上 下
35 / 50
第三章 魔王の体捜索編

34話 反魂の儀式

しおりを挟む
 俺達は反魂の儀式をするため早急に準備に取り掛かった。

    まず魔王ジルの体を部屋の中心に寝かせ、その周りにカルヴァが魔法陣を書いていく、そして魔王ジルの横に俺が寝る。

「これで準備は整ったぞ、後は4人でこの魔法陣に魔力を込めるだけじゃ」

    そして魔法陣に魔力を込めるのはカルヴァ、ミリア、バハル、ラミアの四人に決まり、ルシウスとアリエスは魔力操作がそんなに長けてないのから、この四人が選ばれた。

 そして遂に俺の運命が決する時がきた、成功すれば魔王ジルは元の体に戻れる、しかし失敗すればどちらかは消滅する、すなわち死だ。

    そして死ねばもう二度とアリエスとも会えない、しかしここで反魂の儀式を辞めるわけにはいかない、俺は再度覚悟を決めて、反魂の儀式に望む。

「では反魂の儀式をはじめるぞ! 皆前の魔法陣に魔力をこめよ」

 カルヴァの合図で四人が一斉に魔力を込める、すると魔法陣が輝きだし、俺の体に魔力が流れ込んでくるのがわかった。

    そして体の中から何かが引っ張り出されるような感覚がする、次第に意識が遠のいていく、やばい、これは死ぬ、そう思い俺は必死に遠のいていく意識を保とうとする、しかし無情にも抵抗虚しく、俺の意識は闇に沈んだーーーー

 気がつくと俺は白い空間にいたいつも魔王ジルと会う空間である、とりあえずこの空間にいるということは俺は死んではいないという事なのだろうか。

    でもいつもなら魔王ジルがいて声を掛けてくるはずなのになそんな疑問が頭の中を駆け巡る。

 そして俺は疑問を終始すべく魔王ジルの姿を探し辺りを見渡す、すると一人の男がいた。

     魔王ジルと思い声をかけようとしたが、違う魔王ジルではない、誰だあの男は一体、そして男は俺に気づくと近づいてきた。

「やぁ! 気分はどうだい?」

 その男は気さくに俺に話しかけてきた俺は少し警戒する。

「えぇ 悪くはないです、一体あなたはだれなんですか?」
「俺かい? 俺はそうだな・・・・・・ この世界の神かな!」

 その男は自分の事を神だと言ったなんて胡散臭い奴なんだどこからどう見ても神にはとても見えない、むしろ男は黒髪短髪メガネで俺が知ってる日本人のような姿をしている。

「はぁ、神様ですか、その神様が僕に何のようで?」
「君信じてないね! いやチート能力でもさずけてあげようかと」

 チート能力だと、なぜそんな言葉を知っていんだ、もしかしたら本当に神様なんかじゃないんだろうか、疑問は更に深まるばかりだそしてこいつは一体何者なんだ。

「チートですか? なら世界をとれるぐらいのやつを」

 俺は冗談交じりにそいつの話に乗ってやることにしたここは話を合わせて様子見だ。

「君なかなか面白ね! あとごめんよ神というのは冗談」
「やっぱり神様じゃないんですね!」

 男は直ぐに神様なんかじゃないとゲロった、なら俺の前にいるこの男は一体何者なんだ。

「俺は佐藤大地、この世界では昔勇者と呼ばれていたんだ」

 えっ、佐藤大地だって、ばりばりの日本人名じゃないか、そして自分は勇者と呼ばれていたと言ったた俺の疑問は更に深まる一体何が起こっているんだ。

「なに! 日本人だと・・・・・・」

 思わず素が出てしまったそして大地と名乗った男は俺に。

「疑問だらけの顔をしているね! 今からその疑問に一から答えてあげるよ」
「山ほどある」
「まず何が知りたい?」

 大地は何が知りたいと聞いてきた俺はまず俺と同じ転生者かどうか聞いた。

「大地は転生者なのか?」
「違うよ、俺はこの世界に召喚されたんだよ」

 召喚だとそんなことが可能なのか、なら俺と違って転生者じゃない訳か、しかし向こうの世界からこちらの世界に転移出来るとは、俺は大地に質問を続けた。

「なぜここにいる?」
「それはね、この反魂の儀式が行われた時少し魔王ジルに細工をしていてね、俺があらわれるようにしていたんだ」

 細工をしただと、それなら魔王ジルが転生することを知っていたような口ぶりじゃないか、もしかして大地が全てを起こしたのか。

「なら、魔王ジルを転生させたのは大地なのか?」

 俺は単刀直入にその質問を大地にぶつけた回りくどいのは面倒だからだ。

「そうだよ! 俺が転生させた、そのせいで君が死んでしまったけどね」
「えっ!?」

 ちょっと待て今なんて言ったそのせいで俺が死んだと聞こえたのだが、ならあの時の白い光はこいつのせいだったのか。

「正確には魔力障害で向こうの世界に干渉が起こり、君の魂だけがこちらにやって来たんだよ」
「魔力障害?」
「ああ、あの時暴走したジルの魔力を使ったら向こうの世界に干渉してしまってね、すまない」

 暴走だと、やはりミラリア王国で何かが起こり魔王ジルが暴れていたのか。

「ならやっぱりミラリア王国を滅ぼしたのは魔王ジルなのか?」
「いやそれは違うよ、あの時は俺がなんとか食い止めていたからね、滅ぼしたのは別の人物さ」

 やっぱり魔王ジルはミラリア王国を滅ぼしてなんかいなかったんだしかし滅ぼした人間が別にいるとは・・・・・・

「その人物とは一体誰なんだ?」
「それはわらない、俺はその人物を倒す前に元の世界に戻ったからね」
「えっ? 戻った? でも今いるじゃないか?」
「これは魔力によって作り出されてる残像だよ、言わば影分身」

