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新しいダンジョン
第128話 グレゴリーに話を聞く
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グレゴリーは語りだす。
「アメリカ、ロシア、日本。この3国以外にも世界中にはいくつかダンジョンが存在している。我々が問題視しているのは中東にあるダンジョンだ。正確な場所まではわかっていない。所在地の候補として挙がっているのは、カタール、クウェート、イスラエル、あるいはエジプトだ。厄介なことに国が管理するのではなく、民間人の組織が所有している」
「テロリストってこと?」
瑞稀社長が訊ねると、グレゴリーは肩をすくめた。
「どうだかな。彼らは自分たちのことをそうは思っていなかっただろう」
「思っていなかったって、過去形ね。テロリストのようなことをしたわけね」
「ダンジョンの入口は人工衛星で確認するには小さすぎる。アメリカとロシアが中東にあるダンジョンの存在を確信したのは、とある工場にダンジョン製のアイテムが持ち込まれていることを突き止めたからだ。それは偶然だった。トラックが事故を起こし、積み荷からアイテムが発見されたのだ。諜報員からその情報を聞いた我々は驚愕した」
「アイテムのレア度が予想を超えていた、というところかしら?」
「察しがいいな。そうだ。大国であるアメリカ。我が国は巨額を注ぎ込み、国はダンジョンの探索をしていた。だが、彼らのほうが先を行っていた。恐らくは我々よりも先にダンジョンを見つけていた。彼らはダンジョンにおいては先駆者だったわけだ」
「まさか、あなたたちでは太刀打ちできないほどの強さになってしまっていた?」
「それに近いな。民間人の組織が1国家を超える軍事力を手にしてしまったのだ。ダンジョンの資源を使うことによって」
「そして、アメリカはロシアと手を組み、その組織を敵に回してしまった。そんなところかしら?」
「敵に回したのではない。アメリカとロシアは彼らと戦争をしたいわけではない」
「まさか、向こうが戦争を仕掛けてきた? そんなこと……」
「直接的な戦争ではない。3日前。アメリカのロサンゼルス、そしてロシアのサンクトペテルブルクにあるダンジョンの入口。それが彼らに占拠された。おそらく彼らの目的はダンジョンの占有にある」
「1つしかない大事なダンジョンを奪われちゃったってわけね。しかも向こうはさらに強力な軍事力を手にする。そうなったら、大国といえども存亡の危機ね」
グレゴリーはミリアを指さした。ミリアはグレゴリーの仲間といっしょに亡霊と戦っている。
「彼女は攻撃力を持たない。レベル173のモンスターといえども、我々は確保できるだろうと考えた。目隠しをし、スキルを使えないようにして、アメリカに輸送するつもりだった」
「直接、頼む気はなかったの? 日本政府かダンジョン管理協会に」
「それができない理由があったのだ」
「どんな理由があったにせよ、ミリアを誘拐して、盾として利用しようとしたのよね? 奪われたダンジョンを取り戻すために。まるでダンジョン戦争ね。石油のように資源だと考えているの?」
瑞稀社長は呆れるような口調で言った。
「このままだと、民間人の組織にダンジョンを支配されることになる。やがて彼らは強大な軍事力を手にしてしまうだろう。そうなっては遅いのだ」
「だから、それは国の都合よね。アメリカやロシアがなくなって、民間人の組織が世界を統治するということになるのかしらね」
瑞稀社長の言葉には皮肉がこもっていた。
グレゴリーは苦笑いを浮かべる。
「彼らの名前を教えておこう。秘密結社アルトリアス。表向きは会社組織だが」
それを聞いて瑞稀社長の顔は歪んだ。まるで苦虫を噛んだような顔だ。
「私がデバイスリンク・テクノロジーズの社長だということはご存知? アルトリアスはライバル会社よ。というよりも、名前を聞きたくないくらいに嫌いな会社」
「ああ、知っている。知っていたからこそ、伝えたのだ」
「だからといって、私が協力するとでも思ったの?」
「ああ、思ったさ。恐らくは協力せざるを得ないだろうな。我々は運が良かったかもしれない。だが、それもこの長瀞ダンジョンから出ないと何も始まらない」
グレゴリーは私のほうを見た。
「筑紫春菜さん。アメリカとロシアを代表してお願いします。ここから無事に出していただき、そして我が国を助けていただけませんでしょうか?」
グレゴリーは腰を深く折って頭を下げていた。
だが、瑞稀社長は機嫌が悪そうだった。
「厚かましいお願いね。自分たちは捕虜のようなものと言っておきながら、ミリアをアメリカに連れて行くことを全然諦めていないわね」
私はそんな瑞稀社長をなだめた。
