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妊婦には優しく
第5回妊婦なう②(Lu)
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『そろそろだと思いますが、出てきませんねぇ』
「うん。とりあえず運動してみるよ」
双子達は早く産まれてくるかと思ったが、そろそろと思ってた時期を過ぎても産気づかなかった。
「ふぅ…君たち、何故出てこないのだね」
私はルーに手を引かれながらノシノシと離宮の中を歩いていた。
「…居心地がいいのでしょう」
「顔が見たいよー」
ポコっと蹴ってはくるが、まだ産まれる気配はなかった。
日課の散歩を少し長めにしたり、ちょっと階段の上り下りをしてみたり…促してみるが、中々陣痛がこなかった。
夜になって、いつもなら客室に戻るルーが今日から泊まることになった。いつ産気づいてもいいようにしたい、立ち会うと言われては断れなかった。
「よっこいせ…ふぅ、お腹大きいから横たわるのも大変だ」
私はベッドに横向きに寝そべって、隣に寝ているルーに話しかけた。
「父上、産まれてきませんねぇ」
「ふふっ。母上、そうですね。早く会いたいのですが」
撫で撫でとルーがお腹を撫でると、ポコポコっと返事のように蹴られた。
我が子達は割と大人しめらしく、夜に起こされることはない。しかしルーが話してる時や私が話しかけると返事のようによく蹴りをくれるのだ。
「会いたいのに出てこないの?」
またポコポコポコっと蹴られた。
「…うーん。君たち居心地がいいからって理由だけなら早く出てきてよ。母は抱きしめたいよ」
私の声かけには反応がなかった。眠ってしまったのだろうか。私もお腹を撫でた。ふとルーを見つめると、少しだけ困ったような顔になっていた。
「ん?どしたの?」
「いえ、もしかしたら…私の心を分かっているのかと複雑な気分に…」
「帰したくないって?」
「………はい」
ルーはコクリと頷くと私の額に口付けてきた。
「しかし、我が子に会いたい。早く出ておいで。そろそろ狭いだろう、お腹の中は」
ルーは語り掛けながら私のお腹をまた撫で始めた。しかし返答はなかった。
それから、お互いに明日は何をしようと話をして、手を繋いで眠り始めた。
しかし、夜中になって急にお腹が痛くて目が覚めた。
「イテテ…あう…きちゃったかも。ルー、ルー」
お腹を押さえながら隣に寝ているルーを揺さぶって起こすと、すぐに起きてくれた。
「どうしました?」
「イテテ…痛くなってきたの」
「…突然ですね。起き上がれますか?」
ルーは私の体を支えて起き上がらせると、ヘッドボードに枕を敷き詰めて整えてくれた。
素直に整えられた場所に移動して枕に背をもたれた。しかしまだ辛い。両膝を曲げて少し股を開くような体勢になった。
「リチェ様ぁ」
『はーい』
名前を呼んだらポンっと音を立ててリチェ様が現れた。どこにいたのかわからないが緊急事態だ。
「イテテ…お腹痛い」
『おや。やっとですか。ルイスはマリアを』
「はい」
ルーはマリアを呼びに慌てて出て行った。リチェ様は股の間からお腹に手を当てて、様子を見てきた。
『ふむ。2人がきたらさっそくシュシュッといきましょ』
「アイテテタタ…お願い…」
『まだ本陣痛じゃなさそうですね。でもあまり力まないでください』
痛みが来てる間はフーフーと息を吐いて耐えていると、マリアとルーが寝室に入ってきた。
準備を整えて、配置についたらリチェ様が合図のように「ニャー」っと鳴いた。
今回は眩しくても目を開けてみたかった。しかし光が強くて目を細めてしまい、出てくる瞬間は見ることができなかった。
「「オギャーオギャー」」
スッとお腹から無くなる感覚を覚えて細めていた目を開けると、お腹の上に光の包まれて赤子が2人浮いていた。
マリアとルーが1人ずつタオルに巻いている間に、胸元を出した。そして1人ずつ抱き抱えて乳首を咥えさせて母乳を飲ませた。
光がおさまってから双子を見ると、黒髪と銀髪だった。
「わぁ…」
「2人の色合いですね」
ふふっと2人で見つめあって微笑んでいると、股の間にいたリチェ様が赤子の顔を覗き込んできた。
『おや珍しい、目の色が黒い』
ふと目を向けると、右に抱いた銀髪の子は瞳が黒かった。左に抱いた黒髪の子は瞳が紫だった。
「遺伝的なやつってあんまり関係ないの…?」
『うーん。ないみたいですねぇ。不思議ですねぇ』
自分の世界のことなのに、リチェ様はのんびりとした口調で返答してきた。
「いいではないですか。私たちの色を半分に分け合って生まれてくるなんて素晴らしいです」