 そうなのかこれも魔力で何とかしているんだな、しかしならなぜ俺の前に現れるようにしていたんだ。

「なぜ俺のためにそんな事までしたのか?」
「君のためじゃないけど、この世界と向こうの世界を守るためさ」
  「守るためだと?」
  「そうだよ! 本当は暴走したジルの魔力を使って俺と同じようにこちらの世界に転移させようとしたんだでもそれは失敗だった」
   「俺が転生する前の世界からか?」
   「うん、力になってもらおうと思ってね!」

 今ので話は大方わかった大地は俺が元いた世界から大地と同じように人間を召喚しようとし、失敗して俺が死んだと、なんてややこしい話なんだ、しかも巻き込まれただけの俺に世界を救ってくれと、展開が急すぎる。

「そんなこと言わてもな・・・・・・」
「大丈夫君ならやれるさ! もう多分フラグは立ってるから、後はラスボスをやっつけるだけ」

 フラグが立っているか、そんなフラグは立たないで寝ていてほしいものだが。

「わかった、やれるかどうかは分からないが精一杯やってみよう」
「ありがとう、ごめんね俺のせいで巻き込んしまって」
「いや大地も転移したから被害なんだろ? だから別に気にしなくていいし俺は二度目の人生を気に入っている」
「俺の場合ちょっと違うんだけどね・・・・・・ まあいいやありがと、それともう時間が無いからこれで会うのは最後になる」

 なに、もう時間が無いだと、俺はまだ沢山聞きたいことがあるのに。

「まて大地! 俺はまだ聞きたいことが沢山ある、今行かれたら困る!」
「時間が無いからもう無理だよ魔力切れさ、後はジルの記憶を取り戻してから聞いてくれ、そしてカルヴァナーナを頼るといい」

 大地はそう言い残すと俺の前からゆっくり消えていったくそ、まだ重要なことは何も聞いてない、ただ世界を救えと言われ俺がなぜ転生したかが判明しただけだ。

 なにが世界を救えだ、漠然としすぎている、ましてや敵が誰だかわからない、そんな事を考えているとまた意識が遠のいていく、そして気がつくと俺はベットに寝ていた。

「気がついたわ!」

 これはアリエスの声だな、俺は起き上がり周囲を見渡す、全員お揃いのようで。

「気がついたようじゃな! 反魂の儀式は成功じゃ、よかったのぅ」

 成功したのか、なら俺は生きている、またアリエスに触れれる、そう思い横にいたアリエスに抱きついた。

「きゃっ! 何よいきなり! 皆いるからだめよルーク」
「いいじゃないですか! 生き残れたんだからちょっとぐらい」

 そうしてしばらく抱きついていると部屋の扉が開かれよく見知った人物が現れた。

「よぉ! 目が覚めたか、起きねーから心配したぞ」

 長身に、黒髪、右耳に三つのピアスそう魔王ジルだ。

「はい、師匠! 元にもどれたんですね」
「ああ! お前のお陰でな、感謝するぞ」

 遂に魔王ジルを体に戻すことが出来たそして俺達は別々になったしかし問題はまだある、あの空間で出会った勇者大地の事だ。

 俺に世界を救えと言い残し消えていった、俺はまだ聞きたいことが山ほどあったのに勝手に消えていったまだ魔力障害の事など詳しく聞きたかったのに。

 しかしあのことを魔王ジルに話すべきか、いや先に記憶を取り戻したか確認する方がいいだろう。

「師匠、記憶はもどりましたか?」
「いや、戻ってない、どうしてもミラリア王国にいた事が思い出せない」
「そうですか・・・・・・」

 やはり元に戻っただけじゃ記憶は戻らないか、しかしこれからどうすればいいんだろう、大地も世界を救えとかじゃなくてもっと具体的に指導して欲しかった。

 クソ、最初の無駄なやり取りがなかったらもっと詳しく話を聞けていたのに、しかし今更悔やんでも仕方ない。

 まずは魔王ジルの記憶を取り戻すのが先だ俺は大地のことを魔王ジルには黙っておくことにした記憶が戻ってない以上余計混乱させるのを避けるために。

「なにわともあれ成功したんじゃ、今夜は盛大に宴をしようぞ」

 カルヴァがそう提案してきたそれにラミアが。

「いいね! ジル復活祭だね! 今すぐ準備させよう」

 そう言って宴の準備が始まった俺はまだ病み上がりなんだけどな・・・・・・ しかも問題のスケールが余計にでかくなり困り果てている。

 しかしこいう時こそパッと騒ぐのが一番いいか、今はあのことは一旦忘れて、少し頭を使いすぎて疲れた。

 そしてしばらくして広間で宴が行われた俺の横にはアリエスがベッタリ引っ付いている、人前じゃ嫌じゃなかったのか、まあ気分は悪くないから別にいいけど、魔王ジルは左にカルヴァ右にラミアその二人に挟まれている。

「お前ら鬱陶しい! 離れろ」
「よいではないか、久しぶりの親子の再開ぞ」
「ボクはジルにずっと会いたかったんだからね」

 ルシウスとバハルは二人で酒を酌み交わしている。
 ミリアは一人淡々と飲んでいる魔王ジルの所に行かないのはラミアとカルヴァに遠慮しているのかもしれない。

 しかしこれでこの件に関しては一段落したしかし新たな問題も更に増えた俺はこの先一体どうすればいいんだろうそんな事を頭の片隅に起きながら宴は進んだ。
しおりを挟む

処理中です...