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《145》裸の付き合い

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「ノワ、きみも俺たちと一緒に行こう」

「えっ」

「テントは、でかい男が二人いれば十分だからさ」


レイゲルが半ば強引にノワの背を押す。

ノワはそっと後ろを振り返った。

デリックがこちらを気にかけるように見ている。
リダルはさっさとテントを張る準備を始めていた。


(僕には、興味もないって感じだ)


自分だけではない。リダルはきっと、他人に興味が無いのだ。

自分もその1人に過ぎないのだと思うと無性に腹立たしかった。
ノワはデリックに手を振り、レイゲルの後に続いた。


「うわ、冷たいな」


直径数十メートルの澄んだ水が美しい湖だった。

レイゲルは着ていたものを全て脱ぎ捨て、バシャバシャと湖の奥へ進んでゆく。


「おーい、ロイド。ノワも一緒に連れてきたんだ」


水面の中央にロイドがいた。

鍛え上げられた靱やかな身体は、レイゲルよりも一回り逞しく見えた。


(先輩二人と、裸の付き合い·····)


貧相な体を晒す時が来てしまった。

この際、体型は仕方がない。いつか起こり得ることだった。

問題は、股間の息子を見られてしまうことだ。

陰毛は皆無。
まるで小学生男児のような見てくれのそれは、生涯誰にも見せまいと心に決めていた。

服を脱ぐ時と着る時だけ、気を付ければ良い。

ノワは、ロイドとレイゲルを気にしつつ服を脱ぐ。

幸い、レイゲルは泳ぐ事に必死で、先程までこちらを眺めていたロイドは、タイミングよく背を向けていた。

脱いだ服を岩の上に置き、水面に足をひたす。


「冷た·····っ」


水面は、波紋を広げキラキラと輝いた。


「ノワ、早くおいで」


レイゲルがニコニコしながらやってくる。

数秒躊躇って、一思いに湖へ身体を沈めた。
全身のアナというアナが、きゅっと窄まるようだ。

ノワは顔を強ばらせた。


「あはは、大丈夫?びっくりしただろ」


硬い身体に引き寄せられる。
レイゲルはノワを誘導しながら、湖の奥へと進んだ。


「さて、三者面談をしよう」


ロイドと合流すると、レイゲルはそれらしい言葉を口にした。


「三者面談?」


ロイドが濡れた短髪をかきあげる。動く度、岩のような筋肉が呼吸する。


「さて、ノワ。ここには君と俺、そしてロイドだけだ」

「·····?はい」


首を傾げつつも頷く。
レイゲルは、自身の胸元をどんと叩いた。


「好きなだけ筋肉を見ても構わないということだ」


振動で水面が揺れた。
向かいのロイドが、真顔のままレイゲルを見つめている。

ノワは数泊置いてから、おもむろに首を振った。


「あ·····大丈夫です·····」

「遠慮しなくていいんだよ。もちろん触ってもいい」


一瞬心配したのは、今朝のリダルの件について聞かれるのではという可能性だった。

ノワは安堵した。


「パトリックを変態のように言うな」


ロイドが呆れ果てたようにため息を着く。





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