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旅立ちの準備

双子コーデ

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「では、色々準備してから向かいましょう!マイカさんは今現在の容姿を隠したいとかありますか?」

 いそいそと契約書とペンを片付けたリチェルカーレ様はテーブルに高級ジュエリーがのってそうなの豪華な台座を置いた。パチンっと指を鳴らすと台座の上に直径2センチほどの透明な石を5つ並べた。

「ん?どういう意味?」

「第8世界にいる間は容姿や体型を変えて、別の姿で過ごすこともできますよ」

「あー、別にこのままでいいよ。下手に美形になっちゃったら、落ち着かないし。それに真っ黒さん達の子供を産む順番って決まってないよね?だったら私を少しでも気を遣って丁寧に扱ってくれる人から受け入れたい。見た目だけしか見ない人より私自身を見てほしいしね」

「黒髪黒目。目は二重だけど全体的に薄い顔。Fカップ、身長165センチ体重63キロ、洋梨体型のまま向かうということですね!」

「ちょ!見た目の色合いはともかく、何故私の身長体重とか知ってるの!?」

「見ればわかります、神ですから!」

 絶対何かカラクリがある筈だと疑いの目をしながらリチェルカーレ様を見つめるが、本人はいたって本気のようで特に表情が変わらずニコニコ微笑んでいた。

 気にしてても仕方がないので、話題を変えるためにリチェルカーレ様が用意していた石を指さした。

「それが例の子作り石?」

「はい。いったん箱に入れて使用者登録封印したらマイカさんに渡しますね。あ、持ち物や貴重品を入れる鞄を用意しますね!」

 リチェルカーレ様は台座ごと別の箱に入れ蓋を閉めると、ツンっと指先で箱を突いた。するとピカッと箱が光り輝き、光がおさまるのを見届けた後、テーブルの上に先ほどと同じ豪華な台座を出し、直径5センチ程の純白の石がついた首飾りを置いた。

「すごい真っ白な石だね。なんの石?」

「マイカさんの世界ではホワイトオニキスと呼ばれている石ですね。魔法で劣化しないようにあらゆる加工をしてあるので、どんな時も必ず付けてください」

「お風呂の時も?」

「はい。防水加工もバッチリですよ!」

「ずっと身につけてないといけない理由は?」

「私の加護がたっぷり入ってるので、どんな悪意も跳ね除ける守護石、つまり御守りみたいなものです。私利私欲から聖女を狙う悪い奴が居るかもしれないので、念のために」

「なるほどね。さっき鞄用意するって言ってたけど…」

「あ、この石に空間魔法を施して無限に収納できるようにしてあります。こうやって…」

 リチェルカーレ様は首飾りをかけた。鎖は長めなため、首にかけると守護石は鳩尾辺りにくるようだ。そして守護石を右手で握り込み、左手を石が入った箱に触るか触れられないかの距離に近づけるとシュッと音を立てて箱が目の前から消えた。

「この守護石を手で触りながら、〈収納〉と唱える又は心で唱え、収納したい対象を触るまたは手を近づければ収納されます。出すときは同じように守護石を触りながら、取り出したいものを思い浮かべ〈出現〉と唱える又は心で唱えれば…こうやって出現します」

 リチェルカーレ様は説明しながらテーブルの上に箱を出した。

「なるほどね。落とさないように鎖は頑丈にしておいてほしいな」

「わかりました。あと、マイカさん以外は触わることができないようにしますね」

 ふんふんっと頷きながらリチェルカーレ様は首飾りを外すと台座に置き、魔法を施し始めた。

「はい。これでバッチリです。もう忘れないうちに付けちゃってください」

 リチェルカーレ様は台座ごと首飾りを差し出してきた。それを受け取り首にかけた。守護石は少し光沢があり、ツルツルした表面をしていた。

「あとは、服装ですね。うーん。あの国の女性服の中で1番シンプルなものにするか、今私が着ているような服装にするかどっちがいいですか?」

「え?リチェルカーレ様と同じ?」

「あ、私のことはリチェでいいですよ!あちらでは見たことない服装の方が神の眷属っぽい演出になりませんか?面白いと思うのですけど」

 リチェルカーレ様もといリチェ様は立ち上がって、両手を広げると右手にリチェ様と同じような古代ギリシアのように一枚の布を半分に折り、バスローブのように巻き付け肩の部分を金具で止めて腰紐で結んで止めるタイプ。左手には筒状の長袖ワンピースに腰紐をつけ、その上にローブを着るタイプ。どちらも色は白で体型があまりでないタイプであった。