「まあまあ、とにかくここから出ないことには何もできないわけですから。まずは出ることに専念しましょう」
「アメリカ、ロシア、日本。この3国以外にも世界中にはいくつかダンジョンが存在している。我々が問題視しているのは中東にあるダンジョンだ。正確な場所まではわかっていない。所在地の候補として挙がっているのは、カタール、クウェート、イスラエル、あるいはエジプトだ。厄介なことに国が管理するのではなく、民間人の組織が所有している」
「テロリストってこと?」
瑞稀社長が訊ねると、グレゴリーは肩をすくめた。
「どうだかな。彼らは自分たちのことをそうは思っていなかっただろう」
「思っていなかったって、過去形ね。テロリストのようなことをしたわけね」
「ダンジョンの入口は人工衛星で確認するには小さすぎる。アメリカとロシアが中東にあるダンジョンの存在を確信したのは、とある工場にダンジョン製のアイテムが持ち込まれていることを突き止めたからだ。それは偶然だった。トラックが事故を起こし、積み荷からアイテムが発見されたのだ。諜報員からその情報を聞いた我々は驚愕した」
「アイテムのレア度が予想を超えていた、というところかしら?」
「察しがいいな。そうだ。大国であるアメリカ。我が国は巨額を注ぎ込み、国はダンジョンの探索をしていた。だが、彼らのほうが先を行っていた。恐らくは我々よりも先にダンジョンを見つけていた。彼らはダンジョンにおいては先駆者だったわけだ」
「まさか、あなたたちでは太刀打ちできないほどの強さになってしまっていた?」
「それに近いな。民間人の組織が1国家を超える軍事力を手にしてしまったのだ。ダンジョンの資源を使うことによって」
「そして、アメリカはロシアと手を組み、その組織を敵に回してしまった。そんなところかしら?」
「敵に回したのではない。アメリカとロシアは彼らと戦争をしたいわけではない」
「まさか、向こうが戦争を仕掛けてきた? そんなこと……」
「直接的な戦争ではない。3日前。アメリカのロサンゼルス、そしてロシアのサンクトペテルブルクにあるダンジョンの入口。それが彼らに占拠された。おそらく彼らの目的はダンジョンの占有にある」
「1つしかない大事なダンジョンを奪われちゃったってわけね。しかも向こうはさらに強力な軍事力を手にする。そうなったら、大国といえども存亡の危機ね」
グレゴリーはミリアを指さした。ミリアはグレゴリーの仲間といっしょに亡霊と戦っている。
「彼女は攻撃力を持たない。レベル173のモンスターといえども、我々は確保できるだろうと考えた。目隠しをし、スキルを使えないようにして、アメリカに輸送するつもりだった」
「直接、頼む気はなかったの? 日本政府かダンジョン管理協会に」
「それができない理由があったのだ」
「どんな理由があったにせよ、ミリアを誘拐して、盾として利用しようとしたのよね? 奪われたダンジョンを取り戻すために。まるでダンジョン戦争ね。石油のように資源だと考えているの?」
瑞稀社長は呆れるような口調で言った。
「このままだと、民間人の組織にダンジョンを支配されることになる。やがて彼らは強大な軍事力を手にしてしまうだろう。そうなっては遅いのだ」
「だから、それは国の都合よね。アメリカやロシアがなくなって、民間人の組織が世界を統治するということになるのかしらね」
瑞稀社長の言葉には皮肉がこもっていた。
グレゴリーは苦笑いを浮かべる。
「彼らの名前を教えておこう。秘密結社アルトリアス。表向きは会社組織だが」
それを聞いて瑞稀社長の顔は歪んだ。まるで苦虫を噛んだような顔だ。
「私がデバイスリンク・テクノロジーズの社長だということはご存知? アルトリアスはライバル会社よ。というよりも、名前を聞きたくないくらいに嫌いな会社」
「ああ、知っている。知っていたからこそ、伝えたのだ」
「だからといって、私が協力するとでも思ったの?」
「ああ、思ったさ。恐らくは協力せざるを得ないだろうな。我々は運が良かったかもしれない。だが、それもこの長瀞ダンジョンから出ないと何も始まらない」
グレゴリーは私のほうを見た。
「筑紫春菜さん。アメリカとロシアを代表してお願いします。ここから無事に出していただき、そして我が国を助けていただけませんでしょうか?」
グレゴリーは腰を深く折って頭を下げていた。
だが、瑞稀社長は機嫌が悪そうだった。
「厚かましいお願いね。自分たちは捕虜のようなものと言っておきながら、ミリアをアメリカに連れて行くことを全然諦めていないわね」
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「まあまあ、とにかくここから出ないことには何もできないわけですから。まずは出ることに専念しましょう」
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