組ね」
「だから待っておくんなさいって。
俺がクイーンビーを倒したときだって、かなりギリギリで!」
「倒す予定はないから」
「ああっ、そうだった!
って、そっちのほうがむしろ難易度高ぇんじゃ?」
一人で納得したり混乱したりしているブルさんの後ろから、マリル兄ちゃんとリリィが手を挙げる。
「じゃあ、俺も一緒に行くよ」
「リリも」
言うと思ったよ、マリル兄ちゃん。
「マリルも~?
まあ、盾くらいにはしてやるよ」
「ひどっ」
ユーリのマリル兄ちゃんへの過小評価が止まらない。
でも満更でもなさそうだし、まぁいいか。
先行組と後行組が決定しようとしたとき、不意にユーリが動いた。
「ねぇ、あれって宝箱じゃない?」
十階からのわずかにもれる光が届くかどうかのところに、鈍色の鋲がいくつもついた、茶色い木の箱が見えた。
四角い箱にカマボコ型のふた。
全身で宝箱を主張している。
「やった!
ダンジョンていえば宝箱だよねー!
ここに来て初めてだよ」
小走りに近づき、るんるんで蓋に手をかけたユーリが開けようと力をこめて……
「危ないっ!」
追いついたオイラが、ユーリに飛びつき、横抱きにユーリをひっかかえて転がった。
後書き
牛雑学?この前話題にしたプラセンタ(胎盤)の話を、女性ヘルパーさんにしたら、『食べるのは嫌ですけど、塗るくらいならなんとか!』と言ってました。おひとついかがでしょう。
ついに百話目!
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