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《277》ありえない光景

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天使のような見た目に見惚れている場合ではない。レハルトはノワを持ち上げ、廊下から庭へ出た。

庭の端へ連れていくのと、透明な輝きが宙に飛び出すのは同時だった。


「あ·····出ちゃ·····」


声音は妙に官能的だ。
男で、それもただ用を足しているだけの相手に対して、助けてやっているこちらの方がとてもいけない気分になる。
バランスを崩したノワが胸元によりかかってくる。


「·····」


スリーパーを持ち上げてやった手は、ほんの好奇心で、すそをへそ上まで引き上げてみる。
薄ピンク色の実から、一筋の噴水が湧き上がっている。
それが段々と弱くなり、一度止まりかけたと思ったら、余った水が先端からピュッと飛び出す。
放尿は再び勢いを増した。


「うわぁ·····いっぱい出ますねぇ·····」


得に他意はない発言だったが、口にしてからエロオヤジみたいな発言だったと気づく。
先程、口を慎めと言われたばかりだ。
しかし、ノワはこくこくと頷きながら呟いた。


「んん···っ····はぁ····きもちい····」

「···································································」


下半身がずくりと重くなる。
馬鹿野郎、鎮まれ。気合いで理性を取り戻すも、熱い体が擦り寄ってくる。
ノワは酩酊状態だ。

早いとこ部屋に戻して、近衛騎士に見張りでも頼んでおこう。
いや、その前に1度深呼吸した方がいい、間違いがあってはいけない。
息を吸い込み、目頭を抑える。
次に目を開いた時、ノワは目の前から姿を消していた。


「!?」


周りを見渡すと、邸の方に白い影が揺れた。
この短期間にあの千鳥足で、どうやって廊下まで向かったんだ。
そして彼が躊躇なく侵入して行った部屋を確認し、レハルトは声にならない声を上げる。

イアードの寝室だ。
普段も許可なく入室するなんて有り得ないが、よりによって今侵入するとは。
昂った息子は瞬時に冷静になる。
レハルトは飛ぶような速さで寝室前の扉へ向かった。

現在イアードは不治の呪いに耐えているはずだ。
猛獣の檻と化した部屋に入れば、命は無い。


「ノワ様·····!」


扉からそっと名前を呼ぶ。
返答はない。そして、イアードが怒り狂う声も、呻き声も聞こえてこない。
完全な静寂だ。

レハルトは深いため息を着いた。
イアードは既に眠っているようだ。

ノワを連れて、今度こそ部屋へ連れ戻さなければ。
扉から身を乗り出したレハルトは、目の前の光景に目を見張った。

























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