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第四章 学園生活高等部編

47話 激突

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 俺はアリエスをルシウスに託し、魔王ジルの元へ向かった。

「師匠! 援軍に来ました!」
「おら! ルークか、こいつら一人一人がかなりの手練だ気を引き締めていけ」

 魔王ジルそう言って敵の中に突っ込んでいく、敵は次から次へと襲いかかってくる、俺は愛刀飛龍を抜きそれに続いた、そして敵に切りかかる。

「はっ!」

 俺の攻撃は受け止められ反撃を受ける、それを後ろに下がりかわす、しかし背後からまた一人敵が来る、俺はすぐさま振り返りその敵を切り伏せた、しかし一人やった所でまた次から次へと敵が襲い来る。

「くっ!」

 魔王ジルの言ったとうり敵は一人一人がかなりの手練で強い、前に戦ったことがある盗賊団の比じゃない、しかし勝てない程でもない、俺は魔術と剣術を巧みに扱い一人一人を確実に倒していく、しかし敵の数が多いこのままでは埒が明かない、俺は竜の息吹を使い敵を一掃しようとした。

「竜の息吹!」

 竜の息吹は真っ直ぐ敵に向かっていき、数人を吹き飛ばした、しかし何人かは味方を盾にして耐えている、なんて奴らだ、味方を盾にするなんてこいつらに良心はないのか、そして敵は怯むことなくまた向かってきた。

 くそ、恐怖心もないのかよ、とんでもなく厄介な奴らだ、そして俺の方が一瞬だけ怯んでしまう、それを見通したのか敵が一斉にかかってきた。

 これはやばい、この人数は捌ききれない、俺は必死に敵の攻撃を防御する。

「くっ!」

 俺が目の前の敵の攻撃を防いでいると背後に気配を感じる、しまった後ろを、すぐさま振り返り防御しようとするが前の敵が邪魔で振り返れない、やばいやられる、そう思った瞬間。

「グラビティブロー!!」

 魔王ジルが背後の敵をグラビティブローで吹き飛ばした。

「師匠!」
「大丈夫か! もっと気を引き締めろ! この後はあのドラゴンが待ってるからな」

 そうだこいつらを倒した後にドラゴンが控えている、俺はチラッとドラゴンの方を見る、ジークやその他の教師達が必死に戦っている、あちらにも早く援軍に行かねば、こんな所で傷を追うわけにはいかない、俺は手に魔力を込めあの魔術を使った。

「ライトニングブラスト!」

 凄まじい爆音を立てて敵達ののど真ん中に稲妻が落ちる。

「うぉぉぉぉぉ!」
「ぐはぁぁぁぁ!」
「あぁぁぁぁぁぁぁ!」

 音速を超える稲妻は流石に避けようも防ぎようもなく何人もの敵が倒れていく。

「やるじゃねーか! よしもう一息だ! 一気にたたくぞ」

 魔王ジルはそう言って次から次へと敵を殴り蹴り飛ばしていく、俺も切っては、魔術を放ち、切っては、魔術を放ちどんどん敵を倒していく、そして遂に敵のボスらしきやつの所までやってきた。

「あちゃーさすが魔王とその弟子だね、この人数じゃ足りないか」
「てめーはなにもんだ!」

 魔王ジルは敵のボスらしき奴にそう尋ねた。

「俺? 教えるわけないじゃん」

 敵のボスらしき奴はふざけるような態度でそう魔王ジルに言い返していた。

「ちっ! うぜー野郎だ! まあいいここでぶっ倒す!」
「おお~怖!」

 敵のボスらしき奴は魔王ジルを挑発しているようで手を顔に当てそう言っている。

「師匠、あれは挑発ですよ」
「分かってる! あいつ他のやつとは全く違うぞ」

 やはり、魔王ジルも分かっていたか、そのボスらしき人物の放つかなりの殺気に、そしてそれがかなりの手練だということに。

「あれ~こないの?」

 更に敵のボスらしき奴は挑発を続けてくる、そらに痺れを切らしたのか魔王ジルが先に仕掛けた。

「グラビティブロー!!」

 その拳は確実に奴を捉えている、直撃だ、しかし奴はそれをなんと受け止めていた、しかし腕は少し傷ついているようだ。

「きっく~さすが魔王だね~」

 そして魔王ジルを蹴り飛ばした、魔王ジルはそれを受け止め俺の元へ下がってきた。

「あいつかなりの闘魔を纏ってやがる」

 そういう事か、だから魔王のグラビティブローを受け止めることが出来たのか、しかしグラビティブローを受け止めるほどの闘魔を纏っているなんて、なんてやつだ、でも完全には防ぎきれてない、二人がかりでいけば余裕があるな。