ルーはんくんくと頑張って飲んでいる双子を愛おしそうに見つめていた。
「そういえば、どっちなんだろ」
「ああ、包む時に見ましたが銀髪の子は女の子でしたよ」
「黒髪の御子は男児でした」
マリアとルーから性別を聞いて、そこもまたひっくり返ってるのだなぁっとしみじみとした。
「おっ、もういらない?」
双子のシンクロなのか、同時に口から乳首を出してこちらをじっと見つめ始めた。
「ゲップしなきゃね」
「私がしますよ」
ルーは銀髪の子を抱き上げて「ゲプっ」っと出させた。マリアは何も言わずに黒髪の子を抱き上げてゲップをさせてくれた。その間にささっと胸元を整えて股の間にいるリチェ様を見つめた。
『もう、戻しますか?』
「うん」
リチェ様の前足がお腹に当たると体が光に包まれて、元の状態に戻った。
「静かだね。寝ちゃった?」
「ええ、こっちは寝てます」
「こちらの御子はまだでございます」
マリアに寝ていない黒髪の子を手渡されて、抱き上げた。
「ふふっ。ネンネしなきゃダメだよ。今からね、父上のお家に行くの。育ての母上がいるからね。産み母上とは、これでさようなら。2人で力を合わせて生きなさいね。喧嘩ばかりしちゃだめよ」
涙を目に浮かべて語りかけていると、抱いた子もスヤスヤと眠り始めた。
「マイカ。一緒に名前をつけましょう」
「ぐすっ…名前?」
「はい」
涙を拭いながら子供達を再度見つめた。
「女の子は…フローラがいいな」
「フローラ、花ですか?」
「うん、私の名前…舞う花って書くの。だから、その花をとってフローラ」
「いいですね。では…男の子はオリバーにしましょう」
「オリバー?」
「はい。夢の世界で背もたれていたのがオリーブの木だったので」
「あ、そうだったんだ。知らなかった…。この世界にもオリーブはあるんだ」
徐々に頭がぼんやりとしてきた私はウトウトとし始めた。ルーは抱いていたフローラを空間魔法から出された大きなバスケットの中に入れると、私からオリバーを受け取って2人並ぶようにバスケットに寝かせた。
「おやすみなさい」
ルーが唇に軽く口付けると、私はすぐに眠りに落ちた。
「…あとどれくらい一緒にいられるのでしょう」
『そうですね、もうすぐ3年過ぎてしまうので…1、2ヶ月…ほどでしょうか。マイカさんが希望したら早まるかもしれません』
1匹と1人はぽつりと語り合いながら出て行った。それに続いてもう1人も。
そして、寝室から人の気配が消えた。
「うん。とりあえず運動してみるよ」
双子達は早く産まれてくるかと思ったが、そろそろと思ってた時期を過ぎても産気づかなかった。
「ふぅ…君たち、何故出てこないのだね」
私はルーに手を引かれながらノシノシと離宮の中を歩いていた。
「…居心地がいいのでしょう」
「顔が見たいよー」
ポコっと蹴ってはくるが、まだ産まれる気配はなかった。
日課の散歩を少し長めにしたり、ちょっと階段の上り下りをしてみたり…促してみるが、中々陣痛がこなかった。
夜になって、いつもなら客室に戻るルーが今日から泊まることになった。いつ産気づいてもいいようにしたい、立ち会うと言われては断れなかった。
「よっこいせ…ふぅ、お腹大きいから横たわるのも大変だ」
私はベッドに横向きに寝そべって、隣に寝ているルーに話しかけた。
「父上、産まれてきませんねぇ」
「ふふっ。母上、そうですね。早く会いたいのですが」
撫で撫でとルーがお腹を撫でると、ポコポコっと返事のように蹴られた。
我が子達は割と大人しめらしく、夜に起こされることはない。しかしルーが話してる時や私が話しかけると返事のようによく蹴りをくれるのだ。
「会いたいのに出てこないの?」
またポコポコポコっと蹴られた。
「…うーん。君たち居心地がいいからって理由だけなら早く出てきてよ。母は抱きしめたいよ」
私の声かけには反応がなかった。眠ってしまったのだろうか。私もお腹を撫でた。ふとルーを見つめると、少しだけ困ったような顔になっていた。
「ん?どしたの?」
「いえ、もしかしたら…私の心を分かっているのかと複雑な気分に…」
「帰したくないって?」
「………はい」
ルーはコクリと頷くと私の額に口付けてきた。
「しかし、我が子に会いたい。早く出ておいで。そろそろ狭いだろう、お腹の中は」
ルーは語り掛けながら私のお腹をまた撫で始めた。しかし返答はなかった。
それから、お互いに明日は何をしようと話をして、手を繋いで眠り始めた。
しかし、夜中になって急にお腹が痛くて目が覚めた。
「イテテ…あう…きちゃったかも。ルー、ルー」
お腹を押さえながら隣に寝ているルーを揺さぶって起こすと、すぐに起きてくれた。
「どうしました?」