「どちらがいいですかー?」

「えー…じゃそっちのワン「では、私とお揃いにしましょう!この服動きやすくて気に入ってるんですよね」

 食い込み気味に話しかけてきたリチェ様は右手に持っていた服を差し出してきた。

「なんでこっち…」

「双子コーデいいじゃないですかぁ!」

 リチェ様はニコニコしながら服を私に向かってグイグイと押し付けてくる。希望の服は渡してもらえなさそうなため、諦めて服を受け取ると着替えようと立ち上がった。

「じゃ、神託を授けてくるので着替えて待っててください」

 そういうと瞬く間にリチェ様の姿が消えた。それを見届け、ふうっとため息をつくとこの空間にきた時から身につけているお気に入りのパジャマを脱いで着替え始めた。

「え、下着はブラジャーとパンツぽいけど…これ紐パンじゃん!うわっ、しかもこの服…肩丸出しの右半分は縫われてないから腰から足先までスリット入ってるみたい…。あ、足元はサンダルなのか」

 着替えたはいいものの、思っていたより露出度が高い。リチェ様が帰ってきたら、少し文句を言ってやろうと思いながら脱いだパジャマなどを畳んで守護石の中に収納した。

「ただいま帰りました」

 用意ができたことを見計らったかのようにリチェ様が帰ってきた。

「あ、よく似合ってますよ!」

 ニコニコしながらリチェ様はこちらに近寄り、全身を上から下までじっくり観察しだした。

「この服、露出しすぎてない?女性が肌見せちゃダメとかないの?」

「大丈夫ですよ。第8世界の人々には貞淑であれ!みたいな風潮が流行らなくて。流行らせようかと思ってテコ入れしたこともありますけど。あ、でも、髪の毛の長さは変えた方がいいかもしれませんね。貴族女性は基本的に腰ぐらいまで伸ばしてますし、髪にも魔力が宿ると考えられているので魔力が高い男性もロングヘアが多いですし」

 リチェ様は手を伸ばして私の髪を一房とった。そしてスルッと撫でるように手を離した瞬間にセミロングだった髪の毛が腰までの長さになった。

「こんなに長くしたの初めて」

「うんうん、似合います。いい感じです」

 リチェ様は姿鏡を出現させ、2人一緒に鏡の前に立った。

 そしてしばらく2人で今着ている服装についてアレコレと会話を楽しんだ。







ーフィレント王国 王国神殿内ー
 

 腰まである銀髪の神官が祭壇にある銅像を仰ぎ見るように、膝跨いて祈りを捧げている。目は閉じられ、両手を組んで口元に当てた姿はとても様になっている。


『私の民よ』


 男か女かもわからない特徴のない声が神官の耳に届き、神官が目を開けると銅像が眩い光に包まれていた。


『お前達の嘆きは届いた。我もお前達が悲しむのは心が痛い。故に三日後の正午、この神殿の祈りの間に白の聖女を顕現させる。聖女は我と同等の存在である。夢夢忘れるでないぞ』


「か、神よ。白の聖女様が我らを助けて下さる存在という事でしょうか!?」


『聖女の慈悲に感謝せよ』


 声が聞こえなくなると光も収まり、祈りの間に静けさが戻った。


「聖女の慈悲か…。とにかく神託を急ぎ陛下に連絡しなければ」

 神官は勢いよく立ち上がると祈りの間から出て行った。
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