「師匠、二人でサクッとぶっ倒しましょう」
「ああ、そうだなサクッといこう」
「二対一とか卑怯じゃない?」

 俺と魔王ジルはそんな奴の言葉など無視して攻撃を開始しする、まず俺が正面から切り込む、奴はそれを両腕で真剣白刃取で受け止める。

「かなりいい刀使ってんじゃん!」
「そりゃどーも!」

 俺はすかさず左手で魔術を放つ。

「シャワースプラ!!」
「うぉ! 魔術とか反則だろ!」

 奴は急いで刀を離し後方に飛び跳ねた、しかしそれが仇となる、魔王じるが背後を取っていたのだ。

「ちっ! さすがに二対一は無理があるな!」

 奴は空中で何も出来ない、奴は悪態をついている。

「勝負に卑怯もくそもねーよ! グラビティブロー!!」
「ぐはっっっっっっ!」

 魔王ジルの拳が奴の脇腹を捉える、奴は防御もままならないままそれを受け吹っ飛ばされた。

「師匠! やりましたね!」
「ああ!」

 俺と魔王ジルが勝利を確信した時、奴がなんとおきあがったのだ。

「しぶてーやつだな!」
「はぁ、はぁ、くそが! いてーじゃねーかボケ死ね!  こい邪龍こいつらをぶち殺せ!」

 奴の呼び声に反応するかのようにドラゴンけたたましい雄叫びをあげがこちらに飛んできた。

「グォォォォォォ!」

 ジークたちはどうなったんだ、俺はドラゴンがいた場所を見る、何人かは倒れているようだが、死んだのか。

「邪龍命令だ!  こいつらを今すぐぶち殺せ」

 奴はドラゴンにそう命令した、するとドラゴンが雄叫びをあげこちらに向かってくる。

「グォォォォォ!」
「ルーク! 来るぞ!」
「は、はい!」

 やばいな、あれと戦うのか、一応想定はしていたがいざ近くで見るとビビる、しかしやるしかない、俺は覚悟を決めドラゴン対峙し向き合う、ドラゴンは尻尾を振って攻撃してくる、凄まじいスピードだ。

「ルーク屈め!」
「くっ!」

 
 俺は魔王に言われたとうりその場にしゃがみ込みそれをかわす、そして魔王ジルがドラゴンに飛びかかった。

「グラビティブロー!!」

 鈍い音を立てドラゴンの体に魔王ジルの拳が当たる、しかしドラゴンは咆哮を上げるだけでダメージはないみたいだ。

「グォォォォォォ!」
「ちっ! 闘魔が高すぎる効かねぇな!」

 ドラゴンは相当な闘魔を纏っているらしく、魔王ジルの攻撃が通用しないようだ、しかし魔王ジルの攻撃が通用しないとなると一体どうやって倒せば・・・・・・
 そんなことを考えている時間にもドラゴンの猛攻が続く。

「グォォォォォ!」
「ちっ!  ルークお前の剣でぶった切れねーか」
「剣ですか・・・・・・  俺は闘魔を纏えてないので無理ですよ、あっあぶなっ!」

 ドラゴンは尻尾を振り回し攻撃してくる、それを何とかかわしながら考える、闘魔を纏えない俺ではドラゴンに傷すら入れることが出来ないだろう、一体どうすれば、俺はその時ひとつのことを思い出した、確かこの剣はかつてドラゴンを切った剣士が作った剣だということを、この剣ならもしかしたら行けるんじゃないか、俺は俺はその希望にかけることにした。

