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第五章 キングダムインベードミッション

優しい言葉が今は毒なの

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「慎一郎ッ!貴様!これはどういうことだ!!」

 ……アズと一緒に手を繋ぎ、エドの元に現れた俺を、エドはひどく叱責した。

 時は世界大会開会式前、代表者達がいつまで経っても現れないに状況に、観客、運営からにわかにざわつきが聞こえ初めてきた頃だ。

 ……作戦名『エドを中心に他の奴らも力を合わせてエドの背中を守りつつ総力戦で戦う作戦』を決行するべく俺達は集まり、開会式のトラブルに乗じて近衛兵や国王の暗殺企てていた最中の出来事。

 作戦外の人物をつれてきた俺にエドは怒りをぶつける。

「……だって今回は負け試合ですから……なんて言うつもりはありませんが、全ての記憶を取り戻した今、アズさんの力は絶対に戦力になると保証できます!」

 ……自信を持ってそう宣言した俺だったが、エドは胸ぐらを掴んで顔を近づけた。

「……記憶を取り戻して、まだそんな事を言うのかお前はッ!!人の血が通ってないのか!!アズ様は特段戦闘が強い訳でもない、ただの普通の女の子なんだ!!傷付いた彼女を見て、お前はなんとも思わないのか!!確かにアズ様は負ける事はない。だがその間彼女は100回殺される痛みを味わうんだぞ!!それでも戦わせるつもりかッ!!」

 鬼気迫るエドを前にしても、慎一郎は態度を崩さない。そんな彼の姿勢に、反対にエドが息を飲み込んだ。

「……エドさん」

「…………なんだ?」

「……エドさんが取り戻したい物って一体何ですか?」

「…………」

「……時を戻す力を持ってしても、取り戻せないものでありつつ、犠牲を払おうとしない。貴方の目的は何ですか?」

「…………」

「……もしかして、貴方の目的は…………」




 ※




 私は泣いていた。側で私の事を宥めるライの言葉など聞こえないくらいに私は大きな声で泣きじゃくっていた。

 ライは「……逆に良かったですよ、あんなやつ。あっちから別れてくれてこっちは願ったりです」なんて言うけど、そうじゃない、そうじゃないんだよ。

 チロの事を悪く言わないで!そんな事を思うくらいに私は彼を愛してたのに、何で、どうして、私の何がいけなかったの?私はそれが知りたいの。

 ……分かってる、分からないのは分かってる。だからせめて、責めるなら私を責めて、私を納得させてほしいの。

 ああ、やっぱり私はダメなんだなって、そう思えば少しは納得がいくから。

 だから私を責めて責めて責めて責めて責めて責めて……

 ……優しい言葉が今は毒なの。





 ※





「……どうやら開会式の開会は遅れているようですが、準備だけは済ませておいて下さいよ、カナ様。私は少し情報を集めてきますので、失礼いたします」

 ……私が何時間か泣きじゃくった後、ライは外へ出かけていった。

 私の気持ちは少しは落ち着いたが、いまだに謎は解けない。

 一体どうして?……なんて、知る術は一つしかないじゃないか。

「…………会いにいこう。チロに」




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