【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)

高瀬ユキカズ

文字の大きさ
127 / 552
新しいダンジョン

第127話 特殊部隊と合流する

しおりを挟む
 倒しても、倒しても、やせ細った亡霊は出現してくる。360度、全方位から襲われるのはたまらない。少しでも安全な合流ポイントを決める必要があった。

 大岩で囲まれていて、モンスターが襲ってくる方向が制限される場所を探した。そこを待ち合わせ場所に指定する。

 ほどなくして12人の軍人が現れた。迷彩服を着て、ライフル銃を肩に背負っている。ハンドガンやマシンガンを持っている者もいた。怪我人もいるようだ。怪我をしている2人は別の軍人に肩を抱きかかえられていた。

 迷彩服の柄が異なっているので、6人ずつの2チームのようだ。アメリカとロシアということだろう。

 1人の軍人が前に出て、片手を上げた。

「グレゴリー・オロゴンだ。このチームのリーダーを任されている」

 握手の手を差し出してきたので、私はその手を取った。ごつごつして固く、がっしりとした手だった。肌が黒いのでアフリカ系だろうか。年齢は30歳前後に見えた。腕や足はかなり太かった。鍛え抜かれた肉体であることは間違いない。

 次にグレゴリーは瑞稀社長と握手した。

「よく私たちと共闘する気になったわね。やけに決断が早かったようだけれど」

 ここまで落ち着いていた瑞稀社長だったが、彼らを警戒している様子だった。

「出口も見つからない。亡霊は次々に襲ってくる。2人の怪我人が出てしまった。全滅するのは火を見るよりも明らかだった。これしか選択はなかったのだ」

 英語でしゃべるグレゴリーの言葉はダンジョンデバイスが翻訳している。ダンジョンデバイスを使っているということはグレゴリーもハンターなのだろう。

「すぐにあなたがたを信用できるものではない、ということはわかるわよね」

 社長は低い声で強い口調だった。グレゴリーは頷く。

「私は全権を委任されている。この状況は我々にとって作戦の失敗を意味する。いわば、君たちの捕虜となったと考えてもらいたい。君たちの知りたい情報は話そう」

「本当かしら。話せないこともあるでしょう?」

「信用してもらえないのも当然だろう。だが、事態は君たちが考えているよりもかなり悪い状況かもしれない。我々にとっては最悪のケースなのだ。だからこそ、こうして君たちの前に姿を見せた」

 その時、銃声が響く。
 ここは大岩で囲まれてはいるが、当然、亡霊はやってくる。軍人の一人がハンドガンで亡霊の頭を撃った。

「あまり悠長にしていられないわね。とりあえず、少しでも安全を確保しましょう」

「我々で防衛網を作る。おそらく話を聞きたいのだろう? 安全を確保して話をしよう。我々は情報を提供する。見返りとして、このダンジョンから帰して欲しい。どうだろうか?」

「まあ、それは春菜ちゃん次第ね。あなたたちは見返りを要求できるような立場じゃないかもしれないわ」

 瑞稀社長は私たちの優位性を意識して会話をしているようだ。世界的企業の社長だけあって、肝が座っているし、交渉も得意なのだろう。

 私は手に持っていたダンジョンタブレットに顔を向ける。

「ここは私が作り出したダンジョンです。今はまだ出る方法がわかっていませんが」

 ダンジョンタブレットに向けて話しかける。

「タブレットさん、私ならみんなをダンジョンから出せるよね?」

『――もちろんだ。我があるじだけがそれを可能にする。ここはあるじが頂点に君臨すべき場所なのだ。ダンジョンがそれを理解すれば、あるじはこのダンジョンにおいて、絶対的な存在となるであろう』

 グレゴリーの仲間が3人ずつ、合計6人が2方向を守ることになった。今はまだ銃弾が残っているようだが、弾がなくなる前に今後の方針を決めなければいけない。

「ところで、そちらに回復士ヒーラーはいるだろうか?」

 グレゴリーが私たちを見る。私は魔法を使えないし、瑞稀社長とSPはダンジョンハンターですらない。

「ポーションならありますが」

 私が応えると、

「すでに2人が負傷し、戦闘できる状態にはない。治癒ポーションは我々も持っているが、回復に時間がかかる。どうやらここはモンスターハウスのようだ。出現するモンスターの数が多すぎる。治癒魔法でないと追いつかないだろう」

 魔法は木火土金水をベースにした5つの系統があり、それぞれプランツ、フレイム、アース、アクア。そしてメタルだ。

 回復魔法や治癒魔法はアクア属性がもっとも得意としている。次にプランツ属性だ。フレイム属性は攻撃に特化した属性であり、アースは攻撃と防御の万能系になる。

「そちらにも回復士ヒーラーがいないということですよね? ハンターは何人いるのですか?」

 私がグレゴリーに訊ねたが、どうもこの質問はよくなかったようだ。瑞稀社長がグレゴリーに気づかれないように、私の足に触れて合図を送ってきた。
 おそらく「そちらは全員がハンターですね?」のように訊ねるべきだったのだ。
 瑞稀社長とSPの男性はハンターではない。こちらの情報を相手に教える必要はないのだ。

「我々は全員がダンジョンハンターだ。もちろん、日本の事務局には所属していない。それぞれ自国の――アメリカとロシアの非公式な事務局に所属している」

「やはり、アメリカとロシアにもダンジョンがあるのね?」

 瑞稀社長は呆れたように言った。

「ああ」

「そんなにあっさり話していいの? 国家レベルの機密でしょう?」

「話すべきだと思ったので伝えた。実は我々の状況は逼迫している。我々の目的を伝えていなかったな。今回、ミリアを確保し、ロシアに輸送する手はずになっていた。どうしてもミリアが必要だったのだ」

「ミリアを誘拐しようとしていたのね? 私たちを殺してでも」

「それだけ状況は切迫しているのだ。もう、決して君たちに危害は加えないと約束しよう。それが条件だったはずだ。条件は必ず守る」

 信用して欲しいといった様子でグレゴリーが深く頭を下げた。

「そんなことよりも、国を揺るがすほどの、なにかが起こっている? それはロシア国内で? それともダンジョンで?」

 瑞稀社長の目つきが鋭くなった。
 私でもわかるほどに、グレゴリーの困惑が見て取れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ありふれた聖女のざまぁ

雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。 異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが… 「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」 「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」 ※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...