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5話 魔獣討伐(後編)
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「エスタレアお嬢様には指一本触れさせません!!」
「アミーラ!」
エスタレアが私のことを心配そうに見つめている。
本当に、エスタレアは……
「私のことよりも、自分の身を心配してください」
後方支援部隊を護っていた魔法師と騎士達が頑張ってくれているが、私達を助けるだけの余裕はない様子――
命に代えても、エスタレアは護る。
私は無数の魔獣に囲まれながら、私はそう誓った。
「爆風魔法!!」
爆風魔法を使って、魔獣数匹を弾き飛ばしたが――
グルルル!
グルルルル!
数が多すぎる……
「私の風魔法でエスタレアお嬢様を崖の上まで飛ばしますので、どうかお嬢様だけでもお逃げください!!」
「嫌です。アミーラを置いて私だけ逃げるなんて、そんなことはできません」
「お嬢様……」
そうですよね。
私の知っているエスタレアは、自分だけで逃げるなんて選択はしない。
危機的状況でなければ、これほど嬉しい言葉はないはずのに――
今はそんな感傷に浸っている余裕はなかった。
私は思わず苦笑する。
「こうなったら、二人が戻って来るまで何とか耐えなければ……」
さっき、敢えて大きな音がなる風魔法を使ったから、フーリュ卿とイヴェエル卿の二人なら必ずその意図に気づくはず。
私だけではこの危機を乗り越えることはできない。
自分の力のなさを口惜しく感じる――
グワッ!!
魔獣達が同時に襲いかかって来た。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
私は大声を出して自らを鼓舞し、魔獣達の猛攻に対峙した。
◇
「アミーラ、アミーラ!!」
怪我を負った私を、エスタレアは涙を流しながら、治癒魔法で治している。
私のために、そんなに涙をしてくれるのですね……
エスタレアが無事で良かった。
魔獣に怪我は負わされたが、フーリュ卿とイヴェエル卿が戻って来るまで、私はなんとか耐え忍ぶことができた――
「エスタレアも怪我をしているではありませんか。私の怪我よりも、まず自分の怪我を治してください……」
「なに言ってるのよ!! どうみてもアミーラの方が大怪我をしてるじゃない!! どうして私をかばって――」
エスタレアが魔獣に襲われそうになった時、私は無意識でエスタレアをかばっていた。
「ふふ、だって、私はエスタレアお嬢様の侍女で、一番の親友ですから……」
「アミーラ……」
ギュッ!
エスタレアが私を抱きしめてくれた。
これだけでも、エスタレアのために頑張った甲斐がありましたね……
エスタレアの温かい体温を感じながら、私は胸中でそう呟いた。
「私達が割って入る余地はなさそうですね」
「ああ、そうだな」
フーリュ卿とイヴェエル卿は気を遣って、遠くから私達を見守ってくれている。
二人もエスタレアが心配だと思うけど、ごめんね……
そして、ありがとう。
フーリュ卿とイヴェエル卿の気遣いに、私は珍しく二人に感謝をしていた――
◇
「今日は、わざわざ来ていただき、ありがとうございます」
「エスタレアが誘ってくれたのに、来ないわけがないじゃないですか」
「俺も楽しみにしていた」
今日は私達の家で、イヴェエルとフーリュに助けられたお礼も兼ねて、アミーラの全快祝いのパーティーを開くことになった。
「私のためにパーティーなど開かなくてもよいと何度もお伝えしたのですが……」
「アミーラは気にしなくていいの!! 私がどうしてもやりたかったんだから――」
「エスタレアお嬢様がそう言ってくださるのであれば、今日はお言葉に甘えて楽しませていただきます」
「うん、ぜひそうして欲しい。イヴェエルとフーリュも楽しんでもらえると嬉しいです」
三人がいなかったら、あの時、私は確実に魔獣に殺されていた……
アミーラ、イヴェエル、フーリュには返しても返しきれない恩ができてしまった。
「それでは遠慮なく楽しませていただきますね」
「フ、この場にいることで、すでに楽しんでいるがな」
「エスタレアお嬢様、私は本当に感激しております」
でも、この三人はきっと、そんなことを考えもしないんだよね……
そんな素敵な仲間がいることに、私は心の中で深く深く感謝していた――
「アミーラ!」
エスタレアが私のことを心配そうに見つめている。
本当に、エスタレアは……
「私のことよりも、自分の身を心配してください」
後方支援部隊を護っていた魔法師と騎士達が頑張ってくれているが、私達を助けるだけの余裕はない様子――
命に代えても、エスタレアは護る。
私は無数の魔獣に囲まれながら、私はそう誓った。
「爆風魔法!!」
爆風魔法を使って、魔獣数匹を弾き飛ばしたが――
グルルル!