「イテテ…痛くなってきたの」
「…突然ですね。起き上がれますか?」
ルーは私の体を支えて起き上がらせると、ヘッドボードに枕を敷き詰めて整えてくれた。
素直に整えられた場所に移動して枕に背をもたれた。しかしまだ辛い。両膝を曲げて少し股を開くような体勢になった。
「リチェ様ぁ」
『はーい』
名前を呼んだらポンっと音を立ててリチェ様が現れた。どこにいたのかわからないが緊急事態だ。
「イテテ…お腹痛い」
『おや。やっとですか。ルイスはマリアを』
「はい」
ルーはマリアを呼びに慌てて出て行った。リチェ様は股の間からお腹に手を当てて、様子を見てきた。
『ふむ。2人がきたらさっそくシュシュッといきましょ』
「アイテテタタ…お願い…」
『まだ本陣痛じゃなさそうですね。でもあまり力まないでください』
痛みが来てる間はフーフーと息を吐いて耐えていると、マリアとルーが寝室に入ってきた。
準備を整えて、配置についたらリチェ様が合図のように「ニャー」っと鳴いた。
今回は眩しくても目を開けてみたかった。しかし光が強くて目を細めてしまい、出てくる瞬間は見ることができなかった。
「「オギャーオギャー」」
スッとお腹から無くなる感覚を覚えて細めていた目を開けると、お腹の上に光の包まれて赤子が2人浮いていた。
マリアとルーが1人ずつタオルに巻いている間に、胸元を出した。そして1人ずつ抱き抱えて乳首を咥えさせて母乳を飲ませた。
光がおさまってから双子を見ると、黒髪と銀髪だった。
「わぁ…」
「2人の色合いですね」
ふふっと2人で見つめあって微笑んでいると、股の間にいたリチェ様が赤子の顔を覗き込んできた。
『おや珍しい、目の色が黒い』
ふと目を向けると、右に抱いた銀髪の子は瞳が黒かった。左に抱いた黒髪の子は瞳が紫だった。
「遺伝的なやつってあんまり関係ないの…?」
『うーん。ないみたいですねぇ。不思議ですねぇ』
自分の世界のことなのに、リチェ様はのんびりとした口調で返答してきた。
「いいではないですか。私たちの色を半分に分け合って生まれてくるなんて素晴らしいです」
ルーはんくんくと頑張って飲んでいる双子を愛おしそうに見つめていた。
「そういえば、どっちなんだろ」
「ああ、包む時に見ましたが銀髪の子は女の子でしたよ」
「黒髪の御子は男児でした」
マリアとルーから性別を聞いて、そこもまたひっくり返ってるのだなぁっとしみじみとした。
「おっ、もういらない?」
双子のシンクロなのか、同時に口から乳首を出してこちらをじっと見つめ始めた。
「ゲップしなきゃね」
「私がしますよ」
ルーは銀髪の子を抱き上げて「ゲプっ」っと出させた。マリアは何も言わずに黒髪の子を抱き上げてゲップをさせてくれた。その間にささっと胸元を整えて股の間にいるリチェ様を見つめた。
『もう、戻しますか?』
「うん」
リチェ様の前足がお腹に当たると体が光に包まれて、元の状態に戻った。
「静かだね。寝ちゃった?」
「ええ、こっちは寝てます」
「こちらの御子はまだでございます」
マリアに寝ていない黒髪の子を手渡されて、抱き上げた。
「ふふっ。ネンネしなきゃダメだよ。今からね、父上のお家に行くの。育ての母上がいるからね。産み母上とは、これでさようなら。2人で力を合わせて生きなさいね。喧嘩ばかりしちゃだめよ」
涙を目に浮かべて語りかけていると、抱いた子もスヤスヤと眠り始めた。
「マイカ。一緒に名前をつけましょう」
「ぐすっ…名前?」
「はい」
涙を拭いながら子供達を再度見つめた。
「女の子は…フローラがいいな」
「フローラ、花ですか?」
「うん、私の名前…舞う花って書くの。だから、その花をとってフローラ」
「いいですね。では…男の子はオリバーにしましょう」
「オリバー?」
「はい。夢の世界で背もたれていたのがオリーブの木だったので」
「あ、そうだったんだ。知らなかった…。この世界にもオリーブはあるんだ」
徐々に頭がぼんやりとしてきた私はウトウトとし始めた。ルーは抱いていたフローラを空間魔法から出された大きなバスケットの中に入れると、私からオリバーを受け取って2人並ぶようにバスケットに寝かせた。
「おやすみなさい」
ルーが唇に軽く口付けると、私はすぐに眠りに落ちた。
「…あとどれくらい一緒にいられるのでしょう」
『そうですね、もうすぐ3年過ぎてしまうので…1、2ヶ月…ほどでしょうか。マイカさんが希望したら早まるかもしれません』
1匹と1人はぽつりと語り合いながら出て行った。それに続いてもう1人も。
そして、寝室から人の気配が消えた。
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