 そしてドラゴンの攻撃の間を塗って剣を振るう、剣はドラゴンの体に傷をつけた、やったぞこれなら切れるしかし大したダメージにはならないだろう。

「グォォォォォォォォォ!」

 今の一撃で完全にドラゴンはブチ切れたみたいだ、大きく息を吸いこみブレスを放ってきた。

「ルーク、相殺しろ!」
「はい! 竜の息吹!」

 凄まじい爆音が響く、瓦礫が飛び交い土煙が上がる。
 今がチャンスか、俺は魔王ジルと作戦を練る。

「師匠!  グラビティブローでアイツの頭を左右から殴ってください」
「えっ! でも効かないぞ!」
「いいですから! お願いします!」
「わかった!」

 例えどんなに鋼鉄の防御を誇ろうと頭を左右から殴られれば脳震盪を起こすだろう、俺の狙いはそれだ、相手が硬ければ硬いほどこれは効果があるはずだ、その隙に俺がこの剣で首を切り落とす、よし行くぞ、土煙の中からドラゴンが姿を現す、魔王ジルは飛び上がり頭めがけて殴り掛かる。

「グラビティブロー!!」

 魔王のグラビティブローはドラゴンの頭を捉えた、そして魔王ジルは左右から殴り倒す。

「グオオっ!」

 ドラゴンはなにが起こったか分かっていないようだ、フラフラとよろめき空に向かってブレスを吐いた。

 どうやらこの作戦効いているようだ、よし今だ、俺は剣を鞘に収め集中し力を溜める。

「ルーク、今だ!」

 魔王ジルの合図と共に俺はドラゴンに飛びかかりその首を狙う、そして俺の剣が奴の首を捉えた、俺の剣は見事ドラゴンの首を刎ね飛ばす、辺り一面にドラゴンの血が飛び交う、そして首が地面に落ちる、やったぞ成功だ、ドラゴンを倒した、これでもう安心だ。

「やったな! ルーク」
「ええ、師匠がいてくれてよかったです」

 しかし勝ったわいいもののその被害は甚大だ、俺は当たりを見渡す、死体の山に瓦礫、とてもここが学園とは思えない。

「えらく酷い有様だな・・・・・・」
「ええ・・・・・・」
「そう言えば奴がいない!」

 そう言われて俺は奴のことを思い出した、しまった逃げられたか、しかしあの手負いだそう遠くまで行けないだろうし、どこかで力尽きるかもしれないとりあえずはいいだろう。

「あの手負いですし、一応大丈夫なんじゃないですか?」
「そうだな」

 しかしこの剣は本物だったのか、あのドラゴンを切れるなんて、とんでもない代物だな、そしてそんな俺たちの元にジークが駆け寄ってくる、ジークはボロボロで満身創痍だ。

「はぁはぁ、ルーク君、ジル様ドラゴン退治感謝します」
「おいジークいいって! それより早く治療しろ!」
「いえ、私より重傷者がまだいますのでそちらを先に私は自分で何とか出来ますし大丈夫です」
「そうか、なら俺は向こうに行ってくる」

 そう言って魔王ジルは倒れている教師達の元へ向かっていった。

 俺は一応アリエスの元に戻ることにした、ルシウスがいるから安全だろうが気になる。

「アリエス! 無事ですか!」
「ええ! 無事よ、ルシウスのお陰でね!」
「ルシウスさんありがとうございます!」
「いえ当然のことですよ」

 そんなルシウスの周りには何人かの敵が倒れていた、やはりこちらにも来ていたか、ルシウスがいてくれて本当に良かった。

 そして俺はアリエスを抱きしめようと近づいた、その時、なんと物陰から奴が現れたのだ、その手には剣が握られている。

「アリエス殿下取ったり~!!!

 狙いはやはりアリエスか、しかしこれはやばい俺は咄嗟にアリエスの前に左腕を出してその剣を受け止めた。
 
「いっっっっっっ!」

 剣は俺の左腕を切り落とす、物凄い痛みが全身を駆け巡る、切られた部分が熱い。

「ちっ! おまえじゃねぇーよ!」

 奴はそう言ってさらにアリエスに追撃をしかけた、しかしルシウスがいち早く反応して奴を背後から切り伏せた。

「ぐはっ! ちっ届かねーか くそ飛んだ役回りだぜ」

 奴はそう言って倒れた。

「ルーク君早く治癒魔術を!」

 俺はそう言われて痛みを必死にこらえ切られた腕に治癒魔術を掛けた、傷はみるみるうちに塞がり痛みが和らいでいく。

「ふぅ!」
「ルーク! 大丈夫なの?」

 そんな俺を見てかアリエスが心配そうにそう聞いてきた。

「なんとかな、少し貧血気味だし手が無いけど大丈夫だ」

 俺は切り落とされた腕を上げる、丁度手首の先からが無くなっている、くそ闘魔が使えていれば切り落とされることもなかったろうに、しかしアリエスを腕一つで守れた、代償はでかかったがこれでいいだろう。