グルルルル!
数が多すぎる……
「私の風魔法でエスタレアお嬢様を崖の上まで飛ばしますので、どうかお嬢様だけでもお逃げください!!」
「嫌です。アミーラを置いて私だけ逃げるなんて、そんなことはできません」
「お嬢様……」
そうですよね。
私の知っているエスタレアは、自分だけで逃げるなんて選択はしない。
危機的状況でなければ、これほど嬉しい言葉はないはずのに――
今はそんな感傷に浸っている余裕はなかった。
私は思わず苦笑する。
「こうなったら、二人が戻って来るまで何とか耐えなければ……」
さっき、敢えて大きな音がなる風魔法を使ったから、フーリュ卿とイヴェエル卿の二人なら必ずその意図に気づくはず。
私だけではこの危機を乗り越えることはできない。
自分の力のなさを口惜しく感じる――
グワッ!!
魔獣達が同時に襲いかかって来た。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
私は大声を出して自らを鼓舞し、魔獣達の猛攻に対峙した。
◇
「アミーラ、アミーラ!!」
怪我を負った私を、エスタレアは涙を流しながら、治癒魔法で治している。
私のために、そんなに涙をしてくれるのですね……
エスタレアが無事で良かった。
魔獣に怪我は負わされたが、フーリュ卿とイヴェエル卿が戻って来るまで、私はなんとか耐え忍ぶことができた――
「エスタレアも怪我をしているではありませんか。私の怪我よりも、まず自分の怪我を治してください……」
「なに言ってるのよ!! どうみてもアミーラの方が大怪我をしてるじゃない!! どうして私をかばって――」
エスタレアが魔獣に襲われそうになった時、私は無意識でエスタレアをかばっていた。
「ふふ、だって、私はエスタレアお嬢様の侍女で、一番の親友ですから……」
「アミーラ……」
ギュッ!
エスタレアが私を抱きしめてくれた。
これだけでも、エスタレアのために頑張った甲斐がありましたね……
エスタレアの温かい体温を感じながら、私は胸中でそう呟いた。
「私達が割って入る余地はなさそうですね」
「ああ、そうだな」
フーリュ卿とイヴェエル卿は気を遣って、遠くから私達を見守ってくれている。
二人もエスタレアが心配だと思うけど、ごめんね……
そして、ありがとう。
フーリュ卿とイヴェエル卿の気遣いに、私は珍しく二人に感謝をしていた――
◇
「今日は、わざわざ来ていただき、ありがとうございます」
「エスタレアが誘ってくれたのに、来ないわけがないじゃないですか」
「俺も楽しみにしていた」
今日は私達の家で、イヴェエルとフーリュに助けられたお礼も兼ねて、アミーラの全快祝いのパーティーを開くことになった。
「私のためにパーティーなど開かなくてもよいと何度もお伝えしたのですが……」
「アミーラは気にしなくていいの!! 私がどうしてもやりたかったんだから――」
「エスタレアお嬢様がそう言ってくださるのであれば、今日はお言葉に甘えて楽しませていただきます」
「うん、ぜひそうして欲しい。イヴェエルとフーリュも楽しんでもらえると嬉しいです」
三人がいなかったら、あの時、私は確実に魔獣に殺されていた……
アミーラ、イヴェエル、フーリュには返しても返しきれない恩ができてしまった。
「それでは遠慮なく楽しませていただきますね」
「フ、この場にいることで、すでに楽しんでいるがな」
「エスタレアお嬢様、私は本当に感激しております」
でも、この三人はきっと、そんなことを考えもしないんだよね……
そんな素敵な仲間がいることに、私は心の中で深く深く感謝していた――
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