「ルーク・・・・・・」

 アリエスは俺の無い手を見て深刻そうな顔をしている。

「そんな顔すんなって! 大丈夫生きてるから」

 そうアリエスに気にしないよう言ったらアリエスが抱きついてきた。

「ごめんなさい、私のせいで・・・・・・ ルークの手が」
「いいって! 二人とも生きてるんだから」
「でも・・・・・・」
「もう片方の腕があるから大丈夫! そう気にすんな」

 俺はそう言って残った方の腕でアリエスを抱きしめた。

 まあでも魔法の世界だ腕ぐらいはやせる魔法があってもおかしくない、それに期待しよう、俺はそう思いアリエスの頭を撫でる、するとそこに魔王ジルがやってきた、そして魔王ジルは俺の腕を見て絶句していた。

「ルークその腕・・・・・・」
「師匠、やっちゃいました」
「大丈夫なのか?」
「ええ、なんとか命だけは」
「そうか、だがその腕は・・・・・・」
「治せる魔術とかあるんじゃないですか?」

 俺は腕を元に戻す魔術があると思ってそう魔王ジルに尋ねた。

「あるにはあるがそれは俺の母親しか使えない」
「えっ!?  カルヴァ様しか使えないのですか!」
「ああ、だから今は治すすべがない」

 なんとカルヴァしか使えないのか、しかし困ったなカルヴァのところまでいくには二年かかる、どうしたものか、そんなことを考えていると奴が笑い出した、まだ息があったのか。

「はっはっはっ! ふぅ、魔王の弟子の腕一本持ってければ上出来かな」
「てめぇ! まだ生きてやがるのか!」

 しかしもうその命は風前の灯火だ、今にも事切れそうだ。

「アリエス陛下お下がり下さい!」

 ルシウスはそう言って自分の後ろにアリエスを下がらせる。

「てめぇはどこのだれだ! それとアリエス狙う理由を教えろ、そしたら今すぐに楽にしてやる」

 魔王ジルは落ちていた剣を拾い奴に向けそう言い放った。

「はぁ、はぁ、言うわけねーだろばーか! せいぜい頑張れや、先に地獄で待ってるぜ」

 奴はそう悪態をつき答える気は無いと、しかしこいつらは一体何者なんだ。

「残念だな、俺は天国行きが決まってるからお前とはもう会えねーよ!  地獄で苦しめ」

 魔王ジルはそう言って奴にトドメを刺した。

「師匠、もう少し生かして置いてもよかったのでは?」
「いやあいつは死んでも口をわらねーよ、時間の無駄だ」

 そうなのか、死んでも口を割らないか、しかしとんでもない集団だったな。

「そうなんですか」
「ああ、ああいう奴は沢山見てきたからな」
「しかし、ドラゴンはやばかったですね」
「そうだな、普通あんなもん召喚出来ないし操れないんだがな」

 魔王ジルはそう言って考え込んでいる、普通か大地が言っていたとうり敵はかなり強大な力を持っているようだ、しかしこれが向こうから接触してくると言ったフラグなのか、それにしては情報が少なすぎてなにもわからない、これではただ単に襲撃されただけだ、しかも狙いはアリエス、一体どいうことなんだ、するとそこに少し回復したジークがやってきた。

「ルーク君その腕・・・・・・」

 もういいよその反応、俺はジークにひととうり説明し話を聞いた。

「そうですか、では今からあと片付けをしなければなりません手伝って頂けますか?」

 そうだ死体の山をこのままにしていくわけにわ行かない、そしてこの死体を避難している一般生徒に晒すわけにもいかない、早く片付けねば。

「分かりました手伝います」
「俺も手伝うぞ」

 魔王もそう言って手伝ってくれた、まず死体を1箇所に集め俺の魔術で焼くことになった。

 それにしても酷い有様だ、まるで地獄のようだ、こうしてあと片付けを終え俺たちは一息付けることになり、俺は改めて腕を見る、はぁ、無くなってしまった。

 しかし、カルヴァなら治せると言うからまだ希望はある、いつかまたカルヴァに会いに行き治してもらおう、それまでは残った方の利き腕で頑張るしかないな、しかしそうなるとしばらく竜の息吹は使えないな、こうして激戦を勝ち抜き、俺は左腕を失い戦いは幕を閉じた